どれほどの時間が、過ぎたのだろうか?


もう、このソファに座った状態から、動く気にもならない。


身体の怪我の、あれほど痛みは、今はもうすっかり消えていた。空腹感と喉の渇きまで、どこかへ消えてしまった。


黒ずんでいた手足は、真っ黒になっている。それに指先は、不自然なほど細長くなり、鋭く変形していた。


だが、なにも疑問は感じなかった。むしろこれが、ここでの本来の姿なのかもしれない。


部屋の様子は変わらないようだが、視界がかすむような感じがして、あたりがよく見えなかった。


だが、もう見る必要はない。ただ感じるだけでよい。


そうだ、ここにずっと座り続けていればいいのだ。


時間は無限にある。


誰かかが、向こうから来るまで……

そう、別の人間がここへやってくるまで、いつまでも待ち続けていればいいのだ……

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The Backrooms (He's trapped) 八重垣みのる @Yaegaki

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