プロローグⅡ•揺り籠のアーウィン

 いつもの準備、いつもの仕事、いつもの打ち上げ

 今日からしばらくはそう言ったものとは無縁の生活を続けなければならない。王様からの下知

を受け、冒険者組合の有名どころは「ある任務」に駆り出されることとなったのだ。

––––隣国の先王、トワスト陛下の愛孫エリクトの捜索

 今回の依頼はこの国の、いや私たちヒトの命運がかかっている。誰でもいいから、必ず成功させなければならないのだ。私たち、冒険者グループ【パンテオ】は激励しに冒険者組合にやってきた国王近衛兵隊長の言葉を聞きつつ、二度とこの街に、故郷に帰れぬ覚悟を決めた。



 あてもない旅に出てもう何年がたっただろうか。今いる地区はまだ未開拓で、しばらく冒険者組合の支援を受けていない。害獣も多く、武器も装備も、何もかもがボロボロになった。しかし、引き返して終えるわけにはいかなかった。

「無縁者の村、本当にあるのでしょうか?」

パーティで一番体力がなかった魔法使いの少女、ユミズは今や一番の俊足となって森の偵察を続けてくれている。しかし、言葉に若干の苛立ちを覚える。もはや返事をするつもりは無い。言葉を無視して、木々を払い草を薙ぎ倒し、黙々と足を進める。

「ユミズ、何度も説明したけど」

ユミズの声に返事したのはパーティで一番のお調子者だった男、バンディだった。鋼を誇った肉体は余分な物が削ぎ落とされ、締まりに締まった体を革鎧に隠す戦士となって殿を務めてくれる。先頭と最後尾、二人の声は自然と大きく、苛立ちを加速させる。

「二人ともうるさいよ」

後ろでまた声が上がる。ギブソンはパーティで一番小柄だった。大きな本を抱え、その知識は広く浅かった。しかし彼は大きく、大きく成長し、旅の中でも思索をやめなかった彼はその巨体に無数の本を担ぐ、歩く図書館と言える男になった。

 ここまで来れたのは、たった三人。期待と失望の眼差しに耐えきれず辞めていった仲間もまた三人。辞めた誰かの役を兼任する中で、彼らは成長していった。変わらないのは私だけだった。年齢とともに成長し、変わった仲間たちとは違い。私の体は17歳の頃のまま止まっている。

 【不抜の身】

 神官の手引きによって、神様から与えられた私の加護はその肉体まで変質させた。

 私はもう歳を取らない。寿命が、神様が与えてくれた時間が尽きるその時まで私は17の小娘なのだ。寂しくはない、と思う。

 ギブソンを加え、議論の声はますます大きくなった。いい加減、止めに入ろうか考えるが、その前に発見をする。

「あった。道よ」

私の声に3人が声を止めて寄ってくる。そこは人が靴や押し車で踏み荒らした轍の道が続いていた。道はさらに奥に続いていく、反対側は川に出る道とギブソンが判断してくれた。

「本当にあったんだ」

「だから今回の情報は信用しろって言ったろ」

ユミズとバンディの声を手で制する。ここからは道なりだ。もし誰かに見つかり事情説明される前に逃げ出して、自分たちが村に着く頃はもの毛の殻になってるかもしれない。警戒を緩めるわけにはいかなかった。

 だが、幸いにも、大した騒ぎにならずに村に入れた。村といってもしっかりとした木壁に、門扉を持ち、おまけに門番までいた。噂通りの堅牢ぶりで、何かを匿うには十分であった。それもそのはず、この村は獅族に追われるまで大陸で名うての商人だった者の隠れ家なのだ。

「この村が最後にヒトを受け入れたのはもう十数年も前のことです」

 そういう村長、誰かが呼んでいた、の言葉に若干の含みを感じられた。ヒトのイントネーションは種別のそれである。

「よかったわ。私たちが探してるのはヒトじゃない。獅族の子よ」

 その言葉に集まっていた何人かが悲鳴をあげて逃げていった。獅族に喧嘩を打った覚えのあるものだろう。そのうち何人かが奥の、煙を上げる建物に視線を送ったのを三人は見逃さなかった。

「この村に獅族は、いませんよ」

 そういう言葉はやはり含みを持たせたものだった。イライラさせる言い方に私はカッとなって目の前の男の胸ぐらを掴み、持ち上げる。周りの護衛が武器に手を掛けるが、もうこの男の命は私の手の中だ。

「ごめんなさい。私、頭悪いからそういう言葉回しって嫌いなの」

 男は腰からナイフを抜き、自らを持ち上げる腕に突き立て、


 だが刺さらない。


 もはやこの身は「正しい時」に決して傷つかないのだ。本当に加護というものは不思議で、不快だ。

「もう一度言うわ。この数年に村に受け入れたものを出しなさい」

 後ろで3人が自然と戦闘体制に移ったのを感じる。こういった村での騒ぎは中央に報告されることはない。蛮行も時には「正しい」事なのだ。

 未だ腕の中で踠く男を地面に叩きつける。そのまま組み伏せるとバンディが横に立った。その手に斧を煌かせて。

「やめろ!やめてくれ!」

「貴方、強情だから他の人に聞く事にするわ。でもチャンスを上げる」

周囲の悲鳴も、怒号も、私の次の一言で静まり返る。

「貴方の代わりに聞くべき人を教えて」

男が震えて動きを止めた。じっと地面を見た後、視線を、その頭を上げようとすると、凄まじい雑言が響き渡った。


見るな!こっちを見るな!下を見てろ!俺たちを売るな!


 男は怒号と自らの死に怯え震えている。この先は時間の無駄だ。

「バンディ、やって。次は適当に選ぶわ」

「あいよ」

 軽い口調でその斧を持ち上げるバンディの姿が映ったのか男は泣け叫び、とうとうその名を口にした。

「アーウィン!助けてくれ、アーウィン!!!」

 バンディが動きをとめ、こちらを見てくる。私は首を横に振った。それを見て、バンディは斧をしまい、男に話変えようとしゃがみ込む。すると広場の端、煙を上げる家から一人の、いや一匹の獣が出てきた。

「呼んだか」

 その姿は確かにヒトでも、獅族でもなかった。

 歯が剥き出しの頬のない口、甲殻と鱗に覆われた脚、うっすらと毛で覆われた皮膚と、暗く褪せた瞳。異形というに言足らない、不気味な獣がそこにいた。

 私も含め、パーティ全員が息を呑む中、ギブソンが声を漏らした。

「まさか、そんな……ありえない!」

「おい、ギブソン?」

 その声は意外と大きく、バンディが止める間もなく異形、アーウィンに近づいて行く。ギブソンより大きいその巨体をまじまじと見て、ギブソンはまたも声を荒げた。

「使ったんだ、ヒトを、獅族を!成功してしまったんだ!」

 やがてギブソンは大粒の涙をこぼし、地面に臥した。まるで何かに悔いるように、大声をあげて。

「……そうか。お前はこの身が何かわかるのか」

私を含めて、みんなが惚ける中、ギブソンの鳴き声だけが響いていた。



安斎・はじめが目を覚ました時、そこはまさしく坩堝の中であった。

誰も彼も、何もかもが溶け合い、重なっていた。しかし、安斎は浮いていた。他にも自分と同じものがあるが、ゆっくりと溶け合う波に飲まれていく。最後に残ったのは安斎と小さな獣のような姿をしたモノだった。

「「君は/貴方、はいかないの?」」

 声が重なった。自然と向き合い、お互いに視線を混じらせる。安斎は何となく相手が子供のような気がしたので『少年』と己の中で位置付けた。

「ボクはエリクト。貴方は?」

「俺か?俺は安斎……何だっけ?」

記憶が曖昧だ、自分の名前も定かじゃなかった。さっきから何か溢れるような感覚があったが、それが記憶なのだろうか?

「ぼくもエリクトしかわからないんだ。もっと長い名前があったと思ったんだけどな」

 ––––せっかく覚えたのに。獣の少年、エリクトは腕を頭の背後に抱えて拗ねたように言った。その姿に安斎は微笑ましく感じた。

「エリクト、少し歩かないか?お話ししよう」

 しばらくの間、安斎とエリクトは互いの事を、家族のことを話しながら歩いた。

 下は空を歩く二人を捕まえようと高波を立てるが、二人して器用に交わすと次第に静かになっていった。そして次第にお互いのことを思い出していった。そしてその最期も。それを思い出した時、二人は足を止めた。

「あぁ、そうか。死んだんだ、俺」

「そうか。じゃあ、ぼくも死んだんだね」

「怖くないのか?エリクト」

「怖くはないよ。でも母様や父様、お祖父様やみんなが悲しむなぁ」

「そうだな。残されたみんなは悲しむ、だろうな」

 自分にはないモノを思い、安斎は少し揺らいだ。何にもない自分が何故か情けなく、悔しかった。

「ねぇ、ここはどこだと思う?」

「え?」

 エリクトの問いに答えられなかった。確かにここはどこだろう。天国にも地獄にも見えない。広いように見えて、窮屈ですごく狭い。そんな場所だった。

「わからんが、天国ではないようだね」

「ボクわかるよ」

 そう言ってエリクトが安斎の手をにぎる。その手は即座に溶け合って、重なった。もう離れられない。

「ここはフラスコの中。いろんな魂の溶け合う場所なんだって」

「エリクト?」

 エリクトの声は震えている。先ほどは怖くないと言っていたのに。

「外の人が言ってたんだ!何のことを言ってる全然かわからなかった、けど確かに言ってたんだ!大いなる実験だって!いつかみんな一つになるんだって!」

 震えるエリクトから光が溢れ、下に落ちて溶けていく。静かになっていた坩堝の中がまた波を立て始めた。溶けた中身を波立たせ、二人を飲み込もうとしている。

「ボクがボクじゃなくなるのは!いやだよ、安斎!」

 エリクトの声に安斎は思った。どうにかこの子を守れんものか。まだ小さい、しかし自我を持った子供を守れないか。そしてその時、安斎は閃いた。

「よしエリクト。俺がお前を帰してやるよ」



「そして俺はそこから始まったんだ」

「それは貴方の自我の芽生えってことかしら?」

 アーウィンの家、鍛冶場の寝床に三人で座って話を聞く。ギブソンはまだ外で涙を溢し、俯いている。バンディはその護衛として、ついでに鍛冶場を囲んだ村の若手への牽制として外に出ている。

「そうだな。安斎とエリクトが下に落ちて、そして俺が起きた。俺は確かに二人の記憶を持っている。だがそれ以外の記憶が曖昧だ。しかし、何とか逃げ出して来た。それは二人の思い出もあったからな。うろうついて、この村に辿り着き、村人を害さないようにする条件でこの鍛冶場を預かっている」

語るアーウィンの体を見れば、「害さないようにされた」身体の傷が見える。角は切り落とされ、腰から生える翼は捥がれ、痕は焼かれている。爪を落とし、牙も折り、そうしてここでひたすら鍛治をやっていたという。

「どうして直接街に行かなかったの?」

「この身で吠えて、何故襲われないと思う。まず人の言葉を思いださければならなかった。聞き取れはするが声にすることはできなかったんだ」

「この村にいても対して勉強にならないと思うけどね」

横目に村長を見る、が彼は首を下に向けたまま動かないでいた。時たまこちらを睨むように見るだけだ。どうやら相当恨まれたらしい。

「ま、いっか。じゃあアーウィン。私達と来てくれる?」

「わかった。行こう」

 二つ返事で了承してくれた。アーウィンの長話で時間も十分稼げた。もういい頃だろう。

「お前たち!出れると思っているのか!」

 するとうずくまっていた村長が声を荒げてこちらを見た。血走った目を私は冷ややかに返す。もう、この村は終わっているのだから。

「ユミズ!もっどりましたー!」

 元気な声が鍛冶場に響く。暖簾を跳ね除けユミズが帰って来たのだ。その背後、村の中は怒号と悲鳴がひしめき合っている。

「な、何をしたんじゃ!皆は!」

「何って、『脱税者の集落を見つけたから兵士連れて来た』だけだよ」

 その言葉に顔を真っ青に染めて、男は崩れ落ちた。そしてユミズが指を鳴らすと屈強な兵士が二人、暖簾を掻き分け入って男を連行していった。私はようやく自由になった体を伸ばしつつ、随分と時間がかかったユミズに話しかけた。

「結構かかったわね。転移魔法は使わなかったの?」

「うん、待たせてごめんねー。お役人さんが連行するにも逃亡者狩りするにも人と船はいるからって言ってね。でも、ちょっとでも早くしようと一時的に川を逆流させてスイーっとね!」

 ユミズに掛かればその程度は余裕だ。彼女の魔法は時と場所、属性すらも選ばない。アルケミストとは違う、本物の魔法使いだ。

「ところでギブソンは何で泣いてるの?追加の作戦?」

「……そういや何でだろう?アーウィンを見て泣き出したのよねぇ。あ、ユミズ、この人がアーウィン。ついでにエリクトでもあるみたいよ」

「???まぁ、でもその人がエリクトならみんなの旅が終わるね!大手柄じゃん!」

「本当にそう思う?」

 問題はこれからだ。ユミズの転移魔法で王都に一っ飛びとは行かない。まずアーウィンがエリクトである証明の術を探さなくてはならない。

 肉体は完全に獅族を逸脱したものになり、魂が一致しているとしても、アーウィンの言が本当なら色々混ざっているのをどう判断されるかわからない。第一、魂の特定は私達、ヒトが創った魔法だ。一筋縄では行かないだろう。それらを踏まえて一番早い近道は……

「アーウィンを『造った』奴らを探さなくちゃいけないわね」

「ふむ、俺が生まれた場所になら案内できるぞ」

「ありがとう、アーウィン。でも一旦帰って装備を整えましょう。結構ボロボロだからね、私たちも、貴方も」

 そこまで話していたら、外でけたたましい音がした。何事かと外に出るとなんと役人と兵士の何人かが倒れている。立て籠った住人が何か鉄の筒を束ねたようなものを覗かせて何事か叫んでいる。

「えー、何あれ」

「あれは、銃ですかね?」

 破裂音は確かに銃のそれだが、あんなに束ねた物は見た事がない。あの無数の銃口が一斉に火を吹くのだろうか、そうすれば実に厄介だ。

「アーウィンあれ何か知ってる?」

「知ってるも何も俺が作ったものだ。俺の中の安斎の記憶が教えてくれた。あれは一斉に弾が出るのではなく一発一発を素早く打てるものだ。ただ」

「ただ、何?」

「仕組みは知っていても『同じ形の銃弾』というものがいまいち解らなかった。だから火薬と弾をあらかじめ込めたものを準備しなくてはならない。それを俺は2個しか渡していない」

「じゃあ、もう撃てて一度だけってことね」

 ならば私が盾になろう。何度か撃たれたことがあるが、大体は私の加護を穿てない。

 前に出る。よく見れば巨大な銃の後ろに、さっき役人に連れて行かれた男がいた。その顔が嬉々に染まり、体を傾け、私に銃を向ける。彼はもう忘れてしまったのだろうか。目の前で見た神の奇跡を。再びあのけたたましい音がなり、銃弾の雨が私に襲いかかった。

 その時、銃と私の間に割って入った影があった。

「ちょっと!アーウィン!?」

 アーウィンが私の前に立ち、銃弾の全てを受け止めていたのだ。穿たれた無数の穴から血を垂らし、ただ立っている。私は慌てた。この行動は完全に無駄なものだからだ。ゆっくり崩れるアーウィンを尻目に残った役人と兵士が突撃を敢行し、立て篭もった住人と壮絶な撃ち合いをしている。だがそんなこと気にして意はいられない。アーウィンを横に倒し、ユミズに声をかけた。

「あんたに死なれたら困るのよ!ユミズ、調整お願い!」

「あいよー。アーウィンさん、ちょっと身体の魔力をいじるねー」

 ユミズがその杖をアーウィンに突き立てた。ユミズの治療は乱れた魔力の流れを調整し、「正しい」姿に戻すものだ。問答無用で傷も病も治す事ができる。だがそのユミズが渋い顔をした。

「これ、すごい。私が引っ張られる。魂の核が柔らかいのに芯があるの。本当に直して大丈夫?」

「つまり、どうゆうこと?」

こういう時、自分の理解力の低さに腹が立つ。何で私はバカなのか。

「私のやり方だと、『昔の正しい姿』に逆行させて固定しちゃうの。で、そこからまた変質が始まるからそれ以上遡れなくなる。それってアーウィンからエリクトを取り出す時に邪魔になりそうな気がする」

「それは、困る。というかあんた!なんで割って入ったの?私は何とかできたのに!」

 アーウィンは何も答えない。ただ、ゆっくりと私の腕を掴んだ。そこから激痛が走る。思わず声が出てた。その声にユミズは目を丸くして驚いた。

「加護、のに、何で……」

 アーウィンの手を離し、それでも痛みが続くこの不快な感覚に倒れそうになる。

 加護破りの攻撃は大陸の一部の人しか知らない御技。それをなぜ。簡単なことだった。

「……なるほど。それはエリクトの記憶ね」

 大陸の先王。獅族の王。そして、ヒトを大陸から追い出した男。その孫が『加護殺し』の技を知らないはずがない。アーウィンは、この男は二人の記憶からありとあらゆる技術をここでぶちまけていたのだ。

「ユミズ、とりあえず治療して。後のことはもう知らないわ」

「わ、わかった!」

 再びアーウィンに杖を突き立てるユミズを後ろに、戦場に目を向ける。立て篭もった建物は魔法で吹き飛ばされ、住人の多くは取り押さえられていた。村長は巨銃の側に、半身になって倒れている。まだ息があるそれを蹴倒しながら巨銃に触れる。

「ッ!」

 ひりつく痛みが走った。この巨銃そのものが『加護殺し』の力を帯びているのだ。

 頭に来た。

 身を横たえる死にかけの男、村長に詰め寄る。

「こんなもの作らせて、あんたたち誰に売る気だったの?!」

「……お前も、死ぬ、ぞ」

 ニタリと笑って、男は生き絶えた。死体を投げ捨て、役人の一人に声をかける。

「この武器は大切に包んで王都に送れ。のちに私が報告書を送る。厳に心掛けろ」

「畏まりました。殿下」

「ユミズ!アーウィンはどうか!」

「でんかー。口調戻ってるよー」

 思わず口に手をやる。やってしまった。仲間にはこの口調はしないと言っていたのに。

「ごめん、もう大丈夫」

「とりあえず、元に戻ったよ。体も、心もね」

「……どういうこと?」

「見ればわかるよ」

 ユミズに案内され、鍛冶場の前に進む。そこには黄金の巨獣とギブソンが向かい合っていた。

「ギブソン、何してるの」

「私ができる調整を、終わりました。もう大丈夫ですよ、『エリクト』」

 その言葉に驚いてアーウィンを改めて見る。雄々しい金の立髪に、竜を思わせる巨大な翼、そしてそびえるような立派な双角。だが先ほどまであった暗い瞳は既になく、子供のような輝く瞳が映えていた。

「ありがとう。ボクを呼んでくれて」

そしてアーウィンは輝く体を翻し、私に手を伸ばした。

「初めまして!ボクはエリクト。エリクト・フォン・アウレリオス・アグニオスだよ!」

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異形道中膝栗毛 地酒九合 @disake09

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