事故で全身麻痺になった空手少年が異世界行ったら全快して無双しちゃった話
ゆる弥
第1話 希望
真っ白な天井に真っ白な壁、真っ白なベッド。
少年が横たわっている。
色々な管が体に向けて繋がっている。
「はぁぁぁ。この体ではもう空手はできないないのか?」
そう言葉を発する少年はピクリとも動かない。
「はぁい。空也くん、体を起こしますねぇ」
その少年は看護師さんに体を横にして貰っている。
そう。この少年は体を動かすことが出来ないのだ。
理由はと言うと1週間前に遡る。
「
何処ぞの昭和チックなリーゼントの男が俺に向かって言葉を放つ。
でも、そんなダサいヤツには声をかけられたくない。知らないフリをしよう。
そう思い、素通りする。
「無視すんなやゴラァァァ!」
再び前に回り込んで顔を睨みつけてくる。
なんなんだこのダサいヤツは?
あれ? なんか昨日もこんなことあったような……。
俺は小一から中二の今までずっと空手を修練している。俺にとっては誇れるのはそれくらいだ。
この前も空手の全国大会で優勝した。
学業の方の成績は良くない。
だからなのか、こういう風に絡まれることが多い。でも、やられるのも癪に触るからやっちゃうでしょ。
また絡まれるっていう悪循環に陥っているんだ。
だから、また素通りする。
「おいゴラァ!? じゃまだぁぁ!」
俺の前を通ろうとした小学生が突き飛ばされ、道路に投げ出された。
トラックが近づいてくるのが見えた。
そう思った時はもうそこまでトラックが来ていて、咄嗟に小学生を掴んで歩道に投げる。
そのぐらいの筋力はあった。
自分は頭を守るので精一杯だった。
その結果がこれ。
「今日からリハビリですよぉ。よいっしょっ。じゃあ、行きますねぇ」
俺は車椅子に乗せられてリハビリ室に行く。
そこからは機械を使ったり補助員さんがついてのリハビリになる。
指を動かす練習。
足を動かす練習。
首を動かす練習。
「あぁぁぁぁ。全然動かねぇ」
白いベッドに再び戻った俺はそう嘆いていた。
まだ一日目だから仕方がないのだが、あまりにも動かなかったものだから絶望に打ちひしがれていた。
『体を治す代わりに異世界を救って欲しい』
「ん? なんだ? 俺に救えるものなら救ってあげたいよ」
『それは、了承ととっていいのかな?』
「あぁ。できるならなぁ」
そういうと、俺は眠りについた。
凄く心地いい寝心地だった。
なんだか身体が温かい。
体がチクチクする。
なんだろう?
大の字に寝ている感覚はある。
目をパチリと覚ます。
太陽が眩しい。
薄く目を開けて現状の把握に務める。
雲ひとつない青い空が広がっている。
太陽が眩しい。
あれ? おれ、外に出されたのか?
起き上がろうとすると、
「はぁ?」
思わず訳の分からない出来事に声を上げてしまう。
だって、意味がわからない。
なんで、体が動く?
手で体を触り、草むらを撫でる。
草の感覚がある。
ちゃんと風も感じる。
なんでだ?
感覚が元に戻ってる。
事故にあったのは夢だったのか?
『約束だから回復はした。この世界を頼んだぞ』
えっ!?
どうすればいいの?
なになに!?
『
何それ!?
それ以降、声は聞こえなくなった。
なんの事かは分からないが、生きてはいるようだ。
キョロキョロ周りを見ていると、変な人に思われたのだろう。女の子が心配して声をかけてくれた。
「あのー。大丈夫? なんか物でも取られたの?」
「あーいや、そういう訳じゃないんだ。ここがどこだかも分からなくて……」
「えっ? ここに居るのに?」
女の子は訝しげにこちらを見ている。
まずい。
変なやつに思われる。
「ん? あー。昼寝したらどっちから来たか分からなくなって! はははっ! 近くの街って何処かな?」
「あぁ。そういう事ね! あっちよ? 一緒に行きましょ?」
「ありがとう!」
女の子に連れられて歩いていく。
おぉ。歩ける。すげぇ。
はははっ。全快になった。あの声は本当だったのか。
ってことは、
俺を歩けるようにしてくれた。
恩は返さないとな。
歩き出して暫くして違和感が。
何かに見られてる?
「グゲェェェ!」
なんか豚の何かが襲ってきた。
なんで二足歩行?
額に『魔』と書かれている。
はっ? なんだこれ?
考えている暇はなかった。
なにせ、棍棒で襲ってきたのだから。
咄嗟に避ける。
地面をゴロゴロと回って避ける。
そして、状況を把握する。
「きゃっ! 魔物 !?」
女の子を背に守るような位置取りをする。
俺が守らなきゃ。
ジワジワと魔物が近づいてくる。
やるしかない。
今まで空手で培ってきた物は俺の財産だ。
体が覚えているはず。
棍棒が振り下ろされた瞬間。
体が動いた。
スッと横に避ける。
そして、今までやった動作の反復だった。
ただ、上段蹴りを放つのみ。
ズドンッッッッ
蹴りを放った足から何か衝撃波の様なものが発せられた気がした。
俺の気のせいか?
その魔物は鼻と口から青い光を出して、消えていった。
どういう事?
おれは、やったのか?
「すごい! 魔物を倒すなんて、
「ん? 違う。
「えぇ。シーカーギルドで登録すればね」
シーカーにもギルドなるものがあるらしい。
「ふーん。登録すりゃなれるものなんだな」
さっきの戦闘で少し世界を救う希望が見えてきた気がする。
俺は戦える。
これは、大きな収穫だった。
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