第8話 静かな熱の始まり
「聖と話したくて。でも家は知らないから。昨日の話を思い出して、もしかしたら通りかかるかと思って来た」
莉愛は(聖と話せるうちにちゃんと話さなくちゃ!)と思いつめていたので、早口に話しだした。
「聖、ありがと。聖が来てから、クラスで息しやすくなった。私は聖が日本に来てくれて嬉しかった」
「え、あ、うん。リアの役にたててたなら良かったよ?」
聖は(『嬉しかった』? なんで過去形?)と引っかかりながらも、いつものように可愛いく見えるように意識して表情を作る。
「リア、体は大丈夫? 昨日も、体調が悪かったの?」
「朝は熱が出たけど、もう下がった。昨日はいきなり帰ってごめん」
「あれはボクが」
「日本に来た目的を話そうとは思っていたんだけど、先にリアから言われて、ひるんじゃっただけで」と続けたかったが、(話さないと!)と思いつめている莉愛は止まらない。
「昨日のは、聖に怒ってるとか、聖と話したくないとか、そんなんじゃないから。聖をヘコませてたら、ごめん」
「よくわかったよ。リアが元気で、ボクがリアに嫌われたんじゃないなら良かった」
「私も。ちゃんと話せて良かった。さっき
「うん?」
「昔、この公園で、すっごく可愛い女の子と遊んだことがあった。また遊ぼうねって別れたけど、それから一度も会えなくて」
(女の子だと思われてたのか。そりゃあ気づくはずないよ)
「あの時もっと話しとけば良かったって思って。それから後悔しないように話すようにしてきたけど。私はみんなをヘコませてたみたいで、だから避けられてたんだってわかったから」
(ボクもいなくなるって思ったのかな? リアがはっきり物を言うのって、ボクのせいでもあるのかも。気になるけど今は)
「その公園で遊んだ女の子ってボクだから!」
(しまった! 言うにしてももっと可愛く言うつもりだったのに)
「あー、言っとくけど、今はターザンもジャングルジムも怖くないからね。半分こしたたこ焼きあったでしょ? あれ以上美味しいたこ焼きにまだ出会えないんだけど。あの店、実はすごい名店だった? ……ハハ。ほら、ボクだってずっと話したかったんだよ。ボクの日本に来た目的は、莉愛に会うことだったんだから」
口に出してしまえば止まらなくて、聖も一気に話していた。
話してしまえば気が抜けて、聖は自然に伝えていた。
「すごく遅くなったけど、もう一度会えて嬉しい。リア、会いたかった」
いつもの作った小犬の笑顔ではなく、莉愛のことが本当に大切なのだと伝わる
「あれ? リア、大丈夫? 熱上がったの?」
「そう、かも」
二人の胸の中、小さな炎がうまれたことに、まだ二人とも気づかなかった。
あざと可愛いヒジリ君は無表情リアちゃんに好かれたい 高山小石 @takayama_koishi
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