5.

 優心が転校してきて早一か月が経つ。

 彼女は上手く立ち回っているようで仮面は剥がれていない。

 しかし同時に違った問題が発生していた。


「……ここに来て告白三回目」


 俺の部屋で彼女は丸机に顎を乗せてだらけていた。

 中身を知らなければ、単なる優しい世話好きな転校生。

 転校二週間を過ぎた頃から彼女に愛の告白をする人が現れ始めたらしい。


「今回も断ったのか? 」

「そ」

「因みに誰だったんだ? 」

「ん~、他の子に聞く所によるとサッカー部のキャプテンの人」

「イケメンじゃん」


 そう? と言いながら首だけを俺の方に回してくる。

 サッカー部キャプテンといえば校内でも有名なイケメンだ。

 彼女は知らないみたいだが、ジュニアユースに選ばれるほどの人物。


「よく断ったな」


 勉強机から椅子を離して、くるりと回す。

 何で断ったのか気になったので聞いてみた。


「いやだって何も知らない相手からの告白って、怖くない? 」

「確かにそうだけど……、「じゃぁお友達からで」とか言われなかったのか? 」

「言われたよ。だけど断られたからお友達って何か変じゃない? 」

「……その通りだな」

「それにタイプじゃなかったし」


 優心は「ぶー」と口をとがらせながら言う。

 イケメンが好みじゃないとなると優心の好きなタイプはどんなタイプなのだろうか。


「ボクの好みを知りたそうだね」

「……特に。口を挟む権利なんてないし」

「ボクがモテるからってそんな不貞腐れちゃって。ボクの好みはね――」


 何か一人語り始めた。

 聞いてないし、聞く気もない。

 幾ら幼馴染だからと言って、それを理由に干渉できるわけでもないから。

 されてはいるが。


「ボクの好みは一緒にいて安心する人。あと……」

「……」

「ボクが弄っても許してくれる人」

「いるのかそんな奴」

「気付かない所でいるものだよアンダーソン君」

「誰だよアンダーソンって」

「……ばか」


 そう言う彼女の顔はどこか赤かった。

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幼馴染は髪を結う ~清楚系美少女の転校生は俺の前でボクっ娘に変身する~ 蒼田 @souda0011

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