第3話 ローズ

 目を覚ました私は、衝動を抑えてベッドを出て窓辺に寄りかかる。

 私の横には最愛の少女が寝息を立てている。

 私は先日の腐海女帝との戦いの時のことを思い出す。



『ローズちゃん、何でも言うこと聞くから、死なないで!』


『……それなら、寝るときはアナタの隣がいいわあ……。それと……、アナタの泣き顔より笑顔を……』



「腐腐腐。何でも言ってみるものねえ〜。でも、もう少し欲張っても良かったかしらぁ?腐腐っ」



 私の名はローズ。冒険者学園ヘクトールに入学し、邪悪龍もとい腐海女帝の復活のために動き、その甲斐あって腐海女帝は復活を果たした。

 しかし、復活した腐海女帝が最初にしたことは私の胸を貫くことだった。


 腐海女帝に胸を貫かれた私はそのまま事切れたはずだったが、魂が神界に到達し、神界に在る腐海女帝の神体から力を奪い、『腐海の御子』として蘇ったのだった--


 私が蘇ったとき、最愛の少女アーシェは、私が殺されたことによる怒りで覚醒し、腐海女帝と戦っていた。


 そう、【私が殺された怒りで】だ


 嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。

 嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。嬉しかった。



「腐腐腐。夢のような時間だったわぁ〜。腐腐っ」


 蘇った私はアーシェに加勢し、腐海女帝を追い詰めた。二人で奮ったその力は神の領域に達していた。


「嗚呼! 思い出すだけで身体が……! まさにアレは愛の力と言っても過言では……! だからちょっとくらい……! ダメ! 寝ているときになんて……。だけどそれも……」



 ◇◆◇

 私は寮の屋上に出る。風が涼しい。


「腐天使よ……。我に翼を」


 翼を得た私は砂漠に向かう。砂漠にはアレがいるはずだ。


 砂漠についた私は呪文を唱える。


「常識を呑み込み滅し去る者どもよ……

 倫理を揺さぶり打ち砕く者どもよ……

 狂える腐海の魍魎どもよ……

 我ローズマリーが

 麗しき腐海女帝の名に於いて命じる!

 盟約に従い我が敵を腐海に沈めよ!

『腐海瀑葬』!!」


 腐海から召喚された泥の波が砂漠を覆う。


 ウガアアアアア!


 呼吸できなくなった砂中のサンドワームが地上に出てくる。


「腐腐腐。この身体の滾り……、治めるには丁度いいわあ!! さっさと倒して、あの子に『おはよう』って言うんだから。腐腐っ」


 私はニヤリと笑い、サンドワームとの戦いを始めるのだった……。

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夜明けの窓辺 万吉8 @mankichi8

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