カーストトップのギャルがなぜか毎朝俺の席に座っている 〜コミュ力最強の彼女が俺の前でだけはむすっとしてる理由〜

石田灯葉

カーストトップのギャルがなぜか毎朝俺の席に座っている 〜コミュ力最強の彼女が俺の前でだけはむすっとしてる理由〜

 学園祭以降、朝が憂鬱だ。


 そりゃ、朝が憂鬱な人なんて掃いて捨てるほどいるだろう。統計を取ったことはないが、きっと、溢れんばかりの希望を胸に1日を始めている人の方が圧倒的に少数派だ。


 おれはおれで、連日連夜、夜中まで電子書籍でラノベやら漫画やらを読んでいるから朝が辛いのは当然なのだが、今しているのはそういう話じゃない。


 問題は。


 毎朝、登校するとおれの席に、学年のカーストトップに所属するギャル・米村よねむら朱莉あかりがむすっとした顔で座っていることだ。





 ここまで聞いた人はみんなこう思うだろう。


「その米村朱莉って人は多分、お前の後ろの席のやつと仲が良いんだろ? 席くらい使わせてやれよ、ちょっとくらい」


 おれも始めはそう思っていた。


 実際、米村さんはおれの後ろの席の高瀬たかせ美春みはるとは仲がいいみたいだし、米村さんがおれの席に座っている理由もそれだろう。


 おれだって、

「おはよう、ちょっと荷物だけ置かせてもらうね」

「ごめんごめん、すぐどくから!」

 みたいなやりとりが出来るなら、普通は交わることもない彼女と合法的に(?)話せるのだからむしろ大歓迎なんだけど、そうならないから問題なのだ。


 などと、くどくどと説明しているうちに学校に到着したので、どんなやりとりがされるか、ご覧いただこう。


 いや、出来るなら今日こそ彼女の気が変わって自分の席に座ってますように……と思って教室の後ろの扉をくぐって自分の席を目視する。


 ……結果、案の定、その染めてるとは思えないつややかなショートの金髪の美少女——米村さんが僕の席に座っている。


「えーっと……おはよう、米村さん」


「……ども」


 そのアーモンドの目はじろっとおれを睨む様に見上げる。


「あー、毎朝同じ指摘するのもなんなんだけど……そこ、おれの席」


「知ってる」


「だよね……」


 おれはここで学生カバンを机の横のフックに引っ掛けてトイレにでも退散しようとする。


 ……だが、しかし。


「ちょっと待って、大槻おおつき


「はい……」


 こうやっていつも呼び止められるのだ。なんでだよ?


 彼女は相変わらずおれを睨んでいる。


 顔が整っている人のこういう顔って数割増しで鋭くて怖いんだよな……。


「なんでしょう……?」


「……いや、なんでもない」


「はあ……」


「……てか、ごめん、席、間違えた」


 米村さんはガタッと席を立って、自分の席に戻っていく。


 間違えたのかよ。さっき「(大槻おれの席だって)知ってる」って言ってたじゃんか。


「……あのさ、高瀬たかせさん」


「おう、なんだい?」


 後ろの席の女子——高瀬たかせ美春みはるに話しかけると、黒髪セミロングの彼女は気前良く応じてくれる。なんだかニヤニヤしている気がするけど、いつもこういう表情をしてるから彼女のデフォルトなのかもしれない。


「高瀬さんって、米村さんと1年の時同じクラスだったよね?」


「うん、それどころか中学からの親友だけど。それが?」


「米村さんって中学の時からずっとこの席に座ってたとかあるの?」


「いや、まさか、そんなわけ……………いや、どうだったかな? 覚えてないや」


「そのは何? ていうか今『そんなわけない』って言いかけてなかった?」


「いやいやー、他人の席なんて覚えてないってー。そんなに気になるなら朱莉に直接聞いてみれば?」


「いや、だって……」


 おれはそう言われてつい米村さんの席の方を見て、


「うわ」


 すぐに視線を戻す。


 …………米村さんにめちゃくちゃ睨まれてる!!


「どした?」


「いやいや、米村さんに聞くとか無理でしょ。なんか知らないけど、めちゃくちゃ嫌われてるし」


「あー……まあ、あんな顔してたらそう思われちゃうよねー」


 高瀬さんは米村さんの席を見ながら、呆れたように苦笑している。


「ていうか、大槻くんはなんで座らないの?」


「いや、なんていうか……」


 ……言えない。


 このタイミングで座ると、座面に米村さんの温もりが残っていて、なんともいえない罪悪感にさいなまれるからだなんて。


「でもそれ、大槻くん悪くなくない? 意識する方が気持ち悪いよ?」


「おれ、何も言ってないけど!?」


「……ごめん、おっきい声出すならちょっと一旦黒板の方向いてもらってもいい? 私、朱莉に嫌われたくないし」


「あ、うん……」


 いや、それこそおれ悪くないよね? ていうかおれと話すだけで嫌われるんだ? ウィルスかなんかだと思われてるのかなー……。





 そもそも、米村さんは元々あんなむすーっとした態度を取る人ではない。


 おうおう、お前ごときがカーストトップの彼女に対して、随分知った風な口をきくじゃないか。と言われてしまうかもしれないが、実際におれに対してもそうだったのだ。


 学園祭前は、売店の帰りに渡り廊下ですれ違ったりすると、

「おー、大槻! そのアイス美味しい? あたしも買おうか迷ってたんだよねー!」

 みたいなノリで話しかけてくれたこともある。


 その眩しい笑顔と良い意味での馴れ馴れしさにときめいたのはここだけの秘密だ。チョロいんだよなあ、男子高校生。


 とにかく、彼女は普段は、絵に描いたような(絵は絵でもアニメとか漫画に描いたような)『日陰者にも優しいコミュ力最強ギャル』そのものなのである。


 にも関わらず、学園祭以来、日陰者にも優しい彼女のその優しさの対象からおれは外れてしまったらしい。


 ……いや、ここまできてこんなことを言うのもなんだけど、実は、心当たりがないわけではない。


 というか、あれが理由でなければ、なんだというのだ。



* * *


「あ、それ、『せつおま』のセリフでしょ」


 その不用意な一言が彼女を凍り付かせた。


 学園祭が盛況のまま終わって、黒板にクラス全員が一言ずつ寄せ書きをして、それをバックに写真を撮ることになった時のことだ。


 みんなは『2年6組最高!』とか『楽しかった!』とかベタなことを書いていたのだが、米村さんはそこに、


『何度だってサイカイしよう!』


 と書いていた。


 それは、ごくごくマイナーなライトノベル『せっかく家から2時間かかる高校に行ったのに、どうして元カノのお前がここにいるんだよ!?』で、ヒロインのキャラクターが学園祭の終わりの寄せ書きに書いた言葉と完全一致していた。


 『せっかく家から2時間かかる高校に行ったのに、どうして元カノのお前がここにいるんだよ!?』の通称は『せつおま』。

 通称というか、マイナー過ぎて通称にはならなかったので、あくまでも作者が提唱していた略称ということになるけど。


 タイトル通り、『手痛い失恋をした主人公が誰にも知られない高校で人間関係をリセットして高校デビューしようと思っていたら、その元凶である元カノが同じことを考えて同じ高校に入ってきていた』というところから展開する物語だ。


 学園祭の後、ヒロイン(元カノ)が色々あったけど主人公と同じ高校に入れてよかったと思っていることを暗に示すためにこう書いている。


 マイナーではあるものの、『せつおま』は、おれも心に残っている作品だったので、なんだか知っている人がいるのが嬉しくなってしまい、ほぼ反射的にそう言ってしまっただけなのだが。


 ……米村さんはまず固まり、そのあと一瞬顔面蒼白になり、そして最後には顔を真っ赤にしていた。


 おれ何かやっちゃいましたか?とばかりにほけーっとその百面相を見ていたのだが、数秒後に気付く。おれはまじで何かやっちゃっていた。


 そりゃそうだ。


 普段の彼女のキャラからしたら、そんなマイナーな小説——しかも、長文タイトル系のやつを読んでいると知られていいはずがない。


 知られたくなかったことを、わざわざひけらかして指摘した形になってしまった。


「……え、なに? そういうのがあるの? あー、じゃあ、変えとこっかなーあははー……」


 彼女はなんとかそれだけを言うと、こすこすとその言葉を消して、『来年もこのクラスがいい!』だなんて無難な言葉を上書きした。


* * *


 ……ああ、本当に馬鹿なことをした。


 そりゃ、そもそも、米村さんだってバレたくないならそんなセリフを引用するなよ、とは思うけど。でもきっと、みんなにバレずに、自分にだけ分かる言葉としてそこに忍ばせたかったんだ。


 そういうオタク心理だって、ちょっと考えれば分かったはずなのに……。


 恥ずかしい思いをさせた上に、彼女が本当に書きたかった言葉を消させてしまうだなんて。


 彼女からしたら、恥ずかしいし憎いしで、おれの顔も見たくないだろう。


 だとして、今さら謝ることは彼女につけた傷口に塩を塗ることにしかならない。


 何度後悔しても、何度反省しても。


 毎日、朝はやってくる。





 火曜日の朝。

「おはよう、米村さん。えっと、そこ……」


「どうも」


 相変わらずおれを睨む端正な瞳。


「あのさ。大槻」


「ん?」


「大槻って、ラインとか」


「ライン?」


「……なんでもない。席間違えた。ごめん」


 高瀬さんが、


「おー、今日は結構言ったね?」


 と、おれに同意を求めてきたけど、何の話だ。




 水曜日の朝。


「おはよう、米村さん」


「ども」


「あ、そのままでいいよ。おれ予鈴までどっかで本でも読んでるから」


 今日はおれも対策を変えてきたのだ。ていうかもっと早くこうすれば良かった。


 と、立ち去ろうとすると。


「え、ちょっと、待って」


「ん?」


「読むって。何の、本」


「え? あ、いや……」


 おれの読んでる本は残念ながらこんな教室のど真ん中で高らかに口にしやすいものではないんだけど……。


「こ、今度教えるわ」


 苦し紛れにくるはずのない未来今度に問題を先延ばしすると、


「こんど? ほんと?」


 心なしか表情を晴れさせて韻を踏む米村さん。


 ……かと思ったら、もうしかめ面だ。出来もしない約束をしようとしたのがバレたか?


「ああ、うん……機会があれば……」


「じゃあさ、あのさ、あの」


 そこまで言って米村さんは何かを吐くのを我慢するみたいに自分の口をおさえる。


「……うん。こんど。あ、席いいよ。ごめん」


 そういって米村さんはまた席に帰っていった。


「逆に挙動不審だよね、ごめんね」


 なぜか高瀬さんに謝られて、「いや別に……」と返す。何が『逆に』なんだ。





 ちなみに、昼休み、中庭を横切る渡り廊下を歩いていると。


「中庭で飲むカルピスやばい! あ、亜紀あきちゃんのアクアブルガリアもいいねー!」


「もう、全然何言ってるか分かんないよ、朱莉ー」


「えー! 分かるでしょ!」


 的なじゃれあいを見せていた。


 うーん、あれがいつもの米村さんだよなあ……。





 そして、木曜日の朝がやってくる。


 昨日は読書がはかどってしまって、かなりギリギリの登校となったわけだが、


「おはよう、米村さん……」


 それ以外にも一ついつもと違うことがあった。


「あれ、今日は高瀬さんはいないの?」


 おれが指摘すると、ギクっと肩を跳ねさせる米村さん。


「うっ……! ま、待ってんの」


「そうなんだ。えーっと……。高瀬さんの席で待ってれば?」


「……迷惑?」


 上目遣いで聞いてくる米村さん。なんだこれ、新しいパターンだ。


「いや、別にいいけど……」


 この状況で「迷惑だよ、どいて」なんて言えるやつがいるんだろうか。


「あのさ、大槻って、」


 と、彼女が何かを言いかけたその時。


「はーい、ホームルーム始めます」


 担任が入ってきた。


 あれ、高瀬さんは遅刻か?と思ったら、後ろのドアから呆れ笑いを浮かべて入ってきた。


「どんまい、朱莉」


「美春、ずっと見てたの……!?」


「はいはい、席に戻ってー」


 そして、担任が宣言する。


「今日の6時間目のLロングHホームRルームで、席替えをします」





 かくして、おれと米村さんの悩みが同時に解消出来るであろうイベントが行われた。


 くじ引きの結果、偶然にもおれは米村さんが今まで座っていた窓際の席に座ることになり、米村さんはなんと幸運なことに、高瀬さんの前の席になったみたいだ。


 これで丸くおさまったなあ、と思いながら、2人の席の方を何とはなしに見ていると、何かを探すみたいにキョロキョロしている米村さんと目があって。


 ……そして、キッと睨まれてしまう。


 勝手に見ててすみません……と、おれは黒板の方に視線を向ける。


「もう、朱莉ってば、私と席近くになったことをもっと喜べよーう」


 高瀬さんの声が聴こえた気がした。喜んでないのか?


「それじゃあ、このまま帰りのホームルームやるぞー」


 たかが席替え、されど席替え。


 まだ熱気のおさまらない教室の中で、担任はつつがなくホームルームを進行する。


 そして最後に。


「大槻はこの後職員室に来てくれ。渡すものがあるから」







 呼び出しの理由はなんてことはない。PTAをやっているおれの親に渡して欲しいプリントがあるからとのことだった。


 職員室から教室に戻ると。


 ……放課後にもかかわらず、おれの新しい席に米村さんが座っていた。


「あの、そこ、今日からはおれの席なんだけど……」


「……知ってる」


「知ってるんだ……まあ、そりゃそうか」


 なるほど、米村さんはよほどこの窓際の席が気に入ってたらしい。


 だから席替えで高瀬さんと近くの席でも喜ばなかったのか。合点がいった。


「まあ、おれはもう帰るから使ってもらって構わないけど……。それじゃ」


「待って」


「!?」


 ぐいっと引っ張られてそちらを見ると、おれの手首を掴んだ米村さんはこちらを見上げている。


 引き止められたことよりも、急なスキンシップに心臓を跳ねさせているおれに、彼女は言う。





「……一緒に帰る」





「は?」


 あまりにも突飛な提案に顔をしかめる。聞き間違いか?


「大槻と一緒に帰りたい。……だめ?」


 聞き間違いじゃなかった。


「だめじゃないけど、なんで……?」


「…………話したいから」


「え?」


 米村さんは立ち上がる。


「大槻と話したいから!」


「はい?」


 すると、彼女のびっくりするほど整った顔が、文字通り、おれの目と鼻の先に。


「だって、初めて見つけたんだよ、『せつおま』のこと知ってる人! あんなに神な作品なのに、全然誰も読んでなくて! そもそもラノベ読んでる人が少ないからオススメも出来ないし! 学園祭のあの日からずーっと大槻と話したかったの! たまたま美春の前の席だったから毎朝待ち伏せしてたんだけど、全然上手く話せなくて……」


 ……ん?


 ああ。


 え!?


「いや、え、そういうこと!?」


 おれは頓狂とんきょうな声をあげる。


「おれはあれでめちゃくちゃ嫌われてるんだと思ってたんだけど……。いや、だとしてなんで米村さんほどの人がおれなんかと上手く話せないんだよ……?」


「おれなんか、とか言わないで! あたし、大槻と話したいって思ってたんだから!」


「ああ、うん、それはありがとうなんだけど……」


「ああ、理由だよね……! あたしね、中学時代オタバレしてグループで変に浮いちゃったことあって。でも、大槻とまともに話したら絶対にせきを切ったように話しちゃうし……。とはいえ、接触しないと何も始まらないから頑張ってたけど、もう話したいことありすぎて、もうちょっと大槻と話したら素が出ちゃいそうだから……!」


「ああ、だからむすっとしてたのか……」


 つまり彼女はオタクであることを隠してギャルをやっており、だけど話が通じる相手が目の前にいたらきっとオタクがまたバレてしまうだろう、と。


 でも、話したいとは思ってくれていて、その間でせめぎ合った結果があの不機嫌そうな振る舞い……。



 …………この人、思ったより不器用だな?



 などと思っていると、


「クラスのグループラインにも入ってないから連絡も出来ないし」


 と口をとがらせる。


「ああ。おれ、ラインやってないんだ」


「どうして?」


「スマホで本とかweb小説とか読むのに、通知が来たら鬱陶しいから」


「うわあー……!」


 引かれるかと思ったらなぜか目を輝かせる米村さん。


「なんか、超シンパシーなんだけど……! ほんとはあたしもそうしたいわー……。集中モードにして通知切ってても結局気になっちゃって自分から見ちゃうし……!」


 彼女のような人には、友達とのコミュニケーションの優先順位は高いんだろう。それは決して間違いじゃない。


「でも、Gmailとかはあるよ。連絡先くらい聞いてくれたら教えるのに」


「だから! 『連絡先教えてくれない?』なんて長文話したらそのままオタク語り始まっちゃうでしょ!?」


「始まっちゃうんだ」


 うーん、それはおれには分からない。長文か?


「でもじゃあ、高瀬さんとかを介して聞いてくれたら良かったんじゃないの?」


「美春に先に知られたくないじゃん!」


「なんで?」


「んなっ……な、なんでも!」


 米村さんは頬を赤らめる。


 いや、まあ、高瀬さんに『朱莉が大槻の連絡先知りたいらしいから教えても良い?』とか聞かれたら、ちょっとドギマギしてどうなってたか分からないからいいけど……。


「それにさ、Gmailだとしても、あたしと交換しちゃってあたしがめっちゃメール送ったら、大槻せっかくラインやってないのに、気になっちゃって大槻の読書を邪魔することになるじゃん」


「めっちゃ送ってくる予定なのか」


「た、たとえばだよ! 大槻に邪魔に思われたくないもん!」


「優しいんだな、米村さん」


「や、優しいとかじゃなくて! そういうの、分かるだけ!」


 それが優しいって話なんだけど。まあいいけど。


 おれがそんなことを考えている間に、米村さんは小さく咳払いをして、尋ねてくる。


「あのさ……交換日記は?」


「交換日記い?」


「だめ?」


「だめじゃないけど……」


 っていうか、ぶっちゃけ米村さんに「だめ?」って聞かれたらおれ全部OKしちゃいそうだわ。こんな顔で聞かれて断れる人とかいるんだろうか。


「やった! じゃ、明日までに作ってくる!」


 そして、こんな嬉しそうな笑顔を見せられて心が動かない人がいるんだろうか。


 ……いや、とはいえ。


「でも、受け渡しとか見られたらかなり変な感じになるんじゃないか……?」


 オタバレがどうこうっていうのもそうだし、今交換日記をやっている男女がいたらそれこそいろんな意味で好奇の目に晒されてしまう。


「ううん、それは大丈夫。あたしに名案があるから」


「名案?」


 米村さんは頷きながら屈託くったくない笑みを見せる。


 その表情は、どこか、いつもクラスのみんなに振り撒いている笑顔よりも素に近いものに見えて、それがなんだか分不相応にも嬉しく感じてしまった。


「あたしが毎朝間違えて大槻の席に座ればいいんだよ! これからも!」


 そんな経緯で、どうやら、明日からも。


 カーストトップのギャルがなぜか毎朝俺の席に座っているらしい。

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