第59話 ロジカルセンス
「あの子達はうまくやってるかな。」
傍らに寄り添ってくれる
アリルに尋ねる。
≪5人とも合流したみたいですよ。
灯火は心配性ですね^^
フェアリアを出て、今からは
フォレストテーブルに向かう様
ですね。≫
まぁ、子供だし、大きな迷惑なんて
かける事はないだろう。
もし、あれば私が親として謝れば
良いからね。
「ねぇ、スカウト君、あなた達は
空腹になったりはするの?」
ここでの食事はアイテムを得る為の
手順でしかないのにどうして
こんな事を聞いてしまったのだろう。
それくらい子供達は自然なのである。
そして、彼女も現実と変わらない
状態の為、空腹や喉の渇きなども
覚えている事に疑問を持たなかった。
《食事の必要はないけど、食べる事は
出来るよ、父も母も料理は得意だし
とても美味しく感じるよ。》
「久延さんって料理が出来る人なんですね。」
樋口が広子に話しかける。
「そうね、一人暮らしだと聞いているので
自炊はされているのかもしれないわね。」
「フォレストテーブルで食事が摂れれば
良いのだけど・・・あそこはね。。。」
≪広子姉様に、晋一兄様。
フォレストテーブルはお母様が自ら
再構築していますので大丈夫ですわよ。≫
・・・「「えっ?」」
もしかしてフォレストテーブルも
改変されているのか??
樋口は運営ログのチェックを
していたがそういう形跡は無かった。
良い方向なのかもしれないが
全く喜べない。
自分が取り組もうと思った
ジグソーパズルを目の前で
完成されてしまうような
気分の悪さを感じる。
それは広子も感じている様だ。
普段はまず見る事の無い
なんとも言えない微妙な表情を
している。
「良い香り。温かくて美味しいわね。」
子供達も各々選んでよいと言われ
飲み物とお菓子に囲まれて嬉しそうだ。
立体的に変貌したフォレストテーブルは
まるで妖精の郷の様なイメージで
森の開けた場所にあるレストラン
というのがイメージに近いだろう。
そんな雰囲気の良いレストラン内で
二人はテーブルに向き合っている。
子供達は隣のテーブルでシェアしながら
楽しんでいる。
《食べすぎるとお腹がいっぱいに
なってしまうけど、いくら食べても
太らないから安心してね。
それから以前から食事に付いていた
アイテム付与のしくみは残して
あるって言っていたよ。》
スカウトが二人に説明する。
樋口は偏食しても体調に影響は
無いって事だなと思い。
そして・・・
「天国・・・」
広子は夢の中にいるようだ。
カロリー全無視で味わう事が出来る。
こんな夢のような体験はなかなか
出来ないだろう。
《VRゴーグルが体調をモニタ
していますから無理すれば
警告とともにログアウトする事に
なっていますわよ。》
フォノアが付け加える。
後の3人は無理に話に入ってくる気は
無いようでテーブルのお菓子を
それぞれのスタイルで楽しんでいる
様だ。
それって過食や拒食の治療に使える
のではないかしら・・・
フォレストテーブルの使い方によって
この仮想サービスは本当に革命を
起こすかもしれない。
あのAIは人知の範疇を超えて
来ている。危険はないのだろうか。
不安がよぎりながらも自分達が
今から携わる仕事の魅力に
抗う事は出来そうになかった。
樋口は広子の様子を見て
同じ様な不安に行きあたる。
彼は広子より慎重であった。
考え込んでいるとふと
話に入らなかった子供達が
傍らまで近づいてきていた。
「我が母は伴侶に危害が
及ばぬ限りは伴侶の
思いに沿って動くのじゃ。
そなたの心配は杞憂じゃの。」
「然り。」
「朕たちも母の意向に
従う故、心配はなかろうて。」
樋口は心を見透かされたように
固まる。
「そんなに固くなることは無い
ちと風流さが足らんの。」
そこまで言うとまた
テーブルへと戻って行った。
フェアリアもフォレストテーブルも
原型を留めない程の改変を受けている。
問題のバザリエも大変な事に
なっているだろう・・・
技術供与はすると言っているが
理解できるかどうか・・・
一抹の不安を抱えつつ食事は
進んでいった。
Separate World ~有能なヤンデレAIの尻にしかれているようです @Alice_ak @Alice_ak
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