第38通目 吊り革を掴む

駅前までやってきた俺達は、そのまま地下鉄に乗る。


4駅ほど向こうになる。


時間としては、15分ほどだろうか。


日曜ともなると通勤ラッシュとは違ってそこまでは混んではいないが座席が空くほど空いてはいない。


俺は、吊革を掴んでいる。が、陽芽は俺にしがみついている。


「陽芽、揺れたら倒れない?大丈夫?」

「う、うん。倒れても透夜くんに倒れるね」


それは、大丈夫なのだろうか。


まあ、陽芽が倒れて来ても助けるけど・・・。


周りの視線が痛い。


まあ、どう見てもカップルがいちゃついてるようにしか見えないだろうな。


車窓に映る俺達は、とっても地味なカップルにしか見えない。


まあ、そうなるようにお互い気を付けている。


だって、可愛い陽芽を他の人に見せたくないから。


たぶん、彼女も俺の事を同じように人に見せたくないと思っているのは分かっている。


「映ってる私達、地味に見えるかな?」

「あはは、俺も同じこと考えてたよ。

でも、いちゃついてるから目立ってはいるけどね」

「うん、それはいいの。

透夜くんがカッコいいのは私だけが知ってればいいから」

「陽芽が可愛いのを知っているのは俺の特権だね」


俺達は、そのまま小さく笑う。


結局想うことは同じ。


お互いに独占欲が強い。


独り占めしたいと思ってしまう。


だから、こうして一緒にいれるのかもしれない。


明日、学校が始まるとどうなるのだろう。


気が気でないのは確かだな。


「明日から大変・・・かな?」

「かもしれないね、それでも陽芽は俺の隣にいるんでしょ?」

「当たり前だよ、ずっと一緒にいるから」


俺の腕を締める力が少し強くなる。


まあ、俺も陽芽が隣にいてくれることがすっかり当たり前になってしまった。


二日前には、思いもしなかった。


でも、絆された。


嫌じゃないし、むしろ嬉しい。


そんな、やり取りをしながらいると15分などあっという間に過ぎるのだった。

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誕生日のその日、届いたのは『婚姻届』でした。 天風 繋 @amkze

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