第4話 何よあいつ
「みんなでカラオケいかねー?」
大輝がクラス全体に呼びかける感じで話す。
今日は入学式でLHRが終わったら下校だ。
「いいねー」「いくいく」
クラスの半数くらいが大輝のところに集まって行く流れになっている。
大輝のこういう行動力はすごいと思う。
「凛、私たちも行こうよー」
優希に声をかけられて行こうかなと思っていると近くでクラスメイトと話している黒木さんが目に入った。
「ねえねえ黒木さんも一緒にどう?」
「ごめんなさい、私この後用事あって…」
「ええー黒木さん来ねーの?」「行こうぜ〜」
「ごめんね、じゃあそういうことだから」
その容姿から周りには人が集まっていた。
黒木さんはちょっと困った顔をしながら断って教室から足早に出て行った。
それから少しして携帯が通知で震えた。
画面を軽く覗いてみる。
「ごめん、僕も用事あるから今日はやめとくよ」
「え、ちょっと凛?」
「ごめん、じゃあ先に帰るよ大輝に伝えておいて」
「そんな大事な予定なの?またカードゲーム?大輝も辞めたのにまだ続けてるの?」
「はは、そんな感じだよ。じゃまた明日!」
「あ、待ってよ!」
僕は教室を出て急いだ。
「何よあいつ…あんなに楽しそうに…」
「黒木さーん!」
家にデッキを取りに戻ってから黒木書店に顔を出す。
「いらっしゃい、岬君。」
黒木さんが出迎えてくれる。いつものエプロン姿だった。
「ごめんなさい呼び出して。カラオケ行きたかったりしなかった?」
「大丈夫だよ。あの人数だと疲れちゃうだろうし」
さっきの着信は今日書店で対戦しないかと言うお誘いのメールだった。
「じゃ、始めようか。」
そう言いながらいつも通り二人の決闘を始める。
「今日一緒にいた二人は友達?」
対戦中に黒木さんが質問してきた。僕と黒木さんは対戦中に色々雑談する。それは読書の話だったりカードの話だったり美味しいご飯屋の話だったり色々だ。
「そうだね、優希と大輝。二人とは幼馴染でなんだ」
「結構意外だったわ。岬君ってその…」
黒木さんが言い淀んだけど言いたいことは察せられる。
「あはは…よく言われるよ、二人みたいになんというか陽って感じしないのに仲良いんだって…あ、このカードを使います」
「けど幼馴染なら気心知れてるから過ごしやすいって感じなんでしょうね」
「そうだね、長い付き合いになるし。ただまあ二人はやっぱ眩しいかなぁ」
「眩しい?」
「いや、なんでも無いよ続けよ」
ちょっと気持ち的に良く無い方向に話が進みそうだから話を切り上げる
「えぇ。じゃあそのカードは通りません」
そうやってカードで日が暮れるまで遊んだ。
「そうだ、これは私からの入学祝いです。」
「入学祝い?」
帰り際、そう言いながら黒木さんは一枚のカードを差し出してきた。
そのカードは…
「紅の竜剣士!?良いの?」
僕が欲しがっていたとても高いカードだった。驚きでカードを持った手が震えている。
「偶然手に入れたんですけどね、私は使わないのでせっかくなのでプレゼントしちゃいます」
「ありがとう!本当に大切にするよ」
「ええ、私だと思って大切にしてください。また明日、学校で」
「うん、またね、本当にありがとう」
上機嫌に帰路に着く。『好きな人』から貰えてカードを眺めながら歩く道はとても短く感じられた。
二人だけの決闘だったのに @ururu17
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