やったね!かがみちゃん

Glacialis

やったね!かがみちゃん

八田野かがみ(8)元気小学校・小学二年生

八田野睦月(12)元気小学校・小学六年生、かがみの兄

暮川菜々(8)元気小学校・小学二年生、かがみのクラスメイト

八田野冬馬(32)かがみの父、霊能師

江路村渉(39)かがみと菜々の担任・体育教師

空元隼汰(23)菜々の義父

福山由紀美(29)かがみと菜々の副担任

村田靖(60)警察官

暮川悦美(30)菜々の実母

八田野ひめ子(30)かがみの母、主婦

生徒A(8)

警官B(30)



○元気小学校・体育館

   八田野かがみ(8)は、江路村渉(39)がマット上で暮川菜々(8)を必要以上に身体を触り指導するのを見る。

かがみ「先生!みんなの授業を進めてください」

江路村「あのねっ、暮川さんはねっ、後ろがえりができないからねっ、皆んなで体育の授業が出来なくなっちゃうからねっ」

かがみ「そんなことありませぇん!菜々ちゃんは立派にできまあす」

   かがみは首のペンダントを菜々に当てる。

   菜々はくるっと後ろがえりをする。

   菜々の腿に青アザ。

江路村「…あれっ?」

かがみ「菜々ちゃん、こっち!こっち!」

   菜々はうつむきながら走り、かがみの横に立つ。

菜々「かがみちゃん‥ありがと‥それ鏡のペンダント?‥すごく光ったね」

かがみ「凄いでしょ?お婆ちゃんの形見なんだ。光ったら私を助けてくれるの」

菜々「へ〜いいね!」

かがみ「そうだ、今日、一緒に帰ろうよ!ペンダントの事いっぱい教えてあげる」

菜々「うん!‥‥あ‥でも‥‥オジちゃんが一人で帰りなさいって‥」

   かがみは首を傾げる。

かがみ「オジちゃんって誰?…なんで?‥じゃあ、途中まで一緒に帰ろ」

菜々「うん‥いいよ」


○暮川家・団地通学路(夕)

   かがみは菜々と団地前まで下校する。

菜々「うち‥ここの団地の2棟目だから‥じゃあね‥バイバイ」

かがみ「また明日、学校で会おうね」

   かがみは2棟目の階段を菜々が上がっているのを見る。

   八田野睦月(12)がかがみの肩を叩く。

睦月「まぁた寄り道してんのか?」

かがみ「お兄ちゃん!友達を見送ってるの」

   かがみは睦月に2棟目の3階の通路を指す。

   菜々が隅の部屋のドアを開けるのが見える。

   空元隼汰(23)が出て、菜々の頭を殴る。

かがみ・睦月「わっ!!」

   かがみの鏡が弾みで光る。

   空元は菜々の背を押して家に入れ、ドアは閉まる。

かがみ「お兄ちゃん、私、怖い‥」

睦月「酷いな、パパとママに相談してみような」

   かがみと睦月は走り去る。


○八田野家・リビング(夜)

   かがみと睦月は夕食時に、八田野冬馬(32)と、八田野ひめ子(30)に菜々の出来事を話す。

ひめ子「まあ…怖いわね。暮川さんの家はね、この前PTAの総会で話題に挙がってたわ。なんでも…奥様が離婚した後、若い男性と同居してるとか‥」

かがみ「警察に言わないの?」

八田野「先に児童相談所だろうね。かがみ、鏡を見せなさい。鏡が記憶している筈だ」

   かがみはペンダントを八田野に見せる。

八田野「これは酷いな…子供を殴るとは…」

かがみ「なんとかならないの?ねぇパパ…」

八田野「そうだな…パパに出来ることをしようか。ママ、かがみの学年の生徒名簿表を持ってるかい?」

ひめ子「はい、パパ」

   八田野は名簿表にある、菜々の名前を右人差し指でなぞると、ボッと現れた幻の焔刀を振るい天地に下ろす。

八田野「応急処置だが、神が御答えを出すだろう。この子の命は大丈夫だ」

かがみ「パパの見えないお仕事だね」

八田野「そうだ、かがみ。この一件は悪霊が関係している。放っておけば弱い者が被害に遭うだろう」

   八田野は、ニッコリとして、かがみの頭を撫で、鏡のペンダントをかける。

   かがみは嬉しそうに微笑む。


○元気小学校・教室(朝)

   2-3。

   かがみは自分の席から、前方の菜々の席を見る。

かがみ「菜々ちゃん、今日は来てないな‥大丈夫かな?」

   福山由紀美(29)が前の戸から入ってくる。

生徒A「キリツ!キョウツケ!レイ!」

由紀美「今日は残念なお話をみんなにしなければいけません」

   教室に生徒たちのざわめきが起こる。

由紀美「この組の担任・江路村先生は理由があって学校を辞められますので、今日から副担任の私が担任になります」

   かがみはハッとする。

かがみ「鏡を見てママが学校に言ったのかな?」


○暮川家・前・団地内廊下(夕)

   かがみはドアの前に立ちブザーを押す。

   誰かが階段を上がって来る音を聞き、側の非常階段影にとっさに隠れる。

空元「はい‥チッ誰も居ないじゃねぇか」

由紀美「居るわよ、早く終って来ちゃった」

空元「ンだよ、オマエか‥ラインくらい打てよ」

由紀美「邪魔な菜々の母親・暮川悦美は居ないし、しつこい江路村もセクハラの苦情を出して辞めさせたわ…」

   空元と由紀美は抱き合いキスを交わす。

かがみ「うそ‥」

   かがみが立った瞬間、鏡が光る。

空元「まぶしっ‥!」

由紀美「あ‥あなた!八田野さん!?」

   かがみは舌を出し苦い顔をする。

空元「ちょっと来いよ!」

   空元は乱暴にかがみの腕を掴む。

かがみ「いやっ!離して!離して!」


○暮川家・団地前通学路(夕)

   帰宅途中の睦月は、かがみを引っ張る空元の姿を見る。

睦月「あれ?かがみじゃん!ん?あの男!かがみのフクタンまで居る…なんだ?」

   睦月は、スマホを取り出す。

睦月「ママ?…パパ居る?かがみが大変だよー!GPS伝ってここへ来てよ!」

   バサッ。

   睦月の横で暮川悦美(30)が買い物袋を落とし、両手で口を押さえて居る。

睦月「オバサン、あの家知ってるの?」

   団地の暮川家のドア前が激しく光る。

睦月・悦美「うわっ!!!」


○暮川家・前・団地内廊下(夕)

   かがみのペンダント鏡が激しく光り浮いている。

空元・由紀美「眩しい!!!何も見えない!!!」

   かがみはペンダントを持つと八咫鏡は更に激しく光る。

空元「こンのやろう!」

   空元は掴んでいるかがみの腕を引き寄せ、ゲンコツで殴る。

かがみ「キャア!!!」

   空元は更にかがみを殴ろうとする。

   かがみは空元を睨み据える。

空元「うっ…」

   数人の足音が廊下に響く。

村田の声「そこまでだ!」

   かがみは空元の手を振り払い走り、警察官部の村田靖(60)の後ろに隠れる。

空元「くっそぉ〜」

   空元は玄関から果物ナイフを取り、由紀美を抱えて人質に取る。

由紀美「ギャア!助けて!!」

   菜々がドアから飛び出てきて空元の右足にしがみつく。由紀美は逃げる。

空元「このヤロウ!離せ!」

村田「今だ、突撃!!」

   空元は取り囲まれ、がんじがらめにされナイフは取り上げられる。

警官B(30)「暴行の現行犯で逮捕する」

   菜々と由紀美は警察に救助される。

悦美「菜々!」

菜々「お母さん」

   傍で由紀美が尋問されている。

由紀美「私は教師です!生徒が休んでいたから、寄っただけです」

かがみ「嘘ばっかり!」

   かがみはペンダントを掲げ鏡の映像を壁に映す。

村田「署で話を聞こうかの」

   空元と由紀美は警察に連行される。息を切らした八田野が来る。

八田野「かがみ!無事か!?」

かがみ「パパ!怖かったよぉ!」

八田野「また、暴走して!頭にタンコブができてるじゃ無いか!」

   八田野はかがみを抱き締める。

八田野「さあ、帰ろう」

   かがみのペンダントの鏡が浮かんで、八田野の背後を映すのを見る。

かがみ「パパ!危ない!!」

江路村「八田野!学生時代の借りを返すからねっ!!!」

   江路村がサバイバルナイフを手に襲ってくる。

   八田野はかがみを自分の後ろに隠し、九字を切る。

八田野「天地清浄内外清浄六根清浄っ!ハァッ!!」

   江路村は、2メートル近くふっ飛んで、倒れ、グッタリする。

村田「まさか、刺客が潜んでいたとは…」

   菜々がかがみに抱きつく。

菜々「かがみちゃん、ありがとう!」

悦美「本当に、なんとお礼を言ったら良いか…」

八田野「貴方も悪い。お子さんをお大事に…」

   かがみは鏡に手を添え微笑む。




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