勇者が魔王と出会ったら 2人用台本
ちぃねぇ
第1話 勇者と魔王が出会ったら
0:独り壁に向かって発声練習を繰り返す魔王
女:ふっふっふっふっ!勇者よ、貴様の負けだ…!潔くチリとなり消えるがよいっ…!
女:……違うな
女:お~っほっほっほっ~!さあ、勇者よ!我に許しを請いなさ~い!
女:………なんか変か
女:皆の者!勇者は我が倒した!さぁ、宴(うたげ)を始めよう!
女:…うーん、どれがいいんだろう?
0:勇者登場
男:あのー…魔王さん?
女:はい~どなた?
男:勇者です
女:あー勇者さん!……勇者さん?
男:はい
女:…マジで?
男:はい
女:なんでぇぇぇ!?え、ドラゴンは?四天王は!?
男:やっつけました
女:マジで!?
男:はい…
女:そんな…そんなぁ…!(崩れる魔王)
男:なんか、すみません
女:っ…ありがとう--!!
男:えっ
女:ほんとにやっつけてくれたの?手下全部?一掃(いっそう)した感じ?
男:…はい、まんべんなく
女:エクセレントっ…!
男:えっ
女:じゃあもうこれ、私たちの敗北でいい?いいのよね?
男:あ、いや…魔王なんですよね?ラストにして最強最悪のボスがまだ残ってるんですけど
女:え、私?そんなことしないわよ~降参!
男:えええ…戦わないんですか
女:戦わないわよ!ギャラリーもいないのに何のために戦うのよ!
男:何のためって…
女:私は元々、この戦いには反対だったの!そりゃー人間界から攻められて?反撃しないとメンツ丸潰れってのもわかるけどさーまずは交渉だと思わない?いきなり街一つ焼いちゃって…もうほんっと最悪!
男:でも、さっき勝利宣言の練習…してましたよね?
女:やだ~見られてたの?恥ずかしい~
男:恥ずかしいって…ノリノリでしたけど
女:だって…勝利宣言しないことには戦争終了出来ないし、そこでビシッとしてないリーダーとか、内紛が起こりそうじゃない
男:…なるほど
女:ホントは嫌だったのよー?私、目立つこと大っ嫌いだし。うまーく色んなことすり抜けて生きてきたのに、突然魔王なんかやらされて…挙句開戦だよ?ふざけんな!って感じ!
男:…それは、お疲れ様です
女:…ってことで~私のこと、見逃してくれない?
男:えっ
女:私さ~田舎で細々(ほそぼそ)と暮らしたいんだよねぇ~自分が一から育てた作物を、塩コショウなんかでシンプルに味付けして食べるの!…考えただけでよだれが…
男:だ、だめですよ…魔王を倒さないとこの戦いは終わらないから
女:えー?どうしてもだめ?
男:はい
女:そう…(怪しい感じに)わかったわ…
男:(警戒しながら)何をするつもりですか
女:ふふ…決まっているでしょう………自害よ!
男:えっ
女:だってだって~ドラゴンより四天王よりあんた強いんでしょ?私が勝てるわけないじゃん!楽に殺してくれるかどうかわかんないし~だったら自害一択でしょ!
男:な…命をそんな簡単に諦めていいんですか
女:いーのいーの、やりたくないことやらされて、やりたいことはできないし…生きてても意味ないじゃん?
男:そんな、そんなのって…!
女:…なんであんたがショック受けんのさ
男:だって、そんな
女:あんた…もしかしていい人?
男:僕は……いい人なんかじゃ
女:ねえ、なんであんた勇者なんてやってんの?金とか名声とか欲しい感じ?
男:ちがっ…!…僕はそんなもの…要らない。食うに困らないだけのお金があればそれでいいし…有名になったって…いいことないし
女:え?
男:だって有名になればなるほど、たった一つの失言で全世界から後ろ指指されるし、どこ行ったって晒(さら)されるでしょ?
女:まあ…魔王を倒した勇者様ともなれば
男:僕の過去とか全部探られて、「あいつどこどこで鼻ほじってました」とか笑われるんでしょ?一瞬話しただけの女魔導士とデキてるとか噂されて、あることないこと捏造(ねつぞう)されて
女:まあ、可能性はあるわね
男:やですよそんなの!僕は地味に普通に静かに平凡に暮らしたいのにっ!
女:じゃあなんで勇者なんか始めたのよ
男:それはまあ…成り行きで
女:どんな成り行きよ。…まあいいわ。………じゃあさ、私と一緒に逃げない?
男:え?
女:私と一緒に、誰もいない小さな村で一緒に暮らさない?
男:でも、そんなことしたら…戦いが終わらないじゃないですか
女:そう?消える前に全世界に「魔王と力が拮抗(きっこう)していて勝負がつかない。僕たちが戻るまで双方手出しをするな」って触れ回っとけばよくなーい?
女:それを無視して小競り合い始めた馬鹿がいたらつぶして回ってさ
男:でも僕…結婚したいんです
女:ん?
男:いつか誰かと…月並みだけど幸せであったかい家庭を持ちたいんです。ここで逃げたらその夢も…
女:…じゃあ私となる?家族
男:え
女:結婚って…要は死ぬまで一緒にいたらいいってことよね?オッケー楽勝!
男:でも………子供も欲しいんです
女:魔力で作れるよ?
男:マジですか!?
女:うん。死ぬまでずっと一緒にいよ?愛してあげる
男:ああ…!
女:ってことで、私と逃げよ?幸せになろ?
男:っ…はい!末永くよろしくお願いしますっ……!
勇者が魔王と出会ったら 2人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます