第5話
黒方無銘は不機嫌そうな顔をして体を起こす。
「…なんだよ、またか。そう言えば、俺の命を狙ってる奴が居たんだっけか?」
嫌な気配を感じていた黒方無銘は夕方あたりで自分が狙われたことを思い出す。
浅い眠りに落ちていた雪代はゆっくりと目を開いて黒方無銘の名前を呼んだ。
「ん。…無銘、どうしたの、命を狙われてるって」
黒方無銘の言葉に雪代はそうやって聞くが黒方無銘は近くに置いてあったタバコの箱から1本のタバコを取り出して口元に運ぶ。
「さあな、俺と同じ影法師の連中がやって来たんだよ、お前仲介屋だろ?何か知らないのか?」
黒方無銘は雪代は何か知ってないかと伺うが彼女は首を左右に振って知らないと言った。
首を左右に振ったところで彼女の髪の毛が乱れたので薬指で髪の毛を耳に掛けた。
「…別にそういうメールは届いて無いけど、…それで、もしかして此処に影法師が来てるの?」
彼女もまた影法師という存在を理解してる様子だった。
黒方無銘はタバコを加えながらベッドから出てくる。
「そういう事だ、いざとなったら盾になれよ」
タバコを加えたままシャツを羽織パンツとズボンを履いてチャックを上げる。
「一応、こういうときは俺を置いて逃げろとか言って欲しいな、まあ、そんな青臭い台詞、聞きたくは無いけど…服を着る時間はある?」
そう言って雪代はシーツで自らの胸元を隠しながら聞いた。
全身全裸となっている彼女。
ゴミ箱の中には掃き溜めのように使い古された体液が捨てられていた。
「さあな、相手に聞いてくれ」
ベルトでズボンを締め直す黒方無銘。
その声に反応するかのように爆撃音とともに扉が破壊された。
玄関口からは少女の声が響いてくる。
「こーんにーちわー!無銘って人、居ますかあ?」
リビングへと土足で踏み入ってくる黒いドレス姿の女性。黒方無銘はタバコの灰を床に落としながら彼女の質問に答えた。
「居ねえよ、そいつは今ベガスに行ってポーカーしてる」
そのように軽口を叩くと黒いドレスの少女は一瞬信じそうになった。
「え?そうなの、って居るじゃんか嘘吐き、嘘吐きは嫌いだなあ」
そう言いながら黒いドロスの少女が指先から黒色の稲妻を迸らせる。
だが彼女の稲妻は即座にかき消された。
近くに雪代がいるためだった。
彼女が黒いドレスの少女の稲妻を認識したことで能力が無効化したのだ。
「無銘、目、瞑ってた方が良い?」
雪代はそう言って黒方無銘に伺う。黒方無銘がシャツのボタンをつけぬまま人差し指の付け根を親指で押して骨を鳴らす。
「いいや、あの女の方を見てろ、体術でヤる」
戦闘準備は完了だった。
「体術?あ、その人、人間なんだ、そっか、じゃあ仕方が無いね、きゃははッ」
黒いドレスの少女もそう言って笑うのだった。
追放された闇社会の暗殺者、次期当主に任命されて追放放免、今更戻るつもりは無い、色々と敵やヒロインに狙われてしまう、全人類能力無効化を持つ世界で暗躍現代バトルファンタジー、題名『影法師の夜』 三流木青二斎無一門 @itisyou
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