詩人になんてなりたくない

詩人になんて

なりたくない


詩人の末席にも

ありたくはない


僕の視線は

詩人と呼ぶには

余りにも軽すぎる


僕の忍耐は

詩人と呼ぶには

余りにも透明で

余りにも逃げたがる


僕は 詩人になんて

なりたくないし

なれるはずもない


そうやって

なりたくない の

或いは

なれるはずもない の

賛美歌コラール号笛サイレン

おびただしく鳴り響く中

僕は いったい

どれほど見てきたことか

ふと 口をついた言葉が

蜷局とぐろを巻いて

純な魂を

哀しそうに

かなしそうに

いとおしそうに

絞め殺してしまうのを


意思のわだちを外れて

僕の頭の

しがない歩兵が

声を上げて泣き出す時

僕は詩を書くモノではなく

ちゃんとした

一人の人間になっている

詩魔を討ち倒した

一人の人間になっている


僕は いつも

ただ いつまでも

普通でありたい

一人の人間でありたい




そんな思いに耽るうちに

今日の爽快なも暮れて

僕は また

いつものように

椅子に深めに腰かけて

幾つかの新しい詩を

書き始めようとしているらしい

詩人として ではなく

みんなと同じように生きる

たった一人の人間として


詩人として ではなく

かけがえのない

たった一人の人間として


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

PILGRIM'S MULTITUDES:もざどみれーる自選詩集 もざどみれーる @moz_admirer

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ