第4話 サンクチュアリ解放
あの日のことを思い出しながら、ベッドに一緒に寝転んだ鞄から、スマホを取り出した。
そんなに写真は撮らない。何も撮るものなんてないから。クラスメイト撮ったって、仕方ないし。ペット、飼ってないし。スイーツはすきだけど、食べるのがすきなだけで、バエルとか、興味ないし。Instagramも、Facebookも、Twitterも、なーんもしてないから、スイーツ撮ったって載せる所ないし、呟かないし。
只、残ってるのは、あの日の新藤先輩のほっぺしか映ってない、後ろ姿。その隣には、先輩を、呼び捨てにした、彼女の姿。私が言うのもなんだけど、そんなに、ド美人って訳じゃなかったけど、可愛らしくて、ニコニコした笑顔がとても印象的で、自分は絶対できない顔だから、羨ましくて、妬ましくて、【『春日博信』を聖域で共有しました】なんて、言っても、痛くも、痒くも、苦くも無いんだろうな…って、ヤキモチ焼いたの、憶えてる。
その写メは、写真にすらしてない。女々しいな、って思うから、飾って置けば、アイツに言ったみたいに、『もう誰もすきにならない』って言葉が、本当になりそうで、何となく、自制してた。でも、スマホから消す事だけは…出来なくて…。
気が付いたら、泣いてた。
「先輩の…馬鹿…」
先輩は、馬鹿じゃない。馬鹿なのは、私。あんな、何でもない出来事に運命を感じた私が自信過剰。自意識強い。聖域を…共有したなんて…思い上がりもいいところ。
アイツみたいに、聖域なんて関係なく、すきだって、言える人、本当は、羨ましかった。態度はでかいし、口は悪いし、俺様バンバンだし、自分勝手だし、…勝手に、靴、運動着、辞書、教科書…買ってくるし、無視されるくらいで済んでるのは、アイツの一括のおかげだし、………抱き締められるの…初めてだったし…。
あのくらい、相手の聖域に入ってこようとする奴、初めてだった。でも、そんな私だって知ってて、アイツは、なんで私をすきになったの?心当たりがないよ…。
「アイツに…聖域、赦したら、楽になれるの…?」
そう呟いてみたけど、なんか、逃げるみたいで、アイツの思い通りになるみたいで、先輩だけに赦した聖域、壊しちゃいそうで、初恋が、溶けちゃいそうで、2歩も、3歩も、急に動けないんだ。最初の1歩すら、まだ、歩き出せてないんだから。
でも、そんなこと、考えてるってことは、私、アイツに、何か聖域、侵されたのかな?って、頭で考えると、ぐちゃぐちゃになる。赦したくない。あんな、上から目線の、私の為に何人フッたとか、いきなり抱き締めるとか、あり得ない。
「聖域って何…なんで…口悪いのに…なんで…態度でかいのに…なんで…こっぱずかしいことしてくるのに…、なんで…気になるんだろう…?アイツの聖域…入ってみたい…」
そんな言葉が、星杏の口から零れ落ちた。
でも、すきになる前に…って、もう、少し惹かれ始めている星杏だったが、聞きたかった。なんで、こんな目立たない、自分に、学校1モテル男が、告白なんてしてきたのか。からかう為?冗談?意地悪?………本気?
「明日…聞いてみようかな…。もう…逃げたくない…」
―次の日―
「せんぱー…」
「おはよう」
「…お、おはよう…」
亜湊真はちょっと面食らった。昇降口で、キリッと、目をギラつかせて、星杏が立っていた。
「今から、時間ある?」
「え…まぁ、ある」
星杏は、亜湊真を裏庭に連れ出した。
「何?ちなみに、俺、昨日5人フったから」
「聞いてない」
「…あっそ…」
ちょっとすねた亜湊真。
「聞きたいことがある」
「何」
「どうして、私をすきなったの?」
「それって、あんた特有の、侵しちゃいけない聖域って奴なんじゃないの?」
「あなたの…矢代の答えによっては、私の聖域を…侵しても…良いかなって………思って」
「…………」
亜湊真はしばらく、沈黙した。星杏は、胸のドキドキを隠すのが、困難で、過呼吸にでもなりそうだった。
「……あの…卒業式の日…、お前…立川…先輩、泣いてた。多分、失恋なんだろうな…って思った…。すきって、言えばいいのに…って思った。で、その2人が校門出たら、先輩が校門に来て、『聖域、侵せませんでした。でも、すきでした。でも、少しだけ、交換し合えました。それだけで…十分です…』って校門に向かって呟いてて、『こいつ、不器用だな…。こいつ、優しい奴なんだろうな…』って。聖域って意味わかんなかったけど、奪う他に、幸せを願う。『最後だから、写真一緒に撮ってください』くらい言ってもいいのに、出来なかっただろう?彼女の為に。困らせたくなかっただろう?あの、カップル。あの時お前は、聖域を晒したんだ。男の方は勿論、女の方も、お前は、聖域侵して、心から、祈ったんだ。2人の幸せを…」
「…あの瞬間に、そんな難しいこと、思ってたの…?」
「俺、頭いいから。すきになった人のこと、荒らすの、得意なんだよ。ってか、あんたには…星杏には、最悪なシンパシーの不一致だったんだけどね…。でも、あの、星杏の涙が、忘れられなかった…。どんな奴なのかな?って」
「そんなことで、私をすきになったの?」
「どんなきっかけでも、一目惚れって…あんだよ…」
亜湊真の顔が赤い。
「私は…聖域なんて言葉で、逃げてただけなのに…、すきも…言えなかったのに…、矢代は…あんなに、はっきり、聖域を開いてくれてたんだね…。おいで、って。こっちに。って」
そう言うと、星杏は、スマホを取り出した。横顔だけの新藤先輩の写メを見て、星杏は、呟いた。
「ありがとう。新藤先輩。もう、私、先輩に聖域見せたこと後悔しません。これから、見せることにも躊躇いません。ここには、誰より、私に聖域見せてくれる人居るんで。私も、誰のものでもないけど、聖域は、共有したいと、思う人が出来ました」
「…星杏…」
「すきだよ!!矢代亜湊真!!よろしくね!!」
サンクチュアリ~私は誰のものでもない~ 涼 @m-amiya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます