【1-35】 役立てられなかった献策 下

【第1章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330660761303801

【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277

【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249

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「喰い破れえええええェェェェェッッッ!!!」


「フウゥゥルゥアアアァァァァアアー!!!!」


 レオンを切っ先に、第2陣・5,000の将兵が一丸となって丘を駆け下る。


 帝国相手に暴れていた若君補佐官衆――ブレギア第1陣が勢いを増す。


 騎馬民族特有の地鳴りのような掛け声にさらされ、壊乱を来たしつつあった帝国将兵は、もはや生きた心地がしなかった。


 逃げ惑う旧ヴァナヘイム兵に、帝国人将校が持ち場へ戻るよう怒声を放っていた。レオンは馬を躍らせ、その将校の首元に一閃――サーベルを投げ抜く。


 首元を射抜かれた将校が血を吹き、力なく落馬すると、帝国軍の混乱はいよいよ名状しがたいものとなった。



「……レオンは猪か」

 国主直轄軍の後に、ウテカ=ホーンスキンが御親類衆を率いてとついてきていた。


 御曹司の作戦離脱・独自行軍を捨て置けず、バンブライ・ブルカン等 宿老将軍に上流戦域の抑えを任せてきたのだ。


【11月14日14時】ヴァーガル河の戦い 地図⑧

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16818023211726383525



 だが、下流の戦場に到着しても、ホーンスキン各隊は即座に戦闘に加わろうとはしなかった。


 前国主ジュニアに流れ弾が当たることを馬上、ウテカは祈っていたが、それも望み薄そうである。帝国軍はもはや軍隊としての機能を失っているようだった。



「父上ッ」

 ケルトハの声は非難めいた色合いを強く帯びていた。


 実子に呼びかけられたウテカは、大きく舌打ちすると、甲高い声で伝騎に呼ばわる。

「このいくさ、我が軍の勝ちだ。我らもレオン殿に加勢するッ」


 御親類衆の各部隊が、にわかに活気づいた。


「……」

 ケルトハは手綱を絞り、駒を止めた。彼の部隊の脇をブラン・スコローン以下ホーンスキン家各隊が続々と前進していく。



『躊躇されることなく持てる戦力をすべて投入し、河下の帝国増援軍を粉砕することこそ肝要です。さすれば、河上の帝国軍も渡河はおろか、砲撃すら二の足を踏むことでしょう』


 父が破り捨てた紙片の中身を、薄茶色の髪を持つホーンスキン家の若者は思い起こしていた。


【1-19】 形勢逆転 下

https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330668773955359



 東方・トゥメン城塞からもたらされた宰相・キアン=ラヴァーダの電報には、放っておけば、ヴァナヘイム軍が最悪な事態に陥ることも予期されていた。


 帝国軍後詰が迂回運動を採り、我が軍の左翼をいてくることを、宰相の菫色の瞳は見通していたわけである。



 そして、この名宰相が思考しうる限り、最上の離脱方法も記されていた。





【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


示し合せたわけでもなく、レオンは学問の師ラヴァーダの思考どおり自らの軍を動かしたのだな、と気がつかれた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


レオンたちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「戦いの終わり」お楽しみに。


こちらへ渡る際に利用されたいかだや小舟は、河原に多く残されていた。だが、帝国将兵全員が一度に利用するには、数が限られていた。何度も往復させて彼等5万人を渡河させたからだ。


一刻も早く河向こうへ帰りたい者たちによって、それらは奪い合いとなった。


水際で押し合う者。

筏の上で突き飛ばされる者。

早く出せと怒声を上げる者。


そうこうしているうちに、背後からが重くのしかかる。

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