私は蝶になりたい⑫




一依が変身してから数日後のこと。


「初めまして! 来人の彼女の早織ですッ!!」

「はぁ・・・」


目の前にはキラキラした笑顔を見せる女性がいた。 変身してから一依にはたくさんの友達ができ楽しい日々を送っている。 昼休みになると突然来人の彼女と名乗る早織が現れた。


―――どうして来人くんの彼女が?

―――もしかして私が来人くんに告白をしたから?

―――それに怒って私のところへ・・・ッ!?


悪い思考がぐるぐると回る。 彼女のことは見かけたことがあるくらいで今まで接点はなかった。


「えっと・・・。 私に何か・・・?」

「来人が変身させたっていう一依ちゃんだよね? 一度会ってみたかったの!」

「はぁ・・・」

「それでね、ネイルをさせてもらえないかなーって!」

「・・・ネイル?」


確かに来人の彼女はネイルの学科にいると聞いていた。


「それはどうして・・・?」

「折角一依ちゃん綺麗になったじゃん? そのおまけっていうのかな。 対価とか何もいらないから私からも一依ちゃんを綺麗にしてあげたいなって」

「えっと・・・」


返事に困っていると来人がやってきた。


「受けてやってくれ。 早織も人を綺麗にするのが好きなんだ」


―――彼女さんがここにいること来人くんは知っていたんだ・・・。

―――なら大変なことにはならないだろうし大丈夫かな。


来人を信じて受け入れた。 早速席に着きネイルをしてもらう。


「一依ちゃん綺麗な手ー! しかも肌すべすべ!! 本当にいい肌しているんだね!」


一依の情報は聞かされているようだった。


「そう言えば遊園地のチケットありがとうね?」

「あぁ、ううん。 来人くんにはたくさんお世話になったから」

「一依ちゃんを変身させたのは来人でしょ? 私は何もしていないのに」

「早織さんからは服をもらったから・・・」

「服かぁ! どう? あれ気に入ってくれた?」

「凄く。 本当にもらっちゃっていいの?」

「もちろんだよ! 一依ちゃんのことは知らなかったけど、来人から特徴を聞いて合いそうな服をチョイスしたんだ」


来人へのお返しの品は遊園地のチケット二枚にした。 本当はメイク道具やスキンケアものにしようと思ったのだが止めた。

メイク道具は来人が既に持っているものが高級過ぎて負けると思ったし、スキンケアも来人の話を聞いて自分に合うものを使った方がいいと分かったからだ。 来人の合うものまでは流石に分からなかった。

今回は来人の彼女も手伝ってくれたことから無難に二人で行ける遊園地のチケットに決めた。


「キャーッ!!」


突然教室に叫びが響き渡った。 当然やってもらっているネイルの手も止まる。


「小巻! その顔どうしたの!?」

「貴女こそその顔どうしたのよ!?」

「え、私も!?」


先に叫んだのは小巻たちだった。 続いて周りからも声が上がる。


「いつの間にかすっぴんになってるじゃん! いつメイク取ったの?」

「取ってないよ! 愛こそ今すっぴんだよ!?」

「えぇ!?」


教室中困惑していた。


「・・・よく分からないけどみんなメイクが取れちゃったのかな?」

「でも早織さんはメイクしたままで可愛いよ」

「そういう一依ちゃんもメイクしたままで可愛いよ? っていうか私のことは早織でいいって!」


ここで校内放送が流れた。


『本校に備わっていたエネルギーが尽きてしまいました。 原因はスキルの使用が著しく多いため――――』


放送の途中で担任が入ってくる。


「全く。 一番の原因はこのクラスよ?」

「先生、どういうことですか!?」

「魔力の消費が激しいの!! この学校へ入学する時に言ったわよね? スキルに頼り過ぎないようにって! しばらくスキルは使えなくなるわ」


それを聞き皆は一斉に自力でメイクし出した。


「もー! 上手くアイラインが引けないー!」

「ファンデーションを塗るとムラができるんだけど!!」


スキルを使ってメイクをしていた人はすっぴんに戻ったようだった。 ほぼクラスの人たちはメイクが取れている。 自力でするメイクの腕が落ちているようで皆困っていた。

戸惑っていると来人がやってきた。 来人は少しスキルを使っていたのかメイクが薄くなっているがあまり変わっていない。


「来人くん・・・」


来人とはあの日以来深い関わりはないが挨拶する程度には話していた。 そんな来人が一依に向かって言う。


「努力は裏切らない。 努力した者勝ちっていうことだな」






                                -END-



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私は蝶になりたい ゆーり。 @koigokoro

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