ずっと敵わない人 5人用台本
ちぃねぇ
第1話 ずっと敵わない人
0:お菊の家にて
千代:お菊ちゃん、はいこれ
菊:わぁ!髪飾りや…可愛い
千代:(結ったお団子を見せて)うちとおそろいや。お誕生日、おめでとうね
菊:ありがとう、千代ちゃん!
恭介:僕からはこれ
菊:金平糖(こんぺいとう)や…綺麗やなぁ
恭介:気に入ってくれたら嬉しい
千代:恭介、なに贈ったらええかめっちゃ悩んで、私に相談しに来たんよ?
恭介:言わんとってよ、千代
菊:恭ちゃんありがとうね。嬉しいわぁ
恭介:(照れて)うん
千代:直秀は?
直秀:あ?
千代:あ?やないわ。あんた何持って来てん?
直秀:何って?
千代:だからプレゼントや!今日はお菊ちゃんの誕生日会やで?まさか手ぶらで来たとか言わんやろ?
直秀:…別に、誕生日なんか誰にでも平等に来るやろ。なんでいちいち物、贈らなあかんねん
恭介:え…直秀、手ぶらで来たの?
直秀:だったら悪いんか
千代:悪いに決まっとるやん!信じられへん!
菊:千代ちゃん落ち着いて
恭介:手ぶらはないやろ…せっかくお菊ちゃん、誕生日会に呼んでくれたのに
直秀:…「なんも要らんから来て」言うたんはお菊や。文句があるならお菊に言え
千代:はぁぁ!?
直秀:俺は「ケーキ焼くから食べに来い」言われたから来ただけや
恭介:だけって…
千代:直秀あんたアホなん?そない言われても手ぶらで来る奴はおらんやろ!
直秀:うるせぇバーカバーカ!
千代:はぁ!?あんたほんまいい加減にしいや!
恭介:やめなよ二人とも…
直秀:あーもうごちゃごちゃやかましいわっ!そないにやいのやいの言われるんやったら帰るわ!
千代:せやせや、あんたなんかさっさと帰りぃ!
直秀:くそっ
0:直秀退場
菊:直ちゃん待ってっ…!
千代:あんなやつ構わんでええよ
菊:でも
千代:お菊ちゃんは優しすぎる!あんな常識無し、ほっとけばええんよ!誕生日会にお呼ばれされて手ぶらなんて…何考えとるん?恭介もそう思うやろ?
恭介:まぁ…手ぶらはひどいよね。直秀、ほんとにただケーキ食べるために来たんやろか…
千代:そーなんやない?あいつん家、お父ちゃんおらんやろ。ケーキなんて滅多に食べられへんから来たに決まってるわ
菊:そんな言い方せんといて
千代:お菊ちゃん、なんでそないにあいつを庇うの
菊:うちが来てってお願いしたんよ
千代:それでも手ぶらはないわ!何かしら持って来るもんやろ?
恭介:せやなぁ…直秀、「おめでとう」すら言わへんかったもんなぁ
千代:ほんまサイテーなやっちゃ!あんなやつに構ったらアカン!ほらお菊ちゃん、仕切り直しや仕切り直し!
菊:うん……
0:2時間後
菊:今日は来てくれてありがとうね
千代:こっちこそ!お菊ちゃんのお母さん、ケーキ焼くの上手やなぁ
恭介:美味しかった、ご馳走様。また明日
千代:また学校でね!
菊:うん、また明日
0:3人退場。入れ違いに姉の百合帰宅
百合:ただいま
菊:あ、姉さん。お帰りなさい
百合:あら、わざわざ出迎えてくれたん?
菊:ついさっきまで千代ちゃんと恭ちゃんが来てくれてて、そのお見送りしとったんよ
百合:あー誕生日会やっとったんやったね。お誕生日、おめでとうね
菊:ありがとう
百合:あれ、今日は直くんは呼んでへんの?お友達二人だけ?
菊:あー…直ちゃんは先に帰ってしもて
百合:そうなん。…あ、直くんからお花もらった?
菊:お花?もらってへんけど
百合:そうなん?じゃあ別のもんにしたんやね
菊:…?直ちゃんはなんも持ってこーへんかったよ?
百合:ええ?…おかしいなぁ…
菊:姉さん、お花ってどういうこと?
百合:んー…あの子、一週間くらい前やったかしら?道端でばったりおうてね、「お菊の好きな花教えてくれ」って突然聞いてきよったんよ
菊:直ちゃんが?
百合:うん。「チューリップが好きよ」って教えたら、「今の時期に咲いとる花の中で好きなのはどれや」って言うから…てっきり誕生日にあんたに花でも贈りたいんか思って
菊:…ちょっとうち、出かけてくるっ
百合:ええ、今から?もう暗くなるよ?
菊:すぐ戻るからっ
0:外に飛び出したお菊は、直秀の家を訪ねた
菊:直ちゃん!
直秀:なんやお菊…誕生日会終わったんか
菊:うん
直秀:……文句言いに来たんか
菊:なんで
直秀:…ほんまに手ぶらで行ったから。でも手ぶらでいいって言ったんはお前やからな
菊:直ちゃん、ほんまに手ぶらで来てたん?
直秀:…そうや
菊:嘘
直秀:嘘ちゃう
菊:嘘!直ちゃんは嘘つくとき、いっつも左のほっぺ触るんよ!
直秀:なっ
菊:ほんとは手ぶらやなかったんやろ。何持ってたん
直秀:…なんも持っとらん
菊:直ちゃん、ほんまに嘘下手やわ
直秀:嘘なんか
菊:ほな、うちの顔見てもっかい言って。「なんも持っとらん」って
直秀:俺は…ほんまになんも…
0:とっさにポッケに手を突っ込んだ直秀に気づいたお菊
菊:そこに何かあるん?
直秀:無い
菊:出して
直秀:だから無いって
菊:無いなら手ぇ出して!
0:観念した直秀がよれた栞(しおり)を取り出した
菊:これ…押し花?これ、うちにくれようとしてたん?
直秀:………
菊:なんでさっきくれんかったの?
直秀:渡せるわけないやろ…俺、こんなのしか作れんかったのに
菊:え…この押し花、直ちゃんが作ったん?うちの為に?
直秀:…
菊:もしかしてこれ、栞?
直秀:悪かったな、下手で
菊:そんなこと言っとらん!なんでさっきくれへんかったの
直秀:だからっ…!俺ん家金無いから…道端で適当に摘んだ花で作った栞って、こんなん出しても笑われるだけやん。あいつらええもん持って来るし
菊:笑わんよ
直秀:嘘や
菊:嘘やない。それに、適当やないでしょ?うちの好きなタンポポ入っとるよ。選んで作ってくれたんやろ?
直秀:偶然や
菊:嘘
直秀:嘘やない
菊:(笑って)また左のほっぺ、さわっとーよ?
直秀:なっ…もういいだろ、返せよ
菊:え?うちにくれるんやろ?
直秀:返せ
菊:なんでなん
直秀:見たらわかるやろ
菊:わからんわ
直秀:…お前ん家行く前にコケて…ぐしゃぐしゃになったんよ
菊:ぐしゃぐしゃって…ちょっと折れてるだけやん。気にせんよ
直秀:俺が気にするんだよっ
菊:…なあ、ほんまに返さなあかん?これ、もらったらあかん?
直秀:そんなんもらってどうするん…ゴミやん
菊:ゴミやない
直秀:ゴミやろ
菊:ゴミやない!…好きな人が、うちのために作ってくれた大事な栞や
直秀:お菊…
菊:宝物にするんやから…ケチ、つけんとって
直秀:…嫌や
菊:直ちゃん
直秀:…こんなぐちゃぐちゃの渡すの、嫌や。もっかい作らして
菊:え
直秀:…どうせ渡すんなら、ええの渡したい
菊:直ちゃん…!
直秀:…せっかくの誕生日会だったのに飛び出してごめん。…ちょっと遅くなるけど…プレゼント、ちゃんと渡すから待っとってほしい。あと……誕生日、おめでとう
菊:…直ちゃん!ありがとう、大好きやっ!
直秀:ちょ、抱きつくなてっ!
菊:うちほんまに、手ぶらでもよかったんよ!来てくれただけで嬉しかったんよ!なのにこんなに素敵なプレゼントもろて…うち、幸せ過ぎてどうにかなりそうや
直秀:大げさなんよ、お菊は
菊:えへへ~直ちゃん直ちゃん、もっかいゆって
直秀:なにを
菊:さっきの言葉!
直秀:ん?…「大げさなんよ、お菊は」?
菊:ちゃう!その前
直秀:「…抱きつくな」?
菊:ちゃーう!ねえ直ちゃん、うちほんまに手ぶらでもよかったけど…一個だけ欲しいものがあったん!うち今それ、直ちゃんからもらったんよ?
直秀:(気づいて顔を覆う)あーもう……
菊:ねぇねぇ、もっかいゆって?
直秀:あー……「誕生日おめでとう」…これでいいんやろ?
菊:ありがとうーっ!直ちゃん大好きっ
直秀:…ほんま、お前には適わんわ
0:50年後(孫役は百合役の方兼ねてください)
孫:あれ、おばあちゃん本からなんか落ちたよ~
菊:あらいけない
孫:なにこれ、栞?随分色褪せたの使ってるんだね
菊:うふふ、これは婆ちゃんのとっときの宝物なんよ
孫:宝物?
菊:そう
0:直秀登場
直秀:おおい、お菊。恭介呼びに来たで
菊:はあい。(孫に向かって)それじゃ愛子、お婆ちゃんたちお出かけしてくるね
孫:うん、爺ちゃんに「千代婆ちゃんにつっかかったらあかんよ」って言っといてね
菊:ふふ、聞くわけないわ、あの二人は昔からそうなんだから。それにね、ムキになってるお爺ちゃんは可愛いのよ。それじゃあね
0:場面転換
直秀:なにしとったん
菊:んー?愛子にね、直ちゃんは可愛いって教えとったんよ
直秀:やめい孫に、恥ずかしい
菊:ふふふ。直ちゃん、大好きよ
直秀:……はよ行くで
菊:顔が赤いですよ
直秀:うっさい。(ボソッと)ほんま、いつまで経っても適う気がせんわ…
ずっと敵わない人 5人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
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