第53話 5兆エンゲット!!



 屍田踏彦が開催したダンジョンアトラクションタワーの騒動から一週間。

 あれから彼の悪事は暴かれたらしい。


 ダンジョン扱いで人間をアトラクションに参加させたこと。

 不法な地下労働に派遣していたこと。死亡者遺族が、人道的な問題で訴訟を起こしたこと。


 俺からみればダンジョン扱いで挑戦したんだから、屍田の方に理があると思うがね。覚悟してねー奴が悪いわけだし。


「その屍田もぶっ殺しちまったからなぁ」


 ちょっと良心が痛んだが、人間じゃなくなってたし、まあいいや。

 元々グレーなダンジョンだったってことで。被害者遺族と屍田のダンジョンアトラクション死亡者被害とやらは勝手にやってくれって感じだ。


 俺は倒壊したダンジョンアトラクションタワーの隣、アルティメットセレブタワーの最上階ナイトプールで、ワインを傾けている。


 50年ものだ。


「昼に飲む酒は最高だぜ」


 俺はアルティメットセレブタワー最上階に居を構えていた。

 第二の女神ニュルンルンがタワーに無料で住まわせてくれたからだ。


 女神ニュルンルンはここにはいないがヴェーラを通じて時折が通話できるようになっていた。


 あれから詳細に尋ねてみると


「あなたには女神と契約したことで、契約料が発生します。この契約量の中に家賃光熱費が含まれていますよ」


 とのことだった。


「まあ秒速で500万もらったからなぁ。働かなきゃいけねーけど。昼の酒には抗えねーな」


 俺は昼からナイトプールに浮かんでいる。

 満喫して部屋に戻るとリコの書き置きがあった。


【アパートに戻ります】


「あいつ意味わかんねーな。楽しんでいけばいいのに」


 いや、俺だって本当はわかっている。

 リコの言いたいことはよーくわかるんだ。


 あれだろ。


 ふたりの出発点を忘れたくないっていう。

 でも女神と契約して秒速で500万もゲットしたんだ。


 人生で楽しめるときは楽しんでおかなきゃだよな。


「あー」


 俺はスマホの口座をみて、ため息を吐いた。

 散在で500万が消えたためだ。


 そりゃ50年もののワインに100万の課金に、ヤフオクで生原画落札とかしてたもんな。


 前借りとかできないのかな。

 俺は20メートル先のプールに浮かぶ女神に声をかける。


「おい、ヴェーラ」

「なぁに? 彼ピきゅん♡」


 女神に彼ピと言われると最高な気分になりそうなものだが、俺から言わせればこいつは女神の範疇を超えてヴェーラという害獣だった。


 尻に触れると爆発する害獣だ。

 無限の仮想質量を生み出せるとか、そういう奴なのだろうか?


「きゅーん♡」

「離れろ!」

「いやぁー♡」


 近づいてくるのを手で押しのける。

 ヴェーラの威力ある尻の謎はおいておいて今は金のことだ。


「女神との契約って前借りとかできねーの?」

「貢ぎます!」


 いや貢いでくれるのは嬉しいのだが、いきなり言われるのは怖い。


「マックスどれくらい前借りできんの?」

「前もいいましたけど5000000000000エンですよ」


「5兆エンってギャグはいいから」

「ギャグじゃないですよう♡」


「え? マジ?」

「その代わりお金を貰った分だけ、人類蠱毒剪定計画のサバイバルリストをすべて攻略しないといけなくなりますよ」


 このとき俺の目は金に眩んでいたと思う。


 だって5兆エンだよ?


 5兆エンって嘘みたいな額だろ?


 それがマジだったって言われたら例え罠でもやるだろ。


 例え罠で65%くらいの確立で死ぬとしても、5兆エン貰えるなら俺はやるね。


 いままで死んだように生きてたんだからな。 

 死んだように生きるのと、生きて死ぬなら意味は一緒だろ?


「5兆エンくれ」

「サバイバルマックスになりますよ? 運命も高速回転で動き始めます。敵もいっぱい送り込まれてきますよ?」


「かまわねえよ」

「でもでも。お金のことはリコさんを通してって言われてますよ?」


 ヴェーラは案外良識的だった。

 俺のことになると頭がおかしくなるだけで、こいつは本来まともな奴なのかもしれない。


 実際、今の俺はリコと喧嘩していた。


『鬼神さん、調子にのってるでしょ』

『あーん? 今調子に乗らないでいつ調子にのんだよ。セレブタワーの最上階だぜ! 毎日ナイトプール貸し切りでパリピマックスを楽しもうや』


『私は……。アパートに居たときが楽しかったな』


『おいおいおい。しんみりが早すぎるんじゃねーの? 俺が望んだんだ。マッサージ師もシェフだって呼び放題なんだぜ』

『私、帰るね』


 そういってリコはセレブタワーから出て行ってしまった。

 だが五兆エンをゲットすればあいつも、俺と同じ目線に立てるかもしれない。


 五兆エンだ。どんなに綺麗な人間でも靡くだろ?

 

「サバイバルマックスにだろうが、かまわねえ。早くしろ」


 俺は即断即決だった。


「しょうがないですねえ♡」


 ヴェーラがモノリスめいた光学映像をぶぅんと生み出す。

 モノリスに綺麗な指先を触れると俺のスマホに通知がきた。


 俺の口座にはリアルに5兆エンが振り込まれた!


「うおぉ?」


 ビビりすぎて上手く声さえ出せない。


 でもこれで勝ち確定だ!

 人生いい意味で終了!


 早期退職!

 ファイアー!


 ゲームセット!

 俺の完全勝利!


「っっっ。しゃああああああぁああああ!」


 そのとき上空から、巨大な種が降り注ぎ、ナイトプールに突っ込んできた!

 どぼぉぉん!


 とした轟音と共に、全身緑色の異星人めいた男がでてくる。

 ナ○ック星人?

 尋ねる前に自己紹介が来た。


「我々はナザック星人。すでにこのタワーにはダンジョン・コアは打ち込んだ。ここを我々の本拠地にする!」


 俺はヴェーラを小突く。


「なんで、いきなりダンジョンコアとか言ってんの?」

「鬼神きゅん。言ったじゃないですか! 5兆エンを使うと、運命が動いて敵がいっぱい送り込まれてくるって!」


「いきなりくることはねーだろ?!」

「いきなり来ますよ。運命を弄れる〈妖精世界の神〉が主催者なんですから」


「神、だと?」

「ニュルンちゃんは選ばれた人だったけど。私はダメだったんですよねぇ。でもでも鬼神きゅんの側にいるから、平気平気!」


 ヴェーラが意味深なことを言うが、意味はわからん。

 俺達の前方では、ナザック星人とやらが、ダンジョンコアを起動!


「ふははははは!」

「いちおー聞くけど。ナザックさん。あんた実はいい人ってことない?」


「手始めにこの惑星を掌握し、宇宙の支配者となるのだ!」

「あー。こいつももうダメか。ぶち殺すしかねーな」


 アルティメットセレブタワーに茨が這い、みるみるうちにダンジョン化していく!


「ううああああああああ!」

「きゃぁぁあああぁああ!」


 俺とヴェーラは〈茨ダンジョン〉へと送り込まれてしまった。


 だが5兆エンゲットした俺の敵ではない。

 5兆エンだよ?

 最強にもなるだろ?


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【悲報】バズれない迷宮配信者さん、裏ボス遭遇で死亡確定の超美少女インフルエンサーを華麗に救出、SSSSおじさんに成り上がってしまう。 リミットオーバー≒サン @moriou_preclay

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