地にまろぶ

小余綾香

地にまろぶ

スケボする子らがぶため着るものを地を這うために着るさかしらに


地は天のほだしだろうか地にまろぶ雨のゆわえる十キロメートル


葉うらむ蟲のはぎゆく襤褸ぼろ空をアートと呼べば彼我ひがまじらうか


あだやかなせいをすなどる黴雨つゆの夜にいざれぬ梅の花貝は


逃れゆく車輪の達しえなかった道をトラック「いきたかったか?」


落日をぬばたまむすぶ花は呑む受胎告知のキャンディ包み


あぶをひかりと知らず這いゆけば影ひとつない更地に迷う


通り風 泥かきすすむ庭のに蟻にあらがう青虫は映え


とどめ刺す情もすくうも持たぬ石には石の宇宙そなわる


みじか夜のはて光る雲しらじら天涯は闇み返りてもだ




一面に紫雲英ゲンゲを撒こう――転ぶ目のひくさにひかり揺らす陰あれ


忌色いみじきの髪にはらはら水引の赤あやなすか万有引力


冷めゆく日 きざすふた葉はしたたかにロンド・カプリッチョーソのしるし


うつむきむ君とは見つめ合えるから はや水仙のに春をきく


電動の椅子おのずとは転がらず「いきたくないか?」クラッチを解く


正中のコル・カロリの 菜にむすび蛹はその身ときゆく蝶へ


時つ風 紅い芽ぐみを高鳴らせ醒ますか内なるターニンググリーン


泥を泳ぐ のぼる匂いのひれまでも染め上げるまま跳沙魚とびはぜになる


葉むら這う翹揺ゲンゲじくのぐにのび青空よジュテ・アントルラセよ


真白にはなれず青むも蓮華草ちり敷くえんになつ鳥の声


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地にまろぶ 小余綾香 @koyurugi

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