第3話 少し寂しい
昼休憩が終わり午後の授業が始まった。
先生が歴史の登場人物を黒板に書いていく後ろ姿を見ながら美月は先程、陽が言ってた「俺らには美月がいるからいーの」の言葉が頭の中をグルグルと回っていた。
「(そんな理由で彼女作らないとかその内葉くん達の事が好きな子に刺されそう…)」
小学5年生から一緒に生活をしているが今現在まで3人とも彼女がいなかった。美月も同様今までにお付き合いした事は無い。今までに良い感じの男子は何人かいたが、毎回突然顔色を悪くしながら「俺とお前は良い友達だな」なんて言ってくる為いつも友達止まり。そしてその原因は凛と陽がこっそり裏で美月に近づく男子たちの邪魔をしていた事を美月は知らない。
「(葉くん達彼女できたら毎日一緒に食堂でご飯食べたり休みの日にお出かけしたり出来なくなるのかなー)」
3人に彼女ができた時の想像をして少し寂しくなる美月。本当は彼女ができたら喜ばしい事だろうが少し複雑な気持ちにもなる。
「(寂しいって…私ブラコンじゃん)」
もしかしたら葉くん達もそれをわかってて彼女を作らないのか…なんて思ったりもしたが少し自意識過剰すぎるような気がして考えるのをやめた。
「(…でもそのうちそういう日がくるんだろうな)」
教室の窓から風で揺れる木々を見ながら小さなため息をついた。
❃
「私今日バイト休みだけど美月休み?」
「今日は休みだよ。咲希またサッカー部見に行くつもり?」
「当たり前よ。
「ガチなやつだ…愛は部活だよね?」
「うん、来週試合だからね」
相変わらず授業中はぼーっとしていた美月。
いつの間にか授業が終わって放課後になり、咲希にサッカー部の見学に(ほぼ強制的)誘われた。咲希がいう湊先輩とは3年生でサッカー部のキャプテン俗に言う爽やかイケメンな人だ。愛はテニス部に入部している為ここでお別れになる。
「じゃあ愛、部活頑張ってね」
「ありがとう。美月、咲希また明日ね」
愛と別れ美月と咲希はサッカー部の元へ向かった。サッカー部はイケメンが多いと有名で毎日のように女子が部活を見学しに来ている。
「…あ、葉くんだ」
「うわぁ、弓道着姿の葉先輩かっこいい」
咲希と他愛もない話をしている道中、力強くでもどこか優しいような弦音の音が聞こえすぐ側の弓道場を見るとそこには弓を引く葉の姿があった。
「葉くんこう見るとすっごく大人っぽく見えるんだよなぁ」
「葉先輩って色気あるよね」
「い、色気?!」
「しっ!ちょっと声大きいわよ」
弓を引き終わった葉が美月に気づき優しく微笑んだ。制服姿とはまた違う雰囲気の彼に美月は少し見惚れてしまう。
「なるほど、こうやって女子たちのハートも射抜いているわけね」
「な、何言ってるの?咲希…てかサッカー部いいの?」
「あ!行かなきゃ!美月サッカー部向かうわよ!」
「早く行くよ!」と美月の腕を掴み走り出す咲希に「え、ちょっと待って…!」と慌てながらもついて行く。
「葉なんか嬉しそうだな?」
「ちょっとね…可愛いなって思っただけ」
「可愛い…?あぁ妹か、お前シスコンすぎだっつーの」
「そうかもね」
同級生に言葉を返しながら美月の後ろ姿を見つめる葉だった。
strawberry kiss ユエ @yue30
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