第3話 異変

 俺はセーバーとなった日から試行錯誤をしながら力をつけていった。

 そして、魔物を倒す日々を送っていたんだ。


 そんなある日。


「はぁっ!」


ドパァンッ


 牛のような頭をした二足歩行の魔物に前蹴りを放ちとどめを刺す。

 青い光に帰っていくその様を見ながら不意に違和感が頭に引っかかる。


「なんか……数が多くないか?」


 少し今日を振り返ってみると魔物の数が多い気がする。

 ギルドに報告しよう。


 街に戻ると真っ先に窓口へ向かって魔物の数が異常であると伝える。

 すると、帰ってきた言葉は「クーヤくんも?」だった。


 他のみんなも異常だと思ってたみたいだ。

 俺だけじゃないってことは、やっぱりおかしい。何かが起きてる。


「おい! 街が! 街が魔物に囲まれてる!」


「えっ!?」


 俺が驚いて声を上げる。

 後ろで慌てたように受付嬢が奥に行く。

 奥から出てきたのはガタイのいいスキンヘッドの男。


 ギルドマスターのガインさんだ。

 緊急依頼だな?


「皆の者! これより緊急依頼を発令する! 魔物に囲まれているこの街を守るんだ! ランクは問わない! みんな、自分の命を第一に考えて判断し、行ける者は討伐に向かってくれ! 頼む! 繰り返す……」


 やっぱり緊急依頼だ。

 俺は出るぞ。

 ギルドを出ると、続々と後に続くセーバー達。


 皆、覚悟した顔をしている。

 自分の命は大切だが、この街の人達がそれ以上に大事なんだ。

 俺もこの街で暮らして、声をかけてもらったり、おすそ分け貰ったり、良くしてもらっている。


 街の外に勢いよく出た俺は直ぐに接敵した。

 アリのような魔物。

 それがウジャウジャいる。


 全部額には『魔』の文字。

 魔物にはみんな額に魔の文字がついているんだということを最初に先輩セーバーに教わった。


「はっ!」


 回し蹴りを頭と体の節目に叩き込む。

 すると、字力じりきによる振動が伝わりそこから青い光に変わっていく。


 俺はその魔物の中で静かに手刀を振り、回し蹴りを放ち、回転を利用して更に回し蹴りを放つ。

 そして地面を踏み抜く。


「震脚」


ズゥゥゥゥゥンンンンッッッ


 俺を中心に振動が広がっていき、周りの魔物が次々と青い光に変わっていく。

 効果範囲は五メートル程。

 周りのみんなもそれぞれ炎や、水、雷、樹などそれぞれの字力じりきで戦っている。


 この字力じりきというのが面白かったのだ。本当に色んな種類がある。

『圧』という字力じりきの人がいて、その人は威圧にも使えるし、重力のように押し潰す方にも字力じりきを使えると言っていた。


 使い方も様々。

 この前あったセーバーは『弱』の字力の持ち主だった。本人はゴリマッチョだったけど。

 字から弱そうだなと思ったら、使い方は単純で、触った相手を弱体化させることに使っているそうだ。


 逆に手加減するときは自分を弱体化するんだそうだ。

 本当に色々とある。

 解釈でこうも変わるんだなと俺は勉強の日々を送っていた。


「はっはぁー! こんだけのセーバーでかかれば、大量の魔物もたまったもんじゃないだろー!?」


 一人のセーバーが大声でそんな話をしながら魔物を倒していた。

 

 たしかに少し減ってきた。

 このままいけば終わりが見えるかも。

 そう油断していたのかもしれない。


 それは。

 突然やってきた。


「なんだ!? どうなってるぅぅぇぇ」


「にげろぉぉぅぇぇぇ」


 次々と街から遠い人達が紫色になり顔から青い光を流しながら消えていく。

 苦しそうな顔で。


「なんだ? 何が起きてるんだ!?」


 奥からゆっくり現れたのは紫の肌に覆われた人型のナニカ。


「カエレ……セカイニカエレ……ヒッヒッヒッ」


 不気味なナニカが迫ってきていた。

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