早く好きって言って

@madder1

第1話

「おまえなんか大きらいだ!!」



小5の時の、あの一件で心にキズを負い、いまだ引きずっているのは······男の方だ。



―あれから3年後―



間宮ちひろ13歳。今日から中学2年生。


母「忘れ物ない?ハンカチちゃんと持った?」



ちひろ「大丈夫、ちゃんと持ったって。じゃあ行ってきまーす!」


(クラス替えで新しい友だち出来るかな?行事とか楽しみだなぁ。勉強はついていけるかなー。)



期待と少しの不安を胸に学校に到着。


玄関前に張り出されているクラス表を確認する。



ちひろ「えーっと、どこだ···あっ、あった!」



2-3に名前が書いてあるのを見つける。



亜子「ちひろおはよ〜またうちら同じクラスだよ!」



後ろからちひろの小学校からの友だち、亜子が話しかけた。



ちひろ「亜子!おはよーあっホントだ、亜子の名前もあった!一緒で良かった〜」



ちひろと亜子が手を取り合いながら喜ぶ中、隣からは女子達の嘆く声が聞こえた。



女子1「あーん、真音とクラス離れちゃった···寂しいよ〜」



女子2「私も〜休み時間真音に会いに行っても良い?」



真音「俺も寂しいよ。もちろん、いつでも会いに来て。」



ちひろ「···チャラ」



真音「あ?なんか言った?」



ちひろ「別に?思ったこと口にしただけ。」



このチャライケメン(イケメンは周りが勝手に言ってる)こと飛岡真音は小学校からのくされ縁で、中1までずーっと同じクラス。


元々仲は良かったんだけど、小5の時あいつに言われた一言が原因で今は犬猿の仲になっている。



亜子「真音、また違う女の子連れてたね。中学入ってから頻繁に告られてるし。」



ちひろ「小学校の頃なんて毎日泥だらけになって走りまわっていたのに、中学入った途端急に色気づいてさ。まぁ私には関係ないんだけど。」



教室に到着し、それぞれ席に着くちひろと亜子。



ガラッ

担任の先生が教室に入って来た。

そして先生の挨拶の途中で教室のドアが開く。



真音「すいませーん、遅れました。」



ちひろ(ゲッ···また真音と同じクラスなの!?)



先生「初日から遅刻するなんて、まったく何やってるんだ。」



真音「だって···女の子が離してくれないから。」



先生「そんな言い訳はいいから、早く席に着きなさい!」



クラスメイトが真音を見て一斉に笑っている



ちひろ(何やってんのアイツ···てゆーか、平凡な私の学校生活終わった···)




―放課後―



ちひろ「やっと真音と離れて新しいクラスで青春を謳歌しようと思ってたのに、卒業まで一緒なんて最悪···」



亜子「まぁまぁ、真音のことは女子達にまかせてうちらは新しい友だち、そして彼氏を作るべし!」



ちひろ「か、彼氏!?私なんて好きな人すらできたことないのに無理だよ。」



亜子「ちひろ、運命の出会いは突然やってくるものなの。来月の校外学習がチャンスよ!」



ちひろ「校外学習かぁ···なるほどね!じゃなくて、彼氏は亜子が頑張って。私はゆっくりじっくり探すから。」



亜子「···案外運命の人は近くにいたりして。」



ちひろ「いたら真音以外でお願いします!じゃあ私こっちだから。」



亜子「また寄ってくの?」



ちひろ「うん!亜子も行く?」



亜子「いや、帰ってマンガ読む。」



ちひろ「はいよーじゃあまた明日!」




亜子と別れてちひろが向かった先は、海沿いの防波堤だった。



ちひろ「あーこうして海を眺めながらボーッとしている時が一番落ち着く。」



家の近くが海なので、学校帰りによく防波堤に来てのんびりするのが日課になっていた。



ちひろ「学校着くまで少し不安だったけど、亜子と同じクラスで良かったー。早く学校生活に慣れると良いな。」


「校外学習も楽しみ。けど、アイツもいるのか···あーもう、ここまで来てアイツのことなんか思い出したくない!!ホントなんでこうなっちゃったんだろう。昔はよく一緒にここに来てたのに···」



その時、少し離れた場所から大きな声が聞こえた。



女子「ずっと思ってたけど、真音ってホントに私のこと好きなの?」



真音「うん。」



女子「じゃあ今ここで好きって言って。」



真音「好·········っ」



女子「はぁ〜それ何度目?やっぱり私のこと好きじゃないんだね。」



真音「っ······ごめん。」



バチーン 女子が真音の頬を思いきり平手打ちした。


その一部始終を目撃したちひろ···



ちひろ(えっ、まさかの修羅場!?真音のヤツ今度は何やらかしたんだ?てゆーか彼女···なの?いつも女子に囲まれてるからわかんない!)


(あっ、行っちゃった。女の子泣いてるし···早く追いかけなよ!!)



バチッ その時、こっちを見た真音と目が合うちひろ。



ちひろ(ヤバッ、目が合っちゃった···覗き見すんなとか言われるのかな。)



フイ 真音は目をそらすと、一人海に向かって歩き出した。


そして海の前まで行くと、その場にしゃがみこんだ。



真音(俺だって好きって言いたいよ。けどあの時のトラウマで、あの日以来好きって言えなくなったんだ···クソッ)



ちひろ「また派手にやったね。」



真音の顔を覗き込むように話すちひろ。



真音「うわっ、トラウマの元凶!」



ちひろ「は?何言ってんの。それよりそこ冷やせば?」



ちひろは濡らしたハンカチを真音に差し出した。



真音「···別にたいしたことないから。」



ちひろ「海水だからちょっと沁みるかもだけど、我慢して。」



そう言ってちひろは真音の腫れた頬にハンカチをそっと当てた。



真音「痛って······」



ちひろ「ホーント真音ってヤンチャなんだから。」



ドキッ 呆れながら笑うちひろの顔を見てドキッとする真音。



真音(おい、ドキッてなんだドキッて!昔はともかく、今は極力関わりたくない相手なのに。)



ちひろ「······さっき、彼女と喧嘩でもしたの?」



真音「···おまえには関係ない。」



ムカ

ちひろ「あーそうですか!余計なこと聞いてごめんなさいね!さよなら。」



怒って帰ろうとするちひろ。すると真音がちひろの腕を掴み、引き止める。



真音「ごめん、言い方悪かった。」



ちひろ「別にいいけど···関係ないのは事実だし。」



シーン しばらくの間沈黙が流れる。



ちひろ「えっと···そのハンカチ返さなくていいから、お大事にね。」



気まずさに耐えかねたちひろが口を開き、そして再び帰ろうとすると···



真音「ちひろ待って!」



ドキン

ちひろ(久しぶりにちひろって呼ばれた···)



真音「······あのさ、あの時のことなんだけど···」



ちひろ「あの時って?」



真音「小5の時。」



ちひろ「うん···」



真音「それで、あの、実は······」


なかなか言葉が出てこない真音。



ちひろ「実は?」



真音「っ······」



ちひろ「何?早く言ってよ。」



ドクン

真音は小5の、あの時のことがフラッシュバックした。



―回想シーン―


学校が終わり放課後、ちひろと一緒に帰る真音。



真音(今日こそはちひろに好きだって告白するんだ!)


「ちひろ、あのさ···」



ちひろ「うん、なに?」



真音「えっと、その······」


緊張で頭が真っ白になる真音。


(また今日も言えずに終わるのか?一言いえばいいだけだろ!あ〜どうしようオレ!)



ちひろ(真音なんだろう?てゆーか今日ピアノの日だ!急いで帰らなきゃ。)


「真音なに?早く言ってよ。」



プツン··· 真音の緊張の糸が切れる。



真音「······っ、おまえなんか大きらいだ!!」



―回想シーン終わり―




真音「ハッ、やっぱおまえ昔から変わんないな。」



ちひろ「なんのこと?そういう真音は変わり過ぎだけどね。」



真音はちひろに近付き言った。


真音「あぁそうだよ、変わったよ。あの日以来怖くて好きな気持ちを伝えることが出来なくなったからな、おまえのせいで。」


「······だから責任とって俺と付き合え。」



ちひろ「はぁ!?付き合うってなに!?そしておまえのせいとか責任って、意味わかんないんだけど。」


「そもそも好きな気持ちって、いつも彼女に伝えてるんじゃないの?あ、取り巻きの女子達にもか。」



真音「···あっ、間違えた。付き合うフリでいい。ニセのカレカノな。」



ちひろ「人の話聞けよ(怒) 付き合うの無理、フリも無理!好きな人とじゃなきゃ絶対無理!! 」



真音「じゃあ俺のこと好きになればいいじゃん。」



ちひろ「好···っ。ふ、ふざけたこと言ってないでさっきの質問に早く」



そう言いかけた途中で、真音がちひろの口をふさいだ。



真音「また“早く言って”?それ口癖なの?」


「···あの時、大きらいって言ったのはちひろに早くって急かされたから。ホントは告白するつもりだったのに。」



!? 真音のカミングアウトに衝撃を受けるちひろ。



ちひろ「えっ···告白って、真音私のこと好きだったの!?」



真音「ずっと好きだった。···今は違うけど。」



ちひろ「ずっと······ってかうん、今違うのはよくわかるけど。でも私と付き合う(フリ)のはどうして?」



真音「ちひろと付き合うことであの時ちひろに言われたトラウマと、自分が言ってしまった言葉の罪悪感を払拭出来ると思ったから。」


「さっきの喧嘩見てたと思うけど、好きな子に好きって言えなくて結局いつも振られるんだ。過去を克服して前向きに恋愛したいから、協力してくれないか?」



頭を下げて頼み込む真音にちひろは···



ちひろ「そっか···私の言った言葉のせいでずっと真音を苦しめてたんだね。ごめん。」


「真音が自分の気持ちを伝えられるように私も力になりたいけど、恥ずかしながら今までお付き合いも好きな人ができたこともなくて···多分役不足だと思う。」



真音「それは大丈夫、俺が優しくリードするから。」



ちひろに向けて右手を差し出す真音。



ちひろ「···カルッ」

「じゃあ、よろしくお願いします。」


その手を取り合うちひろ。



ザパーン 激しく波が打ち寄せ、ちひろと真音のお付き合い(フリ)が始まった。




―それから1ヶ月後―


ちひろは真音に溺愛される毎日を送っていた。


行き帰りも一緒、真音がだらだら歩いていると「早くして」と言うちひろ。


それに対して真音は

「早くしてよりこっちの方が良いんだけど?」とちひろの手を握り、もう片方の手でちひろのカバンを持つとすたすた歩いた。


学校でももちろん一緒。クラスメイトも真音の取り巻きの女子達にも付き合っていることは公認済み(フリのことは内緒)


ちひろに対する真音の溺愛ぶりを見て、女子達も静かに見守っている···というか諦めモード?


そしてちひろの友だち亜子だけには経緯を説明し、付き合っているフリをすることになったと伝えている。


授業中もちひろにアイコンタクト(?)を送ったり、休み時間や移動教室もピッタリくっついてくるので、真音の存在がだんだん窮屈に感じている今日このごろ···


そして楽しみにしていた校外学習までも真音と同じ班になり、気が重くなるちひろ。

この校外学習が吉と出るのか凶となるのかはたして!?




―校外学習当日―



先生「着いたやつから順にバスに乗り込めよー」



学校前に止まったバスに次々と乗り込む生徒達。


バスの前で亜子を見つけたちひろ。



ちひろ「あっ、亜子おはよー。バス一緒に座ろ〜」



亜子「何いってんの、ちひろは真音とでしょ?真音の隣、ちひろのために絶対空けてあるから。」



ちひろがバスに乗り込むと真音はすでに座っていて、隣はやはり空いていた···



ちひろ「別に隣じゃなくていいから、ホントに付き合ってるわけじゃないし···ごにょごにょ」



すると、ちひろに気づいた真音が声をかける。



真音「ちひろおはよ、こっち。」



ちひろ「ゔっ、おはよ···」



渋々真音の隣に座るちひろ。



真音「ちひろ窓側じゃなくて大丈夫?酔わない?」



ちひろ「うん、こっち側で大丈夫だけど。」



真音「だよな、ちひろはそんなタマじゃないよな(笑)」



ムカッ ちひろ「ごめんなさいね、かよわくなくて!」



真音「うそうそ、冗談。でもホントなんかあったら言えよ?」



ちひろ(イジワルなんだか優しいのか、なんなの···)



真音「校外学習、山だけど地元が海沿いだから山ってなんか新鮮だよなー」



ちひろ「だね。そう言えば山に行くのって小学校の遠足以来かも。」



真音「遠足と言えば小5の時の遠足でさー、どっちが早く登れるか競争したの覚えてる?」



ちひろ「うん。はりきりすぎて皆の列乱しちゃって、後で先生にめちゃくちゃ怒られたよね〜アハハ。」



ちひろの笑う顔を見て嬉しくなる真音。



真音「じゃあさ、今日も競争する?」



ちひろ「いやーさすがにもう無理でしょ、体力もたないよ。」



真音「途中でしんどくなったら俺が支えるけど?」



カァァ··· 真音の言動に顔が赤くなるちひろ。



ちひろ「いやいやいや、今日は大人しく列に並んでよ??」



真音「はーい。···けど午後からの自由時間は俺にちょうだいね。」



ちひろ「!?」




それぞれの想いを乗せて(?)バスは無事山へ到着。



先生「全員バスから降りたら班ごとに集まって、点呼とったら登山開始するぞー」



班は6人ごとで共に行動する。

ちひろが班長なので点呼をとる。



ちひろ「―···と真音で全員いるね。」


「じゃあ出発しよー!」



午前中は登山をして山頂で昼食。


午後からは集合まで自由時間。



ちひろ「緑も土の匂いも久しぶりだけど、懐かしく感じるなぁ。自然に囲まれてなんだか足どりも軽くなるっ。」



真音「ちひろ、最初からあんま飛ばすなよ。」



ちひろ「はーい。真音もね。」




―30分経過―



ちひろ「はぁっ、少しきつくなってきたな···他の子は大丈夫かな?」



ちひろが後ろを振り向くと、同じ班の女子が辛そうにしている。



ちひろ「大丈夫?少し休む?」



女子「大丈夫、休むと遅れちゃうから···」



ちひろ「そんなの気にしなくていいよ。辛かったら一回休も?」



真音「さすがに早くとは言わないんだな。」



ちひろ「は?なにいってんの?こんなに辛そうなのにそんなこと言うわけないじゃん。」



真音「リュック貸して。先生に言っとくから二人で休んでな。」



真音は二人のリュックを持ち上げそう言うと、再び歩き出した。


ちひろと女子はその場で休むことにした。


水筒のお茶を飲み少し落ち着いた女子。



ちひろ「さっきより顔色良いみたい。少し回復してきた?」



女子「うん、ありがとう。間宮さんも結構しんどそうに見えたから、飛岡くん心配してたと思う。」



ちひろ「えっ、私そんな風に見えた?」



女子「うん。私一番後ろにいたからわかるけど歩いてる時飛岡くん、何度も間宮さんのこと見てたし。」



ちひろ(そんなこと聞いたら私、真音のこと少しだけ好きになりそうになる······)




―遅れた二人も無事山頂に到着―



ちひろ「うちの班は···あっいた!」


「遅くなってごめん!無事到着しました。」



男子「お疲れ〜悪いけど皆昼飯食っちゃったよ。」



ちひろ「それは全然良いんだけど···あれ?真音は?」



男子「あーさっき別のクラスの女子に呼ばれてどっか行ったわ。」



ドクン··· ちひろ「そうなんだ···。あっ、私達もお昼ごはん食べなきゃね。」



昼食を食べ終わっても真音が戻ってくる様子はない。


そこへ亜子がやってきて、浮かない様子のちひろを見て···



亜子「ちーひろっ、なんか元気ないね。山登りで疲れちゃった?」



ちひろ「亜子···そうかも、久しぶりに登ったから。」



亜子「えっ、ホントに?小学校の登山遠足で真音と競ってたあのちひろがねー、ってそう言えば真音いなくない?」



ちひろ「うん···他のクラスの女の子に呼ばれたみたい。」



亜子「は!?みたいって···ちひろ止めなかったの?」



ちひろ「私が山頂に着いた時にはもういなかったから。それに私に止める権利なんてないよ。」



亜子「······ちひろはそれで良いの?真音、今頃告られてるかもしれないよ?」



ちひろ「気にならないって言ったら嘘になるけど、ホントに付き合ってるわけじゃないから何しても真音の自由だよ。」



亜子「最初ちひろから真音とフリで付き合うことになったって聞いた時はすごく驚いたけど、だってちひろと真音がだよ!?3年間も犬猿の仲だったのにさ、二人の間に何があったのか気になって気になって···。しかもフリって、真音いかにも何か企んでそうじゃん。」


「けど、この1ヶ月真音に振り回されながらもなんだかんだちひろが楽しそうに見えたし、また前みたいに仲の良い二人に戻ってほしいと思ってるよ。···ちひろ、また真音と離れても良いの?」



ちひろ「っ······真音のこと探してくる!!」



ちひろは真音探しに駆け出して行った。


その頃真音は、海で別れた元カノに呼ばれていた。



真音「ごめん、そろそろ戻っても良い?」



元カノ「真音のホントの気持ち聞くまではイヤ。」


「私と別れてすぐに今カノと付き合ったけど、今カノのことホントに好きなの?」



真音「うん。」



元カノ「っ······じゃあ、私のことは?」



真音「付き合ってた時はちゃんと好······っ、ごめん。」



その時、真音を見つけたちひろが駆け寄り···



ちひろ「真音!!」



思わず真音に抱きつくちひろ。



真音「ちひろ······」



元カノの顔が険しくなる。


元カノ「ねぇ、今カノのことホントに好きなら今ここで好きって言ってみてよ。」



真音「········っ、ちひろごめん······」



ちひろは真音の頭を優しくなでると


「いいよ。これ以上真音の苦しそうな顔見たくないし、それに大きらいって言われるより全然マシだから。」



そしてちひろは元カノに近付くと


「部外者が口出すのは申し訳ないですけど、真音が好きって言えなくなったのって私のせいなんです。だから私から謝ります、あなたのこと傷つけてごめんなさい。」


「でも、好きって言葉に出さなくても真音のあなたに対する言動や行動で好きって気持ちを伝えていたと思います。だから真音を責めないでください。」



真音と付き合っていた頃を思い出す元カノ。


元カノ「付き合っていた頃、いつも真音は私に優しくしてくれた。だから余計に好きって言ってくれないことに不安を感じていた···けど、その優しさが私を大切にしてくれていたことなんだと気づけたからもういいよ。」


「海では一方的に怒って、嫌な別れ方になっちゃってごめんね。今までありがとう。」



真音「俺も言葉足らずで、いっぱい嫌な思いさせてごめん。こちらこそありがとう。」



元カノが去った後、ちひろと真音は二人きりになり···



真音「···で、ちひろはなんでここにいるの?」



ギクッ 

ちひろ「いやー真音がなかなか戻って来ないからどこ行ったのかなーって。ほら、集合時間に間に合わなかったら困るし。」



真音「それだけ?」



ドキッ···

ちひろ「うん···」


「じゃなくて、ホントは心配した!また真音と離れたらどうしようって···」


「それと···バスで“自由時間は俺にちょうだい”って言ってたから···って言葉に出して言うと恥ずっ」



そう言い終えた時、突然真音がちひろをギュッと抱きしめた。



ちひろ「ま、真音!?」



突然のことにドギマギするちひろ。



真音「···さっきはありがとな。」



ちひろ「そんなの、元はと言えば私が原因なんだから、真音にも元カノにも申し訳ない···」


「だからと言って過去にタイムスリップして、もう一度小5のあの時をやり直すことは出来ないし···あーもう、こうなったら小5の私に代わって謝ります!ホントごめんなさい!」



真音「プッ、なんだそれ(笑)そんなこと言ったら俺だって、大きらいって言ってちひろのこと傷つけたし···だから小5の俺に代わってごめんなさい。」



ちひろと真音は顔を見合わせて笑う。



ちひろ(3年前と比べて、少しだけ目線が上になった真音。これからもっと差が開くのかな······)



真音「······ちひろ。フリじゃなくて、ホントに俺と付き合う?」



ちひろ「へっ!?なんで急に···もしかして、ホントに私のこと好きになっちゃった?」



真音「··········」



ちひろ「ちょっと、恥ずかしいから黙ってないで早くなんとか言ってよ!」



真音「大きらい······」



ちひろ ズキン··· 



真音「···の反対。」



ちひろ「えっ、それって···」



真音「の反対の反対の反対の反対···」



ちひろ「はぁーなにそれ!!サイテー!!」




真音「ハハッ、だまされた?」




ちひろ「もう!···けど、今はこれでいっか。」

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