「メモ書き」

低迷アクション

第1話



 ゴミ収集員“N”の話である。昨今のプライバシーがどうとか社会に反比例して、

家庭から出るゴミは、水道料金など住所記載ありきの個人情報ダダ漏れの現実…N達の目には嫌でも、上記の紙片群を目にする事になる。


そんな作業中、生ゴミの腐敗臭が蔓延する集積所に、それはあった。

ビニールの袋に満載された濃い色合いの中で一際目立つ白…


大学ノートを千切ったようなメモ書きに、以下の記載…


「〇〇ちゃんへ、ご飯は冷蔵庫の中に…暖めて食べてね、ところで…」


出だしは、よく見かける文章、落ち着いた文体、問題は後半…


「アレはまだ出る?」


今までに見ない内容だ…収集箇所の後ろは市営団地。恐らく、母子家庭の鍵っ子に当てたモノ…


しかし、アレとは何だ?同僚にも見せたが、気にしない流れとなり、作業を終える。だが、次の収集時にも、そのメモはあった。


「〇〇ちゃんへ、今日は帰りが遅くなります。ご飯は(同じ内容)ところで…

アレは出る?」


問いに対する答えはない。当たり前だ。これはメモ書き。返事は必要ない。

同僚にメモを見せる。少し引き攣った顔で頷く彼と作業を終えた。


こうしたメモを何度か確認した、ある日の事…


いつもの白に違う色“返答”があった。


「でる…いまもうし」


ろ(団地)を振り返る事なく、Nは赤く汚れたメモ書きの入ったゴミ袋を車に投げ込むと、作業を終えた…(終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「メモ書き」 低迷アクション @0516001a

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る