第2話 セーバーとは

「ここが、救う者セーバーギルドよ? じゃあ、私は行くわね! 依頼の途中なの!」


 案内してくれた女の子が去っていく。


「あっ! なま……え……」


 人混みに消えてしまった。

 居なくなるまで凄い早かったな。

 依頼って言ってたから、もしかしてセーバーかもしれないよな。


 それなら、そのうち会えるだろう。

 俺はとりあえず、中に入って登録しよう。


 中に入ると様々な格好をした人が居た。

 剣を腰に差している人、大きな斧を担いでる人。杖を持っている人。

 横目に見ながらカウンターにはいるシュッとした綺麗な女の人に声をかけてみる。


「すみません。あのー、セーバー登録したいんですけど……」


「はい! 畏まりました! しかし、セーバーは危険を伴うため、そのまま登録できる訳ではありません。登録し試験をしてもらいます!」


 思った通りに凄いハキハキした話し方に、柔らかい丸いメガネとのコントラストが魅力を感じさせる。

 それはいいのだが。


 初耳なんだけど?

 誰も教えてくれなかった。

 まぁ、倒せばいいわけか。


「はい! 受けます!」


「では、こちらへどうぞ!」


 隣の訓練室に移動する。

 ギャラリーが周りで見ている中、奥から出てきたのはガタイのいい斧を背負った大男。


 周りのギャラリーがザワついた。


「おぉー。ドンガかよ?」


「新人のアイツ大丈夫か?」


「五秒でやられるんじゃねぇか? ギャハハハ」


 なんだか心配されているみたい。

 たしかに強いのかもしれない。

 けど、やれない事も無いと俺の体は言っている気がする。


「私はドンガだ。セーバーになりたいという死にたがりを生き長らえさせるためにこのギルドで試験官をしている!」


「クーヤです。胸をお借りします!」


 自然体だった状態から少し腕を上に持っていき、胸の前に構える。

 ゆっくりと息を吐き、丹田に力を入れていく。


「ふぅーーーっ。お願いします!」


「行くぞ!」


 思いっきり斧を振り上げ、上段から勢いを付けて振り下ろしてくる。

 すごい勢いだ。

 大きく後ろに引く。


ズガァァァァンッッッ


 床の破片が飛び散って顔を傷つける。


 けど、怯まない。

 ドンガさんをずっと見据えて隙をうかがう。

 横に斧を構えて振ってくる。


 身をかがめると、頭の上スレスレを斧が掠めていく。

 その振るったあとのドンガさんは体を捻り終わったところ。


 ここだ!


「どりゃぁぁ!」


 懐に飛び込み、腹部を腹部へ向けて正拳突きを放つ。


ズズゥゥゥンンンッッ


 拳から何か出た?

 いや、拳が震えてるんだろうか?

 よくわかんないけど、ドンガさんは片膝を着いた。


「ぐふっ……君の字力じりきは強いな」


字力じりき?」


「知らないのか? この世界ではみんな誰もが一文字の字を宿して産まれてくるんだ。心臓の胸の部分に字が刻まれている。知らずにセーバーになりたいとは……まず、自分の力を知ることから初めたほうがいいぞ?」


 俺の胸に?

 服をめくってみると。

 左胸の所に『震』とある。


 震えるってことか?

 だから、拳から何か震えるものが出たと……。

 そういう事か?


「君の拳を受けた時、内部が揺さぶられた。そういう字力じりきなんだろうな」


 なるほど。

 地震とかも出せるかもな。


「私のは分かりやすい字力じりき『力』だからな。だから、こんなデカい斧を振るえるって訳だ。ふっ。クーヤと言ったか? 合格だ。君には期待できる。鍛錬を重ねれば、いいセーバーになれるだろう」


「ありがとうございます!」


 するとその場がワッと沸いた。

 口々に凄いやつが現れたとか、コイツは期待のルーキーだとか言ってくれている。

 そんな事を言われると照れるなぁ。


 目立つの嫌いではないんだよな。

 強い字力じりきっぽいしね。

 これは試し甲斐がある。


「合格おめでとうございます! では、こちらに! セーバーにはこのメダルが配られます。このメダルには色々な情報が詰め込まれていて、この機械の溝に置くと……」


 ブンッと言う音と共に目の前にウインドウが表示された。

 そこには名前、字力、討伐記録などが表示されていた。


 まだ登録していないので空欄のままだ。


「名前など、登録するので教えてください!」


「名前はクーヤだ。字力は『震』」


「なるほど。無系むけいですか。形がない字力は応用がきくと聞きますから、頑張って字力じりきを使いこなして下さいね?」


「はい。ありがとうございます! あのぉー申し訳ないんですけど……」


「はい! なんでしょう?」


「セーバーって何をやる人達なんですか?」


 受付嬢は目をパチパチさせてぎこちない笑みを浮かべている。


「ギャハハハハ! マジかこいつ!」


「いや! 逆にすごい! 姉ちゃん、話してやれよ! はははははは!」


「こいつぁ大物になるぞ!」


 皆が周りで笑いだしてしまった。

 それはそうか。

 なんにも知らずに来てしまったからな。


「え、えーっと、まずこの世界は魔物に追いやられつつあります。それは、守護魔将しゅごましょうと呼ばれる者達が魔物を生み出す装置を守っているからなんです」


「魔物を生み出す?」


「そうです。そして、生み出すにはリソースが必要です」


「リソースって?」


「人の命の事です。魔物も倒すと青い光になって世界のリソースになります。人間も同じなんです。その人間のリソースを利用して魔物を生み出す装置を何者かが作り、守護魔将と呼ばれる者達が装置を守護をしています」


「それは酷いですね」


「生み出された魔物と装置、守護魔将を倒すのを目的として組織されたのが、救う者セーバーなんです。セーバーはランクがあり、E級からA級まで上がっていき、最後にS級になります」


「なるほど。わかりました。ありがとうございます!」


 俺は誰かは分からないけどこの世界を救うことをお願いされた。

 魔物とか守護魔将とか恐い気もするけど、話を聞いて少しワクワクしてる。

 ラノベの世界みたいだ。


 まず、この字力じりきを使いこなすぞ。

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