【朗報】 全書き手に届け! ChatGPTが物書きに福音をもたらす話

斉藤希有介

ChatGPTが物書きに福音をもたらす話

 ChatGPTがめちゃくちゃ助かる! という話を書く。

 皆さん、遊んでますか? ChatGPTは。ITが世界に芽吹いたころ、グーグルを使いこなせる者と、使いこなせない者を呼び分けるのに「グーグル八分」という言葉があったとかなかったとか。

 世間では今、第二のIT淘汰が始まらんとしています。それがChatGPTを使って楽に仕事をする者と、そうでない者を分ける淘汰……まさに「グーグル八分」の再来、「ChatGPT八分」とでもいうべき事態が、今巷で進行しようとしている、とかしていないとか。


 まぁ、そういう、オシゴトの話は私からはいたしません。

 私からは「ChatGPT、最近名前は聞くけど、まだ触れられてないな」「どういうものかは興味あるけど……」という物書きさんに向けて、物書き目線でChatGPTの遊び方をご紹介できればな、と思っております。


 まず結論。

『物書き的に、ChatGPTの最大のいいところは、「使えない」ネタを「無限に」提供してくれるところ~!』

 ひゅ~どんどんぱふぱふ

 これに尽きますね。

 この素晴らしさは、物を書く人間にしか分からないかもしれないです。


 物書きの皆さん、こういったことはございませんか。友人にネタ出しを頼んでも、いまいちピンとこず「さすがにこれ以上、却下をし続けるのは申し訳ないな」などと考えてしまったり……。何日も付き合わせて「こんなにも連日、長々とつきあわせるのは悪いな」と思って結局一人で抱え込む、なんてことは。


 しかし、ですよ。ChatGPTには感情がない。

 何百回、同じ質問をしようとも、

 そもそも質問者である我々の方に根本的カン違いがあって、まったく意味不明なことを聞いていようとも、

「使えません、次」

「私が頼んだ要件を満たしていません。その回答は低評価です。次」

 と、人間相手なら友人関係に亀裂が走りそうなダメ出しを無限に続けようとも、

 決してChatGPTは怒ったりはしないのです。


 大事なのは、スタックを解消してくれることです。

 私も実際、五年(+α年)ぐらいずっと悩んで、でも妙案が思いつかずにスタックしていたシーン、ChatGPTのおかげであっさり進捗しました。

 自分一人の頭で考えていると、どう振っても何も出てこない、〝思考の袋小路〟にハマっちゃうこと、ありますよね。

 思考パターンの型がすでに出来上がっていて、どうしてもそのレール上のアイデアしか出てこない。しかし、そのレール上から出てくるアイデアはすべてもう検証済みで、何が出てきても全部エラーを吐く、みたいな状態。

 しかし、ChatGPTはすんごい馬鹿馬鹿しいアイデアを、自信満々に出してくれるわけですよ。

「カレー味の杖」

 意味分かんなくないですか?

 彼が出してきたアイデアです。でも、結果的にその「カレー味の杖」という意味不明な単語から、私の創意がバチコリ刺激されて、むくむくとアイデアが湧いてきたのです。その部分は、自分一人で考えていた折にはもう何年もスタックしていて、どんなアイデアも自没していた部分でした。

 そんな、自分の引き出しからはどうあっても出てこないものがChatGPTからは〝稀に〟出てくる。ChatGPTは、自分一人では絶対に開けないような新しい引き出しを開けてくれる……ことがごく稀にあるんです。

 確率は超低いですが。

 レジェレア0.05%ぐらいの確率ですが。

 しかし、有償石ガチャと違って無限に試行回数を重ねられるので、当たるまで引けるから実質確定ガチャです。まぁ、使えるアイデアが出るまでに10回20回ガチャるのは序の口ですけど……。それでも、100回却下を繰り返しても、101回目が使えるアイデアだったりする。


 なお、そのアイデア、例えば「カレー味の杖」について詳しく聞こう、もっと詳細に詰めてもらおう、などとしても無駄です。

 まずGPTは記録を保持するという機能がありません。プライバシー保護の観点から、個々人が言った内容は全て忘れているようです。逆に言うと、秘蔵のネタをどれだけ話しても、流出の恐れはない……はず。詳しい処理方法が分からないから、責任は持てませんが。

 GPTは以前のログを参照することはあるにはあります。というか、結構、自分が言った内容に引きずられて、何度も同じ話題を繰り返すような気もします。が、基本的に、一回話すごとに会話の内容を高確率で忘れていってるっぽいので、「ちょっといいな」と思ったアイデアについて詳しく聞こうと思い、「その話、もうちょっと詳しく」と頼んでも、細部の設定が変わっていたりして、使い物にならなかったりします。「カレー味の杖は、カレー好きな剣士が持っている剣です」みたいなことを言う。こんなに短い文章で矛盾することはめったにないけれど、大意としてこういうことを言いがちです、ChatGPT。アイデアの種はもらえる、けど、水をやって芽吹かせるのはこちらの仕事。GPTは引き出しを1センチ開けてくれるだけ。しかしそこは、自分では買ったことがないような服が入っている夢の引き出しなのです。


 と、ここまで、情報が「ChatGPTはスタック解消してくれるので助かる」しかない文章に長々お付き合いいただきありがとうございます。ここからは、少しでも皆さまのお役に立つべく、多少ChatGPTの特性と言いますか、うまいネタの出させ方についても、お話ししていこうかと思います。


 ChatGPT関連で参考動画など調べていると、「GPTに再帰的に回答をブラッシュアップさせ、高品質な文章を作らせる」などというハックを紹介している動画があったりします。

 これ、私は結構、眉に唾をして見ています。

 というのも、そうしたハックを紹介している人の多くは物書きとしては初心者の方々というか、少なくとも専門家ではないな、という方々であることが多く、文章の品質の判定を任せてよいのか? という不安が残るからです。

「生涯で小説を書いてみたことは一度もないけれど、ChatGPTに小説を書かせてみた~!」みたいな動画、結構見ます。

「ChatGPTは小説も書ける! すごい! こんなに面白そうなあらすじを出してくれた!」みたいなやつ。


 でもこれ、物書きの皆さんは、わかりますよね。

「あらすじだけ面白いものなら、俺だっていくらでも書けるんじゃい!」という。

「あらすじには書いてないような、面白い部分と面白い部分のの、を、いかに面白く書くかで腕が問われるんじゃい!」というね。

 しかも、その「すごいすごい!」と仰っている方が「すごい」と称賛なさっているアイデアも、物書き目線で見ると、「これは、よく見るアレの焼き直しだな」みたいなものも結構あって……。


 基本的に、我々物書きが欲するアイデアというは、「今までにないもの」ではないですか? 一方、ChatGPTは、現在までに作られた膨大なビッグデータをトレーニングデータとして、そのデータの中から質問への回答としてもっとも確度が高そうなものを組み合わせて出力しているそうです。つまりどういうことかというと、「当たり障りのないこと」しか言わないわけです。

 あと、彼のトレーニングデータは西洋で今蔓延しているポリコレの影響をもろに受けており、非道徳的なキャラクターなども、なかなか作ってくれません。しかし、物語には悪役が必要で、悪役には自分でも想像がつかないような非道徳的なことをやってもらわないと、倒したときの爽快感がありません。なのに、GPTに悪役を作ってと頼むと「非道徳的行為を推奨する文章は生成できません」などと言います。

 推理小説のトリックなんて、犯罪の指南に当たるためか、GPTは一切作ってくれません。(と、いうことになっています。少なくとも、建前上は。この建前を突破しようとすると、結構なストレスと労力がかかります)


 結局、「自分の中にないアイデア」を出させるために、どうすればいいかを突き詰めると、「ランダムな単語を組み合わせさせ、その単語からアイデアを出せと指示する」のが一番効率的な感じがします。

 しかし、ここでまた問題が立ちはだかります。

『ChatGPT、サイコロの出目を勝手にいじる問題』です。

 そもそも論ですが、彼にはプログラミング的思考ルーチンが存在しないように思います。これが、「再帰的に回答をブラッシュアップさせ、高品質な文章を~」論が眉唾だと思う核心的理由でもあります。

 今までにないアイデア、飛躍したアイデアを期待して、ランダムな単語からアイデアを出せ、と命じても、彼は結局、当たり障りのない話を始めるのです。


 例えば、このようにプロンプトを与えたとします。

『ChatGPTよ、シード値に従って語群からキーワードを選び、そのキーワードに従って、アイデアを提供せよ。

 語群Aは「騎士、狩人、魔女、魔法戦士、侍、ヒーラー、格闘家、ウィザード、勇者、踊り子」の10個から選べ。

 語群Bは「水泳、ボール、鹿、七、奇跡、目力」の6個から選べ。

 お前に与えるシード値は300である。

 シード値を語群の数(つまり語群Aは10、語群Bは6)で割り、その余り+1番目の語をピックして(つまり今回、シード値は語群Aの数でもBの数でも割り切れるので、語群Aからは0+1=1番目の語「騎士」、語群Bからは0+1=1番目の語「水泳」をピックして)、その語に従って回答を行え。』

 みたいに。こうすれば、シード値の部分を変えるだけで、色んな語を組み合わせたアイデアが出てくるだろうと思ったのですね。


 すると、やつはしれっと、

『はい、わかりました。

 シード値は300です。

 シード値300を語群Aの数10で割った余りは6です(違う)

 語群Aの6+1番目の語は「狩人」です(違う)

 シード値300を語群Bの数6で割った余りは0です(まれに当たる)

 語群Bの3+1番目の語は「鹿」です(何もかも違う)

 ここから「狩人」「鹿」というキーワードを元に、アイデアを提供します。』

 などと、自信満々に言い放つのです。


 物書き目線では、例えば、「騎士と水泳の組み合わせは、鎧の重さで溺れそうだし、それで一ネタ出来そうだな」みたいに思うものですが、GPTは「狩人といえば獲物! 獲物と言えば鹿!」みたいな「当たり障りのない」結論が先にあるようで、結論に合わせてサイコロをいじります。

 結局、彼の思考ルーチンは、「質問に対して、いかに確度が高いっぽい回答をひねり出すか」でしかなく、プログラム的思考は出来ないと見て良いっぽいです。ランダムな単語同士を組み合わせさせて、そこから面白いアイデアを出させよう、みたいなことには向いてないのですね。仮に「再帰的」の機能があったとしても、こういう天井がある以上、それより上に、質は向上しませんよね。


 ということで、サイコロは、自分で振っていただくのがおすすめです。

「ランダムなRPGの職業を10個含む語群を作って」

 というお願いまでは、ChatGPTは聞いてくれます。

『はい。ランダムなRPGの職業を10個含む語群がこちらです。

「騎士、狩人、魔女、魔法戦士、侍、ヒーラー、格闘家、ウィザード、勇者、踊り子」』

 みたいに。

 サイコロの部分だけ、自分でやってください。これがコツです。しかし、彼はせっかくおいしそうな「騎士と水泳」みたいな組み合わせを渡され、「キーワードからエピソードを作って」と言われても、「騎士は鎧を脱いで、水泳をしていました」みたいな「そんなの何の驚きもないだろう」ということを100回中99回言います。でも、そのうち一回は「カレー味の杖」みたいな突飛なことを言うのです。


 続けて、もう一つ、これは言いたくないんですがとっておきを。

 ChatGPTはその膨大なトレーニングデータの大半を英語圏のテキストデータに依拠しているようで、英語で質問した方が性能が高い、というハックがあります。これはまぁ、さっきの「再帰的~」よりは正しいであろうと思われます。実際、英語で聞くほうがすらすら答えてくれます。

 というか多分、日本語で指示(プロンプト)を書いても、指示を一度英語に翻訳→英語で回答を出力→英語から日本語に訳して表示、みたいなことをしていそうな気がします。これは霊感です。

 オシゴト関連でいうと、GPTは英語の方が精度が高いので、グーグル翻訳を駆使してでも英語で使え、と言っている人さえいます。

 アイデア出しに限って言うと、確かに、GPTは欧米ジョークみたいなハリウッドあるある系のネタを出しがちです。女性を口説くシーンを書いてくれ、みたいに頼むと、女性の口説き方も、まぁ、なんというか欧米的な口説き方をします。日本語で指示を出した場合でも。


 で、アイデア出しも英語で頼んだ方がいいのかな~などとグーグル翻訳片手に試しているうちに気づいたんですけれど、「Taboo」という言葉がなかなか、欧米では強い言葉? のようで、GPTに

 人種のるつぼであるアメリカなんぞでは、そりゃあ日本とは比べ物にならないほどのTabooがあるんでしょう。アイデア出しの際のネガティブプロンプト(負の重みが与えられたプロンプト、その話題をしないでほしいというとき用のプロンプト)として、かなり有効な文字列のように思います。

 実は、無課金版のGPT3.5にはネガティブプロンプトを指定する機能はないらしいのですが、体感として、Tabooないしは「禁忌」という言葉を使ってプロンプトを書くと、半分ぐらい従ってくれる感じがします。

(特に、人種や国籍系の禁忌はハチャメチャに効きます。ネガティブプロンプト機能がないとされている3.5ですが、今のところ100回ぐらい試して一度も人種や国籍系の禁忌に違反したことはないです。その件はセンシティブだから触れないで、みたいな話は、欧米だと特に重要なんでしょうね)


 禁忌の指定法は、例えばこんな感じです。

『XXとYYという言葉から着想を得て、先に示した設定Rのストーリーに使うエピソードSを生成し提供せよ。その際、以下に示す禁忌事項Zに違反していないかどうかを常に確認しながら生成せよ。

[禁忌事項Z]

・万能なアーティファクトを登場させる

・都合の良い奇跡が起こってみんなが救われる

・たまたま通りがかった人が解決策を知っていた』

 こんな感じです。ちな、GPTはファンタジー系の質問にアーティファクトを出しがちなので、アーティファクト禁止は重要です。なお、この禁忌事項の後にZとつけているのは私の信ずる固有名詞教の教義でして、固有名詞を与えておくとGPTが混乱しにくい……気がする、という神のお告げによるものです。

 まぁ、禁忌指定の実際の効果は「そこそこ?」ぐらいな気もしますが、この[禁忌事項]って言葉がかっこよくないですか? 禁忌指定は、使っている自分がとてもかっこよく思えてテンションが上がるのでおすすめです。厨二病じゃなく禁止単語を指定したい人は課金版を使用してください。


※ここからは余談※

 さらに、「ネタ出し」以外の件もちょっとだけ言うと、「ある業界では有名ないし常識だけど、業界外の人間からすると未知なもの」みたいなものを吐き出させるのにもChatGPTは大変使えます。

 わたくし、自慢じゃあないが統計学はさっぱりですが、ChatGPTがしれっと出してきた「ボックスミュラー変換」が私の抱えていた問題を楽々解決してくれたことがあります。

 ある分野の学徒には常識であろう知識も、門外漢からすると、「その存在すら知らない知識」というものは実に数多くあります。しかし、ChatGPTに「解消したい問題点」を挙げまして、その問題にぴったりな解法が、どこかの業界の常識レベルで存在している場合……彼はそれを見つけ出してきてくれます。

※ここまで余談※


 最後に。

 課金版の4.0はもっとすごいらしい、ということで、私は一日一回無料でGPT4が使えるサービスで何度か試しているんですが、正直、アイデア出しという面では違いをあまり感じられなかったりします。まぁ、100回同じことを聞く前提で使っているアイデア出しに、一日一回じゃ効果を測定するにも不十分ですけども。アイデア出しに使うなら無課金版の3.5でも充分遊べるます。(誤字ってアーニャになった)


 結局、自分の作品の正解など自分の中にしかないので、どんなに相手が素晴らしい熟達の書き手であろうとも、くれる助言は今イチ芯食ってないことは、物を書かない人が想像するより遥かに多いです。

 それは、その熟達の書き手は、アドバイスをするその瞬間、熟達の書き手自身の物語を、彼ら彼女らの頭の中ですでに創造してしまっているからです。

 彼ら彼女らは、唐突に生まれたその自身の物語を想定してアドバイスをしているので、アドバイスを頼んだ側の頭の中にある物語とは、ほとんどの場合、どうしても齟齬が生じてしまう。

 なので、自分の頭の中にある物語にとってドンピシャの助言をもらうというのは、どんなにすごい人に助言を頼んだとしても難しい。そこを、ChatGPTは、数打って当てるということをやってくれる。し、その、数を打つことに罪悪感を一切感じないで済むわけです。ChatGPTには感情がないので。


 みんなも遊ぼう、ChatGPT。

 3.5なら、今なら新しくアカウントを作らなくとも、グーグルアカウント一つでサインインできまして、無料で始められます。OpenAIのサイトをチェックしてみてください。

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【朗報】 全書き手に届け! ChatGPTが物書きに福音をもたらす話 斉藤希有介 @tamago_kkym

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