第16話 愛する君へ
第1日目
「これで、撮れてるか?」
私は記録媒体を起動し、実験室内を写す。
レンズを覗きこめば既に侵食された片目が映し出される。
「これから、私はこの実験室内で生活をする。
自給自足は出来るし、ゴーレムで遠隔操作し、施設内の管理も出来る。後は僕の体で治療法を探すだけだ。」
すると媒体が点滅し始める。
どうやら10分が限界みたいだ、細かに撮らないと行けないな。
第2日目
「あーあ、聞こえるかな?この実験の目的は謎の感染病の治療法を見つける為だ。記録は全てバックアップしてるから決してここを開けないで欲しい。」
この感染病は生き物を別の存在に変化させる。
個体により様々ではあるが、それらは総じて魔物になる。
魔物の突然変異、先祖返りを引き起こす、寄生生物、様々な推測を立てたが正体は分からないまま。
「……やはり10分とは一瞬だな、今日はこれ迄だ。」
第6日目
「ハァ、、、ハァ、、、すまない、日にちが空いたな。」
私の手は片方、丸太の様な太さを持つ獣の手になっていた。
3日目に撮影しようとしたが、あまりの激痛と酩酊感に暫く寝込んでいたのだ。
「今はこの腕も自分の意識で動かせるが……研究に支障が出るため色んな道具を準備しようと思う。」
早急に何かしら見つけないと、私は全身化け物になってしまうのだろうか。
第10日目
「あれから研究は進んでいる。私の腕から採取したサンプルから遅延薬は作れる事がわかった。」
一先ずはそれの作成を目指す事にしたが、必要なのは特効薬だ。
いつか完全な変化をしてしまうのならば、遅延させた所で意味は無い。
「私にも変わった所はない、強いて言えば……肉が食べたいくらいだろうか。」
別に普段からあるような要求だが、細かな変化も気を配らないと行けない。私は道と戦っているのだから。
第14日目
「間に合った、、、何とか、、、」
やっとの事で付けることが出来たレンズには、上半身半ばまで侵食された私の姿が映っていた。
「遅延薬は完成した。これで変化は何とか食い止められている。」
少しアンバランスになった体をよろめかせつつ、刺したままの注射を抜き取る。
「しかし、これで治る訳では無い、引き続き研究を続ける。しかし今日は疲れた、本当に、体が重いんだ。」
そのあとの映像には、死んだ様に眠る私の姿が写っていただろう。
第30日目
「なゼだ、もう少シなんダ!なにがタりないと言うンだ!」
あれから特効薬に大分近づくことが出来た。
しかし、この症状を消し去る事が出来ない。
体の大部分が変化したこの状態でも意識が保ててるという事は、効果がある筈なんだ。
「ドウしてだ、、、どうすれバ、、、」
その時、私が最初に使った遅延薬が目に入る。
……完全な治療が出来ずとも、症状の固定は出来るんじゃないか?
代償もある、しかし、私には時間が残されてなかった。
ケモノの千の夢 シェフィア @soruna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ケモノの千の夢の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます