【1-25】 塵間のコガネムシ
【第1章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330660761303801
【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
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翌11月6日早朝、レオン=カーヴァルの強い要望により、ブレギア軍では総司令部より各隊へ軍議への参集が布達された。
しかし、ホーンスキン家主導の論功行賞にうんざりしていた諸将の反応は鈍く、7日も昼過ぎになってようやく開催される運びとなった。
【1-19】 形勢逆転 下
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前主君の子息の要望によって開かれた軍議にもかかわらず、相変わらず主役は前国主の義弟だった。
【家系図】カーヴァル家・ホーンスキン家・オイグ家
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現状の整理とその報告で、会議は進んでいく。
これでは、何のために将軍たちを参集したのかが分からない。
席には、ブイク、ナトフランタル両将軍は不在であった。帝国軍
軍議の終了を目前に、ウテカ=ホーンスキンは形式上、全員に発言する機会を与える。
「ここまでで何か意見ある者は……」
レオンは、
「……無さそうなので、本日はここまでとしよう」
前国主義弟は金髪の若者を露骨に無視した。
本日の軍議において同じような状況が2度、3度と続いたため、さすがにレオンは立ち上がった。
「叔父上、少しよろしいか」
「どうなさったレオン殿」
御親族衆筆頭は、露骨に面倒くさそうな視線を若君に向けて放った。
終わりかけた会議が継続することに、ブラン・スコローン等、ホーンスキン家の諸将も一様に不満げな表情を浮かべた。
しかし、レオンは
「我らが独自に放った斥候によれば、一昨晩、後方の帝国軍7万が一度西方に向かい、その後南下したとのこと」
先日に続いて、またしても突然もたらされた情報――先王義弟は、
「西進はともかく南進……?われらの斥候兵からは、そのような報告は入っておりませんな。敵の後方部隊は元々戦意に欠き、旧都・ノーアトゥーンに向けて引き揚げたそうではありますが」
軍議冒頭の報告を聞いてなかったのか――そう言わんばかりの口ぶりだ。
後詰が去った以上、我らはヴァーガル河を渡り、対岸の帝国残兵を蹴散らせば良いだけのこと――ウテカは、机上の書面を大仰に繰ってみせた。
「初戦の快勝により、このいくさの主導権は、我が軍にあることはお分かりでしょう。士気の高い我らにどうして仕掛けてきましょうか。敵もそう兵法に暗い者ばかりではな……」
「西進は
甥に言葉を遮られた叔父は、不快そうにあばた面をゆがめる。
「レオン殿はまだ若い。軍事に関しては我々の采配を学ばれるとよかろう」
ウテカは大儀そうに老眼鏡を外すと、甥に向けて言葉を投げつけた。小僧、これ以上しゃべるな、とばかりに。
帝国軍後詰がブレギア軍最左翼に向けて、ヴァーガル河下流へ押し寄せてきたのは、11月8日の朝のことだった。
【11月8日5時】ヴァーガル河の戦い 地図④
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330669249829133
7万の人馬が所有する足数は、少なく見積もっても20万を超えるだろう。これら足裏によって巻きあげた砂塵が、もくもくと天に登っていく。それらは東の空に顔を出したばかりの朝陽をあびて、明るい黄土色に輝いていた。
「ほっほっほっ、さすがアトロンじゃわい。後詰の
「あやつめ、伊達に戦場で歳をとってないのう」
ブイク、ナトフランタル両将は物見台にのぼり、帝国軍が巻き上げる砂塵を眺めていた。戦場で相まみえるのはもう何度目だろうか――敵司令官への
物見台は、文字どおり丸太を組んだだけの露天台であり、開戦と同時に砲弾が飛来する。そのような場所に司令官が長
将帥、兵卒とともに歩む。
将は兵にその身を委ね、兵はその
2人の宿将のもとには、あらかじめバンブライが火急の伝令を差し向けており、水辺を利用して迎撃する態勢を整えていた。
帝国側もそれを把握しているのだろう、対岸の敵が少数とはいえ、すぐに渡河を試みることはなかった。
迂回に成功した帝国軍後詰と河辺に迎撃態勢を敷いたブレギア最左翼――河両岸に布陣を終えた両軍が睨みあう。
ヴァーガル河流域に、新たな局面が生まれようとしている。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
ウテカのおかげで後手に回り始めたブレギア軍……イライラされた方、
帝国後詰を率いるアトロンと、ブレギア最左翼を率いるブイク・ナトフランタル――老将同士の決戦が気になる方、
🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レオンたちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「開戦」お楽しみに。
11月10日早朝、両軍の砲弾交換が遂に始まった。
前夜から急激に気温が落ち、この日は未明から川面から
帝国・ブレギア双方の奏でる爆音は、白霧と黒煙とに包まれていった。
対岸の帝国陣から霧越しにチカチカと光が瞬いた途端、轟音に次いで砲弾が乳白色の
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