【1-34】 役立てられなかった献策 上

【第1章 登場人物】

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【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277

【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249

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「そのとき、すてんかおうこくぐんは、どうしたの?」


「ステンカ=V=ラージン様は、それはもう勇敢な王様でした」


 布団の上に身を乗り出した金髪淡き幼児の問いに、傍らに座る銀髪の若者は答えた。すみれ色の瞳に柔和な色を浮かべて。


 幼児の水色の瞳に照り返るカンテラの光は、輝きを増している。今日もすぐには寝付かないだろう。



***



 帝国暦384年11月14日早朝――最左翼の応援に駆け付けたブレギア国主直轄軍では、レオン=カーヴァルの咆哮を合図として、第1陣・1万5,000が投入された。


【1-2】 全騎 突入

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 それら兵馬は、ドーク=トゥレム、ムネイ=ブリアン、マセイ=ユーハ、ダン=ハーヴァほか――若き補佐官たちが指揮なす各隊を、肉付けするよう配置している。


 前線では、帝国軍の塊へブレギア騎翔隊がキリのように突き刺さっていく。



 金髪の若君・レオンは、本陣でじっとしていなかった。丘上せわしなく馬を行き来させ、双眼鏡を水色の瞳に当てて外しては、土埃つちぼこりあがる眼下の戦場を見て回っていた。


 この若者は、最後のカードである直轄軍第2陣との投入について、最善のタイミングを見計らっていた。


【11月14日14時】ヴァーガル河の戦い 地図⑧

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16818023211726383525



「――シッ!!」

 そして、敵――帝国軍全体が浮足立つのを見逃さなかった。それは、1つの生き物のように一斉に落ち着きを失っていた。


 彼は、再びサーベルを抜き払う。1度目の時よりも素早く。


【1-1】 騎翔隊 決戦場へ

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 そして、朝陽に輝く刀身を高々と掲げ、叫んだ。




「喰い破れえええええェェェェェッッッ!!!」





 指揮官の淡い金色の頭上に、突撃を意味する信号弾が揚がる。


 言い捨てるや、レオンは上空を仰ぎ見ることなく、単騎で丘を駆け下っていく。


 たちまち彼の駆る駒は小さくなり、白刃だけがキラッ、キラッとまばゆい光を放つだけになっていった。


 この若者は、自らも前線に切り込むつもりらしい。


 丘の上に残っていた近衛隊も予備隊も、「若君を死なすな」とばかりに、次々とその紺地のマントを追いかけていく。



 レオンを先頭に、第2陣・5,000の将兵が一挙に丘を下り、帝国・ブレギア第1陣入り乱れる戦場に躍り込む形となる。

「フウラアァァアアァァー!!」


「フウゥゥルゥアアアァァァァアアー!!!!」

 先に切り込んだ第1陣・1万5,000の将兵も呼応した。戦場の熱気がさらに上昇する。





【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


レオンの勇ましさを体感いただけた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


レオンたちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「役立てられなかった献策 上」お楽しみに。


「……レオンは猪か」

国主直轄軍の後に、ウテカ=ホーンスキンが御親類衆を率いてとついてきていた。


「父上ッ」

ケルトハの声は非難めいた色合いを強く帯びていた。


実子に呼びかけられたウテカは、大きく舌打ちすると、甲高い声で伝騎に呼ばわる。

「このいくさ、我が軍の勝ちだ。我らもレオン殿に加勢するッ」


御親類衆の各部隊が、俄かに活気づいた。

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