【2-4】 初めてのごはん
【第2章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330664586673465
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コナリイ=オーラムは、年齢の割に小柄であったが、活発に動きよく笑った。
十をわずかに過ぎたばかりの女児らしく、楽しい時、美味しいものを食べた時、いたずらを企んだ時、ニッと屈託のない笑みを浮かべる。
その度に、淡くやわらかな金色の髪も肩の上で揺れた。
気質は、表情や
そんな少女が袖を通すは、濃緑色の帝国軍服である。
そこにあしらわれた肩章や襟章は、陸軍准将の地位を示していたものの、軍服が児童サイズのためか、記章がひと周り大きく見えてしまうのもいじらしい。
豚のように肥え、ガマガエルのように
とりわけ、ゴウラは胸の前でそれぞれの太い指を交差させ、海の向こうへ祈りを捧げている。
上官と同様に、彼もまた旧ヴァナヘイム領に置いてきた赤髪の少女へ未練たらたらなのだ。
【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277
ところが、若過ぎる准将閣下を
セラ=レイスは、菓子を振る舞われた初対面からして
【2-3】 初顔合わせ 下
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330667364268629
先の帝国・ヴァナヘイム国間戦争の様相――紅髪の青年が主導した戦いの
着任して早々、レイスはこの幼い主人から会食に誘われたが、食事の席で開口一番に尋ねられたのも、ヴァナヘイム戦役の1つ――ヴィムル河流域会戦の詳細だった。
「天然の袋小路におびき出されたヴァナヘイム軍は、その後どうなったの!?」
少女の水色の瞳は、「興味
第1部【2-12】機関砲
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927859971677903
紅毛の青年将校は、質問の意図について「十代はじめという年齢がなしえる、興味本位に過ぎないもの」と解釈した。
子どもは多かれ少なかれ、軍隊や戦争というものに憧れるものだからだ。
そのため、フォークとナイフを動かすことも忘れ、両目を輝かせながら質問を浴びせてくる童女主人に、レイスは必要最低限の回答でお茶を濁したのだった。
もっとも、レイスが手の内を明かさなかったのは、同席する黒髪眼鏡の青年の出方が
彼の名前は、ファーディア=モイル――帝国陸軍少佐だ。コナリイはどこに行くにも、この世話役を連れ歩いている。
モイルは姿勢正しくナイフとフォークを動かすばかりで、ついぞ言葉を発しなかった。
彼の頭部は、整髪油で七三に揃えられている。その艶のある黒髪は、
側頭部に流している七分の黒髪と縁なし眼鏡の合間に見えるは、端整な顔立ちであった。
彼は、会話に参加することはなかったが、本業も忘れていなかった。
少女の膝から落ちたナプキンを拾い上げたり、少女の口周りに付いたソースを拭いたりと、そつなく世話をこなしていた。
しかし、コナリイは会話を中断させられることを嫌がった。
「ファディ、それくらい自分でできるわ」
もう子どもじゃないんだから、と少女はいやいやする。
口元を汚したまま、そっぽを向こうとするから、ソースは頬にまで広がってしまった。
「セラ=レイス、またごはんに誘ってもいい?」
1度の食事では、彼女の好奇心はまるで満足しなかったと思われる。
また、最低限の回答しか口を動かさなかった紅毛の中佐の様子から、己を信用してもらえていないことに気が付いたのだろう。
金髪の少将は器用にも片頬をふくらませながら、次回の食事の約束を取り付けていった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
コナリイの世話役・七三眼鏡が気になる方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
コナリイたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「おにごっこ 上」お楽しみに。
童女准将とぐーたら中佐が知恵比べ――前半戦です。
呼び出しの電話や使いが来る前に、レイスはなんのかの理由を付け、外出を決め込んだ。
ところが、コナリイの方が一枚上手であった。帝都生活においては、少女の方に一日の長がある。
「セラ=レイス、おつかれさま」
「セラ=レイス、一緒にご飯たべよ?」
「セラ=レイス、ハンバーグは好き?」
逃亡先のカフェやバルをいくら変えても、金髪少女は七三眼鏡を従えて、必ずそこに現れるのである。
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