第4話 力斧のドンガ
「カカカカ……ヒッヒッヒッ」
紫の息を吐き出しながら向かってくるナニカ。
逃げ惑うセーバー達。
そのナニカは異様で。
まだ距離はあるが、圧倒される強者の雰囲気。
ゴクリと唾を飲み込む音がやけに大きい。
暑くもないのに額に汗が吹きでて、こめかみを滴が伝っていく。
体が思うように動かない。
動け。
このままでは街に甚大な被害が出る。
「おおぉおぉぉぉ!」
全身に力をちられて丹田に力を漲らせる。
行ける!
「
ズズゥゥゥンンッッ
離れたところからでも効果のある
「オォ……フルエル……ケケケ」
ダメだった。
あれをやるしかない。
まだ成功してないが。
あれはきっとイメージが重要なはず。
空気を震わせるんだ。
拳を突き出したところから空気が振動していって、敵に到達する技。
両足を開き、腰を落として構える。
両手を腰の脇に据える。
深呼吸をして心を落ち着かせる。
拳を引き絞る。
できる! できる! できる!
「
ドパァァァァンンンッッ
ナニカの肩が吹き飛んだ。
効いた!
行ける!
「ヤラレタ……ハンゲキ……ドクフンシャ」
次の瞬間。
紫の煙がナニカから吐き出される。
吸ったらまずい。
息を止めろ。
すぐ側まで煙が到達する。
噴射しながら近づいてくるものだから紫の煙はすぐ目の前だ。
体が再び硬直してしまい、動かない。
ここままでは……まずい。
顔にかかり始めた。
顔がピリつく。
これ、吸わなくても効くんだ!
まずい!
しかし、体は動いてくれない。
このままじゃ、俺も死ぬ…………。
「ふんぬっ!」
ブオォォォンンッ
突如起きた風に毒は戻っていく。
何が起きたのか?
声のした方を向くとそこには大男のドンガさんが斧を持って立っていた。
ドンガさん!
どうやって戦うつもりだ?
「よく耐えた。後は任せろ!」
ドンガさん……どうやって戦うんです?
ドンガさんの
あんなやつ無系じゃないと……。
斧を団扇のように扇ぎながら風をナニカの方に送っている。
ナニカは流石に自分の攻撃ではダメージを受けないみたいだ。
「口を塞いでおけよ? 奴の
「はいっ!」
口元を腕で抑える。
でも、あんなやつどうやって?
近づけないじゃないか!?
「貴様、守護魔将だな? なぜ、わざわざ出向いてきたかはわからんが、好きにはさせん! 私はAランクセーバー!
「ケケケ……リソースニカエレ」
ドンガさんはまた斧で仰いで風を送っている。
すると、ナニカは口をすぼめると何かを吹き出してきた。
ドンガさんに迫る。
斧でそのまま叩き落とす。
斧がジューッと音を立てて煙を上げている。
毒にやられているみたいだ。
鉄をも溶かす毒なのか?
そんなのどうやって対抗すればいいんだ?
ナニカは次々に紫の毒の玉を吐き出してくる。
ドンガさんは避けることで対抗するみたいだ。
次々に吐き出される毒弾を避けながら、徐々に近づいていく。
「コレナラ……ドウダ……バラマキ」
口から液体が散布された。
ドンガさんは液体を浴びてしまい、体が紫に変色する。
ドンガさん、このままじゃ……!
「っ!」
一気に駆け出したドンガさんはナニカに肉薄する。
毒を散布してくるが、お構い無しで突っ込むドンガさん。
腕を、足をぶった斬り。
振り上げた斧を力一杯振り下ろす。
ドォォォンンッッ
最後に縦に真っ二つに叩き切り。
ナニカは青い光となって消えた。
やった!
勝った!
「やりましたね! ドンガさん!」
「あぁ! やったな! はははっ! しかし、私ももうこれまでのようだ」
ドンガさんの体は全身紫になり、毒が回っているのが分かる。
すぐに毒消しを。
そう思い街に戻ろうとする。
「クーヤ! 間に合わない! もう私はおしまいだ! だが、守護魔将は再び生成される事だろう」
「何故です!?」
「どういう理屈かはわからんが、Aランクセーバー以上の者がリソースに帰った場合、守護魔将が生成されるらしい。確認したものはいないが、そう言われている」
「そんな……命を賭して倒したのに!?」
「クーヤ。やつの毒は肌に触れただけでも毒に侵される。何かで全身を覆い。肌に触れる前に瞬殺するしかない。覚えておけ」
「はい。ドンガさん……」
「俺はクーヤに期待してる……グフッ…………そろそろみたいだ」
「ドンガさん! ご指導、ありがとうございました! 俺は負けません!」
「ふっ。そうだ。どんな時でも諦めるな。立ち向かえ!」
その言葉を残して、青い光となって消えていった。
こうして突然の守護魔将の襲撃は集結した。
その頃。
魔物製造装置からは一体の守護魔将が生み出されていた。
額には『毒』。
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