ヒスイにコウモリ

九月ソナタ

アジア美術館にて

サンフランシスコのアジア美術館には、たくさんの翡翠が展示されている「Jade Room」あり、そこにはいると、なにやら不思議なパワーが漂っているのを感じます。


ある日、またジェイド・ルームに行くと、ちょうど中国人の学芸員のおじさんがいて、親切にいろいろと教えてくれました。

中国では、「翡翠」というのは「硬い石」のことで、

「ヒスイ、マラカイト、メノウ、サンゴ」

それらは全部、翡翠とよばれ、「福」を運ぶ石です。

だからそういう「福」を運ぶ石に、「福」の印を彫れば、最強なのだそうです。


翡翠の間には場所が場所なら国宝になるはずのお宝もありますが、

まずおじさんが教えてくれたのが、これ。(近況ノートに写真をアップしました)


軟玉に、五匹のコウモリが掘られています。

明朝と清時代のものがあり、

近況ノートに載せたのは清時代のもの。

小さめりんごほどの大きさ。


「コウモリは悪い虫を食べるからですか」

と聞いてみたら、

そうではなくて、


コウモリを漢字で書くと「蝙蝠」、

この『蝠(fu)』は『福(fu)』の発音が全く同じ、つまりダブル福ね。

これを持っていると五つの『福』が舞い込むそうなのです。


五福とは、

長生き、

富、

健康、

繁栄、

そして、

自然死、

だそうです。


「自然死ですか?」


日本にいたことがあるというおじさんは、

「夜寝て、そのまま、ぼっくり死ぬこと。ぽっくりが一番」

と言いました。


「五福」のひとつが「ぽっくり」、

なるほどねえ、

おじさん、ものすごく説得力ありました。


以前、台北国立故宮博物院展が各国で開催され、「翡翠の白菜」や「メノウの豚角煮」が紹介されていました。

このアジア美術館にも来ました。

あの「白菜」や「角煮」が美しいからではなくて、あれはふたつとない珍しい石で、珍しい石には「福」があるということでした。

中国の「美」は「長寿」と直結しているようです。









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