【1-2】 全騎 突入
「「「「「フゥウルァアアアアぁァァァーーーーッッッ!!!」」」」」
先代遺児の発破によって、極限まで戦意を鼓舞されたブレギア国主直轄軍は、一斉に砂塵を蹴り上げ、丘を駆け下りていった。
士気高揚の権化ともいえる集団は、雄叫びこそ上げども、この期に及んで小細工など
騎翔隊は、崖下に降り立つことを待たずして、揺れる馬上から一斉に射撃を開始する。
周囲は全て帝国兵である。狙いを定めずに放っても、一発として無駄弾にならない。
ブレギア騎兵の
軍刀は帝国将校の胸を貫き、馬蹄は帝国兵の軍帽ごと頭蓋骨を粉砕していく。
騎翔隊によって
帝国軍も数の優位を生かし、そこかしこで返り討ちにするが、新たなブレギア歩兵が味方の
「何という強引な……」
「フランタルよ、のんびり朝飯を食っておる場合ではなさそうだぞ」
戦況が大きく変わる――
50年以上戦場で磨かれた嗅覚は冴えわたっている。食べかけの缶詰を放り捨てると、それぞれの指揮所に駆け戻っていった。
「一発だけでもいい。射撃に耐えうる砲門は全て東側に移動させいッ」
「目標は、東に展開する帝国軍!」
「着弾ポイント!?帝国兵の頭上ならどこでも良いわッッ!!」
ブイク・ナトフランタル両将軍は、四方を包囲されていたにもかかわらず、大胆にも生き残りの野砲すべてを東方一点に集中させたのである。
東の野に展開していた帝国軍は「挟撃」されることになった。突如として丘上に現れた才気
包囲の一端を担っていたはずが、思いもかけず挟み撃ちされる事態に陥り、彼らは大混乱に陥る。
常軌を逸するようなブレギア国主直轄軍の戦い方が、その混乱に拍車をかけたといえよう。
突然湧いて出た後背のブレギア新手に対し、帝国側も野砲や機関砲を向けようとするが、それらはすべて前方の敵――ブレギア左翼残存兵――に照準を合わせていた。
その前方のブ軍・残存兵からも砲弾が飛来しはじめる。前後どちらに照準を定めるべきか、各中間指揮官からの命令と軍団指揮所からの命令は相反し、帝国砲兵は
ブレギア騎翔隊の動きは速かった。結局、帝国軍砲兵は右往左往、もとい東往西往しただけで、ほとんど発砲することもできずに近接戦闘を許していく。
帝国軍旗――鷲の紋章旗を持たされているとはいえ、彼らの大半は旧ヴァナヘイム領の者たちであった。
帝国により故国を占領された彼らは、今日の食い
彼らは、親の代から今会戦序盤まで、ブイク・ナトフランタル両将軍によってしたたかに打ちのめされてきたためだろう――自軍が圧倒的に優勢の段階にきても、なかなか最後の詰めに踏みきれなかった身の上ですらあった。
一方で、若き指揮官が陣頭に立ったブレギア軍の勢いは、天を
馬上の一団が、返り血の飛沫を揚げて突進していく――その様は、旧ヴァナヘイム兵をして、赤い翼の生えた馬が羽ばたいているかのように錯覚させた。ブレギアの牧場では、さらなる品種改良に成功したのか、と。
ブレギア騎翔隊の織りなす戦局推移の速さに、ついていけないのは帝国将校も同じだった。彼等のほとんどは、未明に突如として無数の騎兵が降ってきた――そんな悪夢から覚めないままでいる。
草原の国の
ブレギアの軍馬たちは、赤い羽根を悠々と広げていく。
味方の
亡国の兵は一度崩れるともろかった。
恐怖は恐怖を呼び、またたく間に帝国軍全体に広まっていく。踏みとどまれ――征服者の将校による命令など耳に入らない。
そもそも彼らは、帝国軍に
【作者からのお願い】
ブレギアの若君・レオンの活躍に期待いただける方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「第1章 主な登場人物」お楽しみに。
物語を読み進めたい方は、読み飛ばしていただいても大丈夫です(^^)/!
登場人物の確認に、時折ご活用ください。
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