【3-14】 武装した橋
【第3章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023211874721575
【地図】ヴァナヘイム国 (第1部16章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330656021434407
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帝国暦385年3月8日、ハウグスポリ隊、スキルヴィル隊、フレーヴァング隊――ブレギアに投降した旧ヴァナヘイム領各隊が、ウルズ城塞「アトロン防御網」への正面突破を敢行。
同族同士の激しい肉弾戦の末、ビフレスト水道橋への道を切り開いた。
しかし、ブレギア軍を待ち受けていたのは、武装した水道橋であった。
橋は二重構造になっていた。
橋上には、砲兵が各所に配置され、上段と下段の橋梁を結ぶ中段回廊には、石造りの小部屋が等間隔に新設されている。それぞれ銃眼が
無防備に飛び込んだ旧ヴァナヘイム兵に、砲弾と銃弾が降り注ぐ。
ハウグスポリ、フレーヴァング各隊の生き残りは万事休した。
防御網を突破し、ここまでたどり着いた彼等は、もはや精魂尽き果てていた。傷つき倒れた僚友たちの後を、なす術もなく追うことになった。
「これ以上前進を続けますと、我が軍の被害も無視できぬものになりますぞッ」
「……」
前線からの宿将・ブイクの電話連絡に、総司令部では筆頭補佐官・トゥレムは無言のまま受話器を送話器に戻した。
よもや、水道橋そのものが武装していようとは――。
アトロン防御網さえ突破すれば、その先の橋上水路を押さえることは
防御網跡を振り返れば、累々たる降将麾下の将兵の亡骸に破れた軍旗――もはや、ブレギア軍に捨て駒となる戦力はない。
若君・レオンとその補佐官たちは、知恵を絞ったが、少ない犠牲で橋上占拠をやってのける戦術は浮かばなかった。
誰もが言葉に窮した――天幕内は暗い雰囲気に包まれる。
誰もが考えていた――この場に宰相・キアン=ラヴァーダが居たら、どのような采配を振るったことだろうか、と。
しかし、かの名宰相は
【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
慎重論ばかり口にする老将たちだけではなく、補佐官たちすら、脳裏に「撤退」の2文字が浮かんだ時だった。
「……橋ごと粉砕すればいい」
筆頭補佐官が、低く言い放った。
そうであった。キアン=ラヴァーダは不在だが、ドーク=トゥレムは健在だ。
黒き癖毛を持つ痩身の男は、新生ブレギア軍の快進撃を支えている。
ヴァーガル河においては、帝国軍後詰の動きを看破し、若き主君を英雄に仕立て上げた。
アトロン防御網を片付けたのも、この筆頭補佐官の策が敵中したためである。
降将たちに多大な犠牲を強いたことへの是非については、議論の余地があろう。だが、その犠牲によって、ブレギア軍が事態を打開出来たことは事実である。
立て続けの活躍は殊勲賞物である。ブレギア陣営における筆頭補佐官は、その発言力は主人を凌ぐものとなりつつある。
トゥレムの見立てはこうだった。
この水道橋は、旧時代的なものである。石造りとはいえ、砲兵戦など想定した構造にはなっていない。
橋の軸力――アーチを形作っている石の釣り合いさえ乱せば崩れるだろう。橋脚の
「しかし、水道橋を破壊した場合、今後この城を切り盛りすることに難儀しませんか」
物理的な視点については納得したものの、陥落させた後のウルズ城塞の扱いについて、補佐官・ハーヴァから質問が上がる。
確かに、石橋を築き直すのは、簡単なことではない。
ところが、間髪入れずにトゥレムは応じる。
「こんな城、廃城にしてしまえば良い」
「は、廃城ですとッ?」
補佐官一のファイター・ブリアンの
「弱点がはっきりとした城に、利用価値などない」
人間、飢えは我慢できても
古来、水の確保が難しい城など、存在価値がなかった。いくら守りやすい地形であったとしても、水源に乏しいような場所への築城など論外なのである。
ウルズ城塞を陥落させ、我等がここに籠った場合、次に攻め寄せて来るのは帝国軍であろう。我が軍との2度にわたる攻防から、帝国の奴らも必ず水の手を――水道橋を狙ってくるはずだ。
「しかしだな、トゥレム……」
曇らせた眉間に「納得できない」との色を漂わせて、遂に若君・レオンも立ち上がる。
弱点が明確だからとて、この名城を文化財的価値ある橋もろとも破壊することもなかろう、と。
ところが、主人の言葉を最後まで聞かずして、当の筆頭補佐官は言い捨てた。
「維持できない城など、お荷物です」
城だけでなく、橋まで守るとなると、相当な数の兵卒が必要になる。
この度、帝国のアトロン老将は、砲兵をはじめ多くの将兵を麾下から割き、残していった。だがそれは、旧ヴァナヘイム領の兵卒で構成されている軍団だからこそ出来た芸当なのだ。
ブレギア軍では、本国から遠く離れたこの地に、それだけの兵を備えておくことはできない。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
城塞も水道橋も破壊してしまえとの筆頭補佐官の策に、やり過ぎではないかと思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「苦痛にのたうつ」お楽しみに。
3月10日の未明から、ブレギアの砲門が一斉に火を噴いた。
飛び越えたり、手前に落ちたりしていた砲弾は、いつまでも命中精度は向上しそうになかった。だが、そのうちの数弾が石造りの水道橋にぶつかっていく。
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