エピローグ
砂漠の夜は酷く冷える。
ネクとシェフィルも離れた場所の廃墟を探索し……夢中になりすぎて、夜を迎えてしまったのだ。
2人は車両へ戻り、見張りを残して交代で眠りについていた。
見張りをしているシェフィルは毛布にくるまって、じっと空を見上げていた。
そこにあるのは丸く白い光。
そして小さな無数の光。
普段鈍色に覆われている空はあの時のように、今日も偶然に晴れていた。
ただただ、シェフィルは月を眺める。
こつり、と音がして、シェフィルが振り返るとネクの姿があった。
見張りを交代する前に一緒に見ようと、隣に座るスペースを空け、毛布の半分をネク側へ広げる。
だが、なかなか座らないネクにシェフィルが首をかしげる。
ネクは小さな箱を取り出してシェフィルへと渡した。
シェフィルはとても驚いて、すぐに苦笑する。
ネクが隣に座ると、シェフィルは箱の中身を取り出しながら、口を開いた。
「月、きれいね」
「うん、月がきれいだよ」
ネクはシェフィルの、月の光に照らされて、白く輝くような顔を見据えた。
「それで……その、どうかな」
「……もう、そういうのはハッキリ言うものよ」
「いや、なんかやっぱり恥ずかしくて……」
「……いくじなし、幻滅しちゃうわよ」
「うっ……じゃあ、それ要らない……?」
シェフィルは「うーん」と唸りながら、ネクから渡された指輪を月の光で照らして眺める。
それを自身の手の薬指にはめ、ネクに向かってはにかんで見せた。
「要る」
二人は笑った。
二つに分かれていた影が、やがて一つになる。
砂漠の夜は酷く冷える。
だが月の光は、温かく二人を迎えているようにも思えた。
砂塵の時代 三二一色 @321colors
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます