動きだす

あれから数日、涼音は有言実行をし俺は今大ピンチに直面しているのかも知れない。


「なぁ薫、此間は本当に悪いと思ってるって」


正義が朝から小声で俺に謝ってきた。


「別になんとも思ってねぇよ。どうせ涼音に何か弱みでも握られてるだろ?」


薫ももう気にしてはいなかった。

最近の涼音を見て薫も正義が涼音に何かしらの弱みを握られいるということは容易に想像できる。


「そう言ってくれると助かる」


正義もそっと胸を下ろす。


「それよりいいのか?俺と一緒にいて?」

「バカ野郎!俺があんな噂を気にするとでも思ってんのか?」

「いや、けどな・・・」

「あーあー、そういうの無し!どうせ九重の策略だろうに。ほんとどうやってんのかねー?」


そう、あの日から少しずつ誰にも気づかれないように俺の悪い噂が学校中に広まっていた。

そして更にタチが悪いのはその噂の中心人物が俺と関わりのある人物が多いと言うことと広まってるのが俺との関わりが皆無の他学年からだと言うこと。

ウソとはその中身に少しの真実や現実味を持たせることで真実味が増す。

それに加えて他学年から広まったことにより既に尾鰭が付いて状態で広まってしまったことと噂の発見が遅れたことで取り返しのつかないところまで来てしまったということ。


「そう言いつつも中学の頃アイツに協力してイタズラしてたのはどこのどいつだよ?」

「しーらね、俺は過去は見ない主義なんだ」

「あっそ」

「それよりどうするよ?お前のことだから周りは気にしないと思うが奈々ちゃんがどう思ってるのか気になってるんじゃねえのか?」

「ああ、そのことなんだが実は先日、俺が噂を確認した際、秘密裏に奈々と接触して直接本人から聞いてみたんだけど『安心して薫君!私は君がそんな人じゃないって分かってるから!私からも涼音ちゃんに言っとくから安心して!』て言ってくれたんだ」

「へー、それは良かったな」


薫がそのことを嬉しそうに語り正義も自然と嬉しくなる。


ピロリンピロリン!


「ん?」


急に薫のスマホが鳴り出した、通知を見ると相手は奈々だった。


「もしもし」

『あっ、もしもし薫くん?』

「どうしたんだ奈々?」

『ごめん、ちょっと今日の放課後、屋上に来てくれない?』

「えっ?いいけど」

『ほんと!ありがとう!』


そう言った奈々が電話を切った。


「おいおい、ほんとに行くのか?」

「もちろん!奈々の誘いは断れないからな!」


正義は心配そうに聞くが薫は嬉しそうに答えた。


「そうかよ。くれぐれも気をつけてな」

「ああ!」



***


昼休みの屋上、そこには二人の女子生徒がいた。


「まさかあなたが私をこんなところに呼び出すなんてね」

「その言い草はないんじゃないかな?」

「気安く私の名前を呼ぶなこの女狐!」


涼音は誰にも聞かせたことのない汚い口調で奈々に怒鳴る。


「それでこんな所に私を呼び出してなんの用なのよ。これでも私は忙しいの」


涼音は腕を組み足を鳴らし、明らかにイラついてる。


「ねぇ、どうしてそんなに怒ってるの?私何か涼音ちゃんに悪いことした?」


奈々のその可愛い子ぶる口調にさらに涼音はイラつく。

 

「いつまで猫被ってんのよ!イライラするからやめてくるれかしら!」


涼音がもう一度ど怒鳴ると奈々は笑みを浮かべた。


「ごめんね。ちょっとからかってみただけ

「御託はいいから早く要件をいいなさい!私は今絶賛大忙しなんだから!」


奈々は涼音のその余裕のない態度に溜め息が出るが本題を語る。


「じゃあ、言うけど、薫の噂広めんのやめてくれない?」


さっきの可愛いらしい雰囲気は何処やら奈々も涼音の様に口が悪くなる。


「はあ?あんたに指図される言われはないわ。そもそもの話、あんたさえ居なければこんな面倒なことをしなくて済んだのよ」

「私が悪いって言うの?」

「ええ、そうよ!あんたと言う存在が私にとっては邪魔でしょうがないわ!」


八つ当たりもはだはだしいが涼音にとってはそんなこと些事でしかない。

彼女にとって花瀬奈々とはでもそれほどの人物なのだ。


「中学の時からそう!あんたも気付いてたんでしょ。薫があ、あ、あ、ああああんたにほ、惚れていたこ、こと・・・」



涼音は認めたくないからこそ唇を必死に噛みながらそう言った。


「ええ、知ってたわよ。バレバレだったわよ」

「ええ、でもあんたは薫には異性としての魅力は無かった。そうでしょ?」

「まぁね」

「なのにあんたはいっつもいっつも私の邪魔ばかり!薫と二人っきりというところでいつもあんたが居たり話しかけて来たり!ほんと、あんたが何を考えてるのかさっぱりわからなかったわ!!」


涼音は今までの怒りをぶつける。


「わからない?本当に?」


奈々は煽るように言った。


「私はね、アンタを超えたいのよ」

「私を、超えたい・・・?」

「そう。アンタはいつもそう、平然と全てで一番を取る。勉強でもスポーツでも人気でも!私は常にアンタの次の二番目!」

「なによ、まさかそんな事で私の邪魔をしてたの?バガじゃない?」


涼音は心底どうでも良いと奈々の言葉を一刀両断する。


「そんな事って・・・・・・」


奈々は拳を握りしめる。


「一番がいいならお好きにどうぞ、なんなら手を抜いてあげてもいいわよ?」


涼音はそれだけ言って屋上を去る。


「覚えてなさい・・・・・・私を舐めたこと絶対に後悔させてやるから」


奈々はスマホを取り出し一人の人物に電話をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染は俺が欲しくヤンデレになってしまった。 鳳隼人 @dusdngd65838

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ