第7話 エピローグ そして、冒険が始まる!?


 由香と亮介はぐちゃぐちゃの土砂の上に転送された。


「亮介、大丈夫?」

「うん。それよりパパとママを探さなきゃ!」


 転送された途端、ふたりは両親を探し始めた。


 ぐっちゃぐちゃの土砂の上は足をとられて動きにくく、ふたりは何度もこけながら、両親の姿を探す。

 やがて二人は動けなくなる程、体力を消耗し、土砂の上に倒れこんだ。


「ねえちゃん、パパとママはどうなったんだろう?」

 亮介が不安そうな声を出す。

「あきらめるな!パパとママもきっと大丈夫」

 由香はそう言い、再び立とうとした。その時、


「おい!あそこにふたりがいるぞ!」


 叫び声が聞こえ、声の方を見ると大勢の男の人たちが駆け上がってくるのが見えた。

「おい、大丈夫か!?」

 傍に来た男の人が声をかける。

「由香ちゃんと、亮介君か!?」

「…はい」疲れ切った声で由香が返事をすると、男たちは下に向かって手を振り、大声で叫ぶ。


「いきているぞー!!ふたりとも無事だー!!」


    ◇


 由香と亮介の救出劇はTVでLIVE中継されていて、日本中の人を沸かせたようだ。


 父と母は、怪我を負ったものの、地すべりの直後に救出されて病院に運ばれ無事だった。しかし二人の姉弟が取り残されているという事で、自衛隊や消防が必死に救出活動をしてくれていたのだ。


 まる一日たってから、二人が無事救出されたということで、日本中大騒ぎになっていた。


 二人は、両親の顔を見た時、緊張が一気に緩み、車椅子に乗っている両親にしがみつき大声で泣いた。

 その姿は顔が見えない角度でちゃっかり撮られおり、翌日のニュースで放送され、日本中を感動させたようだった。


 二人は入院して色々と検査をされたが、怪我もなく、大人たちを驚かせた。色々質問されるのも嫌にやり、すぐに父の病院に家族とともに転院という形で退院した。


 さわぎは2週間程続いた後、ようやく落ち着いた。



    ◇


 由香は自室のベッドの上に寝転んで、梅の板を1枚、口に放り込んだ。

 そして、このお菓子が大好きな聖獣セリアンを思い出し、異世界に思いを馳せる。


「ねえちゃん、はいるよ」

 そう言って亮介が部屋に入ってくる。

「なに?どうしたの?」

「いや、この写真いるかなと思って」

「写真?」由香は上半身を起こす。


「これ」

 亮介がスマホの画面を見せる。そこには聖獣のセリアンと契約した時に、由香がセリアンの放つ光に包まれているところが映っていた。


「すご、よく撮れたね?」

「でしょ?」

「他には?どんな写真撮ったの?」

 由香はそう言い、亮介のスマホを引っ張った。

「あ、おい、やめろよ」


「なに?なんかまずいこと…」由香がそう言いながら指で写真をめくっていくが、王女セシルの姿ばかりが表示される。


「へえー」

 にやにやして由香は写真を見る。

「ちょ!返せよ!ばか」


 真っ赤になって亮介はベッドに足をのせ、姉からスマホを取り返そうとするが、由香は意地悪をして渡そうとしなかった。


「ばか姉ちゃん!返せ!」

「いやーだよー」

「くそ、返せよ!」

「きゃ、ちょっと亮介!」


 亮介が由香の腕を強く引っ張り、その勢いで二人は転がるようにベットから落ちた。



 ◇


「いったぁ…バカ亮介!何するのよ」

「そっちこそ!人の嫌がること!・・・」

 ふたりは、お互いの文句を言いながら起き上がろうと上半身を上げた。

 その時――、二人の視界に周りの景色が映って、ふたりは絶句する。


 「………」


 そこは祭壇の上だった。

 目の前には聖女レイアが驚いた顔で立っている。

 レイアの後ろには、アーロンやセシル、サランたちも居て、皆びっくりして二人を見つめて絶句していた。


 ふたりは顔を見合わせる。

「どうやら私達、異世界を行き来できるようになったみたいね」


 こうやって二人の本当の冒険が始まったのだった。


 End

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聖なる石を探す旅 -冒険の始まり- あきこ @Akiko_world

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