第16話

「武。……今日授賞式で服部と会ったよ」

「……え」

 思わず箸を落とす武。無理もない。

「……あいつ、なんて言ってた」

「お前とはまだ付き合ってるって言ってた」

「ヤバい……」

 頭を抱える武。

「嘘だよ」

「だろうね」

「というか、奴の中ではそうなってるのかも……」

「ホラーじゃん。同棲してるときどんなだったの」

「家をよく開けるくせに粘着質だった」

「付き合う奴は選べよ……」

「お前が美咲ちゃんと付き合って自暴自棄気味だったんだよ。それに、そういう気まぐれなところが良く写ったのもある」

「まぁ、そういうのはあるよね……」

「自由だからな、奴は。誰にも捕まえられない鳥」

「ここに来て自由か。じゃあ、見習わないといけないかもな」

「航平は無理だよ。お前は誰かを愛する人だから」

「そうなの?」

「自ら牢獄に入るようなものだよ、愛することは」

 机の上に腕を乗せ、腕の上に頭を乗せて、首を傾げながら武は言う。

「……じゃあ俺は一生牢獄暮らしでいいや」

「そうこなくちゃ」

 武は猫のように俺の懐に潜り込んだ。

「俺を愛して」

 キスを落とす。

「そのつもりだよ? ラプンツェル」

 

 朝、ダブルベッドから這い上がり、時計を確認する。

「……バイト行かなきゃ」

「いってらっしゃい」

「ダルいな〜」

「ファイト」

 俺は家を出た。母親の面影がちらついた。俺は中空に手を伸ばした。さようなら、お母さん。俺はあなたのいないところで生きていく。もう、許してくれますよね?

 空は晴れ渡っていた。

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愛され脚本家の卵の恋人 はる @mahunna

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