【4-7】 凱旋と就位 上

【第4章 登場人物】

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【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277

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 結局、レオン=カーヴァルが首都・ダーナに凱旋がいせんしたのは、帝国暦386年――年の改まった1月26日のことである。


 わずか1年と数ヶ月で、リューズニル・ウルズ(水道橋)・エルドフリーム(煤けた鍋)・ブレイザ・バルドル(水運の街)等、旧ヴァナヘイム国 東部領域を平らげたのである。


 若すぎる英雄を、領民は万雷の拍手と喝采をもって出迎えた。



 ブレギア西端の城塞・アリアクをはじめアルタイほか――帰路に立ち寄った諸城都市でも、レオン一行は歓呼の声と共に迎えられている。


 それぞれ、激励に感謝、名残惜しむ声とともに送り出されてきたが、首都のそれは規模が違った。金髪の勇者を一目見ようと、遠くトゥメン城塞からも領民たちが多数押し掛けている。


 城壁の向こうでは、地平の先まで彼等の小型の円形テントゲルが広がっていた。朝夕、それらの煙突から白煙が上がる様子は、圧巻である。


【地図】ヴァナヘイム ブレギア国境 航跡 第2部 第4章

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 1月26日昼過ぎ、遠く若君一行が視認されるや、首都・ダーナの城門周辺には人垣が作られていった。


 そこに収まりきらない者たちは、城外の沿道に群れをなす。彼らは鼻や頬を赤らめ、寒風に吐く息も白く、凱旋軍の花道を形作った。




 際限なき出兵をくり返しては、国元から労働の担い手を奪い続ける。


 牧場や麦畑の荒廃をはじめとする村落疲弊――諸悪の根源は、あの金髪の若者のはずだった。


 だが、領民たちは彼の姿勢を支持した。


 小覇王の再来に期待した。


 それだけ、先代国主の崩御ほうぎょは、人々の自信を揺るがせ、心に喪失感をもたらしていたのだろう。


【1-3】 小覇王――虚像と実像と

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 ブレギアは見渡す限り草原が広がり、急峻な山河等、拠り所となる自然の険を持ち合わせない。国外から敵国に隙をうかがわれ、国内も不穏な空気が絶えなかった。


 そのため、領民たちは生命・財産をゆだねられる存在――外敵をはね除け、不穏分子をまとめられる強力なリーダー像を求めていた。


 言い換えれば、生命・財産を守るために、労働力を差し出すことは、と割り切っていた。安全はタダではないのだ。


 まして、イーストコノート大陸最強という、草原の民の誇り・尊厳すら体現してくれた英雄を、どうして支持せずにいられようか。



 金髪に赤い軍服姿の若者は、先代譲り濃紺の外套マントをまとう。馬上にて手を振り、歓呼の声に応えるレオンに向けて、新聞各社のフラッシュが雷光のように焚かれる。


 記者たちは少しでも良い撮影場所を確保しようと押し合い、時に流血騒動が生じるほどだった。





【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


ブレギア領民の熱狂ぶりに驚かれた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「 凱旋と就位 下」お楽しみに。


レオンは忙しい。2月15日、首都ダーナでは先代・フォラ=カーヴァルの大法要が営まれた。翌日には即位式が執り行われ、彼は正式にブレギア国主の座に就任した。


初日の大法要では、フォラ=カーヴァルの冥福が太陽神に向けて祈祷される。


ブレギアの文武百官、各国の国賓、ブレギア軍楽隊、各国新聞記者、それに数万の民衆は、めいめい喪服に袖を通し、粛然と聴き入った。


翌日の即位式は、打って変わってはなのあるものとなった。


礼服に改めたブレギアの文武百官、各国の国賓、ブレギア軍楽隊、各国新聞記者、それに着飾った数万の領民たち。


一同が見守るなか、きらびやかな礼装に身を包んだレオンが登壇した。

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