第5話 Vtuberになった理由。


非常にやばい。

ものすごく燃えている。同期が。

これではいかんと四期生集合して、オフコラボをしようではないかという話になっているのだが、当の本人が、申し訳ないと断っている事態。


実際、仲が良いと言えるほど絡めてもいないし、ディスコードなるもので、一度雑談でも挟もうか、なんて話が先週でた。



ので。



お話中である。


『皆さんとお話しできて良かったです〜』


『私も良かったです!』


『……えっと…なんかすんません、巻き込んじゃったみたいになっちまって』


上からアリシア、ルリ、クロト。皆お話が盛り上がってるなか、私は1人黙ってしまっている。そう、コミュ障だ。


『気にしな〜い、気にしな〜い!もっとお話して仲良くなろうよ!』


と、アリシアちゃんが明るく言う。意外と中の人…というかアリシアちゃん自身は大人っぽいんだなぁ…。


『そうだ、Vtuberになった理由、皆で話さない?』


これは名案!と言わんばかりの明るい声。次々と皆も賛同するので流れで賛同したが、私Vtuber始めた理由金だな…???


『まず言い出しっぺで、アリシアからね!私は〜、一期生の未坂めい(ひつじざか めい)先輩に憧れたの〜!!』


「素敵ですね、ゲームがお得意なんですか?」


『……ん〜、得意ではないかな…見る専?せつなちゃんは〜?』


あっやらかしたかこれ、

どうしよう、とりあえず優姉に勧められたでいいか…


「二期生の、春風先輩に誘われて…ですかね。クロトさんは?」


よし、さっさと終わらせたぜ


『俺は…スカウト…っすね。その後男子のメンバーの方々の配信を見てやろうとおもって…』


小さい声が静かに響く。そういえば、男子メンツは居たけど女の子扱いされてるし…それに…


『あれ、でも三期生のアクア・サフィー先輩って、"歌わない宝石組"とかって言われてますよね。配信してるイメージなかったな。』


「私もそれ、聞いたことあります。」


『…あ〜。企画のMCとか、事務所の公式の方でよく見てました。』


『…そ〜なんだ〜、そう言えば、二期生の狗塚あやは先輩と一緒に幼馴染組とかって言われてたな〜、』


『……じ、じゃあ今度は私が言いますね!』



不自然な会話の流れ。まるで彼…いや、彼らの話題をわざと避けるようなそんな微妙な空気が流れる。


カラフルライブのファン・タレント、全てにおいて共通の認識となっているのが、"狗塚とアクアは運営の犬"ということ。いい意味で働いていると評価する者もいれば、あまりよくないように思う人もいるらしい。クロトのように炎上している人を手助けしたら、その人のファンからは好感に、逆に、謹慎などの厳しいことをされたらファンは少なからず良い、とは思わないよう。四季組の中でも、同期だけど仲良くしてもいいのかわからないといった声が上がるほど。となると、同期ですらない私達は余計に気まずい訳で。


しかもルリは歌がすごく好きな子だから、きっと歌わない宝石組と言われている彼に、少なからず良いイメージは抱いていないのだろう。アクアほどでもないが、あやは先輩もゲームの活動はあまり多く無いようだし、ファンからも、タレントからも特別扱いだ、なんて言われてもいるとか。



ぶっちゃけそんなこと運営が単体でやるべきことだろうに、なんて思う。実際、マネージャーにそれとなく聞いた時もマネージャーも同意していた。ただ、とある一件があって以来、人員が必要になっているらしいので下手に首は切れないらしい。



一度2人がクロトの火消しに動いてくれたこともあって、若干下火になりつつあり、そのおかげで、オフコラボという提案やこのようにお話をする機会を作ることができたから、2人について聞いてお話してみたいと、オフでの様子や2人の見た目を聞くために個人的に動いたが、マネージャーも、優姉も、四季組の皆も皆、



『最も【2次元】に近く、最も【幻想的】な見た目をしている』



と、口を揃えていうものだから諦めてしまった。




なんてことを考えている場合ではなかった、ちゃんと聞かないと、ルリちゃんの理由。



『私がVtuberになったのは、歌をもっと上手くするためです。私は、とある歌い手さんの歌をよく聞いていて…もう今はアカウントも消しちゃってるから、少ししか残ってない切り抜きしか見れないんですけどね…』



『へ〜!素敵だね〜!』


『目標なんっすか?』


『うん!あの人みたいに、楽しく__』




皆、目指したい人とか物とか、あるんだなぁ…なんかお金目的で入った私がバカみた〜い。




…バカみたいじゃないか。




『___さんみたいに!』






あ、聞き逃しちゃった。折角の同期の話だったのになぁ〜



『…歌といえば、なんですけど、せつなさんも歌、歌われますよね。…四期生の歌姫、とか、色々言われてましたし…』



「……運営からの方針だったので、歌っただけですよ。私からしたらルリさんの方が数万倍上手く感じます。」



へぇ、そんな評価だったんだ。コメント欄できゃーきゃー言ってる人なら見たけど、興味なかったなぁ。




【べんきょうも、うんどうも、うたも、こんがくも、ぜんぶ、私よりとくいで、うらやましいな】




【…ごめんね、私そんな大人じゃなかったみたい。】




……そうだよ、そう。


ちゃんと、歌を好きだと思って歌っているのが伝わる貴女と、歌に何も感情を抱かない、憎しんですらいる私。




「ルリさんの方が、歌姫に相応しいと思いますよ。」

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人生崖っぷちな私、Vtuberやってみる。 ぬぱー!!! @nupapa

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