かつてはドラマのような理想の教師を目指しながらも、現実に挫折した27歳の高校教師・遊佐二月は仕事として生徒に接するようになっていた。月給を生徒数で割った一人8000円。それが生徒のために働く彼のボーダーライン。ドライな高校教師が校内トラブルを解決していく学園ドラマです。
2年2組の担任の遊佐には、さまざまな負担がのしかかる。不良生徒を監視したり、不登校の生徒を訪問したり、女生徒からの誘惑をかわしたり、生徒のために頭を悩ます毎日だ。
普段は仕事として割り切っている遊佐ですが、ときたま熱血教師の顔が出てしまうのがいいんですよ。トラブルが起きれば知人の探偵に情報を集めてもらい解決に立ち上がる。必ずしも綺麗に収まるわけではないけれど、問題を根本から断っていくのが痛快です。
本人は決して良い教師ではないと自嘲しますが、問題が起きた時に率先して行動できる教師がこの世の中にどれだけいるだろうか。いろいろと気難しい年頃の高校生にとっては、ほどほどの距離感で見守ってくれたほうが有り難かったりしますよね。
さまざまな価値観が複雑化する現代では、遊佐のような先生が理想の教師なのかもしれません。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
高校教師を主人公にした現代ドラマです。
教師モノというと、情熱をもって生徒たちに向き合うドラマなどが思い浮かびますが、
本作の主人公「二月先生」は、クールで合理的な高校教師。
生徒一人に対し、一ヶ月8,000円分の仕事しかしないぞ、と決めています。
でも読み進めるうち、彼なりの正義感や平等精神があり、一本筋が通っていることに気が付きます。
働きすぎない、自らブラックにはならない先生が、高校生に振りかかる色々な問題をあざやかに解決していくストーリー。
結構スカッとする展開が多く、合理的な考え方が気持ち良いです。
でも実は、胸の内には熱いものを隠しているんじゃないかと思わせる二月先生。
きっと彼のように適度な距離感で、生徒を一人の人間として尊重してくれる先生がいたら、人気者になるでしょう。
新感覚の教師モノ、ぜひ読んでみてください。