水泡と兎

業 藍衣

水泡と兎

兎が暗い夜道を進んでいると、森の中に大きな湖がありました。

湖面を覗くと水の中に、小さな水泡がたくさん浮かんでいました。

兎は泡が水面に浮かび上がるでもなく、ただ湖面の中を漂っているのを不思議に感じて見つめていると、沢山の透明な水泡の中にひとつ、紫色の珍しい水泡がありました。

兎は興味をそそられ、もっとよく観察していると、光を反射して輝いているのがよくわかります。


それを見つけた兎は、「あれは何だろう?」と湖面に顔を近づけて見つめていました。

水泡はそのまま浮かんでいましたが、兎は興味津々で水中に手を伸ばし、水泡を手で触れてみました。

すると、そこには不思議な力が宿っていて、兎は一瞬で小さくなり、水泡の中に入り込んでしまいます。


兎は驚いて自分の身に何が起こったのかわかりません。

紫の水泡の中は、まるで虹の中に入ったようにキラキラと光が反射して、滝の側にいるような清涼感がありました。

兎は水泡の中にいるのが気持ちよくなって、手足をバタつかせて水泡の中の空間を泳ぎ始めます。

泳いでも泳いでも終わりの見えない果てしない景色が広がっていて、水の中にいるような空を泳いでいるような不思議な感覚がしましす。

水泡の中を泳ぎながら、兎は不思議な世界を旅している気分になりとても楽しみました。


しばらく楽しく泳いだ後、兎は自分が水泡の中に囚われているのではないかと不安になり始めます。

このままずっと泳いでいたら、水泡の力で元に戻れなくなり、お家に帰れないのではないか…そう思うと恐くて恐くて、急いで元の大きさに戻るために水泡の中を必死に駆け抜けます。


そしていると、突然水泡が割れ、兎は元の大きさに戻ります現実の世界に帰ってきました。

兎は辺りを見回すと湖の湖面にはまだ珍しい紫色の水泡があります。

兎はその水泡を見つめ、自分が経験した不思議な世界が現実だったのか、それともただの夢だったのかを考えます。


しばらくしても答えが出ない兎は、今ここにいることに安堵して家路につくのでした。

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水泡と兎 業 藍衣 @karumaaoi

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