【3-27】 間断なき再出兵
【第3章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023211874721575
【地図】ヴァナヘイム国 (第1部16章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330656021434407
====================
レオン=カーヴァル率いる新生ブレギア軍は、ヴァーガル河で帝国軍を打ち破るや、リューズニル、ウルズと、旧ヴァナヘイム領内の2つの
【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
それらは、わずか数カ月の間のことである。
ブレギア軍の快進撃に、新聞各紙は若き指揮官たちをこぞって褒めそやした。
ブレギア領民はもちろんのこと、五大陸の国々から、おびただしい数の激励の手紙が連日総司令部へ集まった。
皮肉なことに、城塞を奪われた旧ヴァナヘイム国民からも、相当数の手紙が届いている。帝国に祖国を滅ぼされた恨みが募り、その後の圧政から解放を求めている――それらの裏返しなのだろう。
ファンレターの山は、レオンとその補佐官たちの自負心を心地よく充足させたのだった。
帝国暦385年6月上旬、アリアク城塞の大広間にはブレギアの首脳部が集い、第2次征西についての議論が続けられていた。
呆れたことに、ブレギア軍は一度本国へ引き揚げながら、2カ月と経たずして再出兵を企図している。
「将軍たちの言いたいことは分かった」
宿老4人——バンブライ・ブイク・ナトフランタル・ブルカンを前に、レオンは椅子から立ち上がりもせず、足を組んだまま続ける。
「だが、戦いには機というものがあるとは思わぬか。ヴァーガル河では、叔父上がそれを掴み損ねたからこそ、卿らを危地に陥らせた。そして今日、その機を掴む我らは、連戦連勝を重ねることができている」
言い終えてレオンはゆっくりと足を組みかえる。まるで、お前たち――ブイク、ナトフランタルの命を救ったのは俺だ、と言わんばかりの口調・態度である。
【1-2】 全騎 突入
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330657005975533/episodes/16817330660783497725
「しかし若君、これまでの2つの城は、我らが仕掛けるより前に戦闘力を失っておりました」
「さよう。一昨年、帝国軍を迎え撃つ戦役に、旧ヴァナヘイム国は、これらの城塞都市から多くの将兵を駆り出しておりました」
非戦闘民ばかりの城塞を落としただけで図に乗るな――そう言わんばかりに、宿将・ブイク、ナトフランタルに相次いで騒がれ、若き主君の端整な顔は、みるみる不機嫌さの色合いが増していく。
ウルズ城塞からさらに西の諸都市となれば、これまでのようにはいきませぬぞ――両宿将がなおも続けようとした時だった。
「御老人方は、我らの勝利に
「2城塞に対する若君の御分析、それをもとにした攻城戦の果敢な御采配にまでケチをつけるというのであれば、その時は不敬の
主人を囲むようにして、ムネイ=ブリアン、マセイ=ユーハらその直属の青年将校たちが老将たちの前に立ちはだかる。これら国主補佐官たちの誰もが腕を組み、木で鼻をくくったような物言いであった。
「やはり、まだお若いな……」
城外の自軍本営への帰路、宿将筆頭・アーマフ=バンブライは馬上から背後を振り返った。白眉の下にあるつぶらな瞳は、アリアク城塞に翻るブレギア大帥旗を見つめる。
長男のスリーヴもそれにならい、父子ともに溜息をついた。
紺地に金色の馬をあしらったそれは、悠然と風を受けとめては流している。
若者たちによる研究や采配が非凡であったことはもちろんであった。しかし、帝国軍に滅ぼされ、国家として崩壊したヴァナヘイム領を
昨年からの旧ヴァ領への侵攻について、若者たちは手柄顔をして語っているが、そもそもは、前国主義弟・ウテカ=ホーンスキンによる火事場泥棒的方針が発端ではなかったか。
【1-9】 軍備負担と発言力
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330661487250717
2年前、ここからはるか南西の地、イエロヴェリル平原とその後の首都・ノーアトゥーン近郊で展開された戦い――ヴァナヘイム国滅亡により幕を閉じた対帝国戦争――のために、この2つの城塞都市では、多数の兵馬を供出し、そのほとんどを失っていたのであった。
だが、彼らがこれからさらに西へ進み、挑もうとしている城塞諸都市は、帝国軍による兵装増強が整い始めているという。それは、ウルズ城塞でのアトロン防御網を上回るものとなろう。
前回遠征のように簡単にはいかない――だからこそ宿老たちは、若武者たちの無理な出兵計画にこぞって反対するのであった。
「御親類衆がおとなしくなったと思いきや、今度は老いぼれどもが騒ぎ出しましたな」
補佐官・ブリアンは、苦々しい顔つきのまま吐き捨てた。
「まったく、口やかましいこと、この上ありませんな」
「まだまだ、我らのことを経験の浅いひよっことしか見ておらぬのでしょうな」
補佐官・ユーハに続き、同じくダン=ハーヴァが、宿老衆への悪口雑言を唱和しはじめた時だった。
「結果だ。俺たちに足りないのは実績だ」
配下たちは後方に座る主人へ視線を集中させる。レオンはサーベルのメンテナンスをしていた。
「親族衆のやつら、年寄りども、それに国境の領主ども……」
目釘を締め直すや刀身を見つめ、金髪の主君は続ける。
「……城2つだけでは、まだまだ不足だ」
刃の反射する光が、金色の前髪を鈍く照らす。
「さらに奪うぞ。『難攻不落』とされる城であればあるほどよい」
レオンはサーベルを鞘に納めると、図上「エルドフリーム」の文字を睨み、目元に不敵な笑みを浮かべた。
再掲:【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
際限なく戦いを求めるレオンが心配な方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「
「先王ですら、攻略を諦めたのです」
「いまはラヴァーダ宰相もいらっしゃいません」
「我々だけで、いかほどのことができましょう」
「どうか、ご再考を」
バンブライ、ブイク、ナトフランタル、ブルカンは、入れ替わり立ち代わり、撤退を進言する。
――小覇王を諦めさせた城塞だからこそ、宰相不在のいまだからこそ、エルドフリームは価値があることを、老いぼれどもは分からんのか。
筆頭補佐官・ドーク=トゥレムは舌打ちした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます