第五話 さようなら
あれから先生はずっと考えていた。何かいい方法はないか。
新たに同じ本を入手するのは無理そうだった。ネットで調べても、SNSで検索しても、先生たちに聞いても知る人はいなかったのだ。
みんなが平等に、いつでも読めるようにできないか。
先生はいろいろ考えて、異世界天職の本を、町の小さな、学館においてもらうことにした。
普段は、勉強する中学生とか高校生なんかが主に使っている場所らしい。
子供たちからは、もっと読みづらくなると批評だったが、しょうがないと先生は腹をくくる。
また、何か子供たちに言われたら、その時は一人一人ちゃんと事情を話すことにした。またあんな喧嘩はさせたくなかったからだ。
と、思っていたらそんなことはなかった。
異世界天職の本が図書室からなくなると、子供たちの熱狂的なブームも過ぎた。
いや、忘れてしまったのか。
一カ月も経つ頃には、誰もその本の存在すら忘れてしまっていた。
そして、今もその本は、学館の奥底に、ひっそりと、在り続けているのであった。
シロツメクサは雨降り図書館 彩灯快 @Saiko_Yosi
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