第7話 ファイナル・バトル
「我名はレイナ、契約に基づき、この街を破壊する者……」
それはレベルの違う邪気を放っていた。皆は絶望に取りつかれ、体が固まるのであった。
「これって『逃げろって何処に?』ってやつじゃね」
真奈さんが冗談を言うが面白くない。当たり前だ、S級魔女が目前にいるのだから。
すると……。
『デンコン!!!デンコン!!!』
スマホが大音声で鳴り始める。
『H市に細菌テロが発生、法律によりH市を封鎖します』
そのH市とはここの事である。S級魔女の降臨は政府も把握したらしい。
しかし、封鎖とは穏やかでない。
「S級魔女の降臨は120年ぶりなの、政府がこの都市を見放してものおかしくないわ」
萌季さんが冷静に言う。流石、軍師だと言いたいが今は逃げる方法を考えて欲しい。
その時である。
不意に現れたのはA級魔女である。
「ほーう、これは美味しそうな魔女さんね」
レイナはA級魔女の背後に素早く周り込み、首筋をガブリと噛みつく。そして、A級魔女は簡単に瞬殺されて喰われていく。
「バカな……あれほど苦労したA級魔女を瞬殺して喰らっているだの!?」
真奈さんがそのレイナの存在に驚くと。
「レイナの注意がA級魔女に向かっている。逃げるなら今だ、高校の旧喫煙室まで逃げるぞ」
萌季さんが大声で私達に言う。私達は頷き。敗走する。
そして、旧喫煙室にたどり着くと。皆はどんよりと暗かった。
「情けないね、それでも魔女狩りなの?」
部屋に誰かが入ってくる。
「私は『香織』隣街の魔女狩りギルド『スクールアイズ』の魔女狩りよ」
すると、数人の魔女狩りが入ってくる。私達に加勢してくれるらしい。
「ちょっと待った」
更に魔女狩り達が現れる。続々と現れる魔女狩りは、その数は20人にも及ぶものであった。
「皆、来てくれたのね」
その言葉に一人の魔女狩りが。
「S級魔女だぞ、120年ぶりだぞ、『スクールマスター』だけで狩ってアラブの石油王にでもなるつもり?」
これは笑える冗談だ。確かに都市が封鎖される程の魔女だ、その賞金はばく大なモノになるだろう。
「よし、皆で山分けだ」
真奈さんが笑顔で皆の士気を高める。
……。
不意に萌季さんが黙り込む。
「萌季さん?」
「もしかしたら、だけど……この数の魔女狩りが居ればレイナを救えるかもしれない」
私は長考した後、慎重に言葉を発する。
「皆、聞いて、S級魔女のレイナは私とスールの契約を結んでいるの。だから、絶対にハッピーエンドにしたいの、手伝ってくれる?」
「うおおおおおおお!!!」
返事は否定する者はいなく、歓声だけが辺りを包んでいた。それは喜びであった。これだけの数の魔女狩りが私の為に戦ってくれると言うのだ。
「いざ出陣だ」
真奈さんがすっかり仕切り役になっている。
それから、繫華街の廃ビルに着く頃には辺りは明るくなってきた。
「よし、かかれ」
それは個々の力は弱くても20人に及ぶ魔女狩りが一斉に攻撃する事で一つの大きな塊として動くのであった。
「おや、この我に歯向かう者がこんなにもいる。面白い戦いに成りそうだ」
そして激戦の末にS級魔女のレイナを追い込むことに成功した。レイナはその戦いで脚が動かなくなっている。
「どうした?我を討たぬのか?」
「私、決めたの、レイナを魔女の契約から救い出すって」
「そうか……」
「皆、今よ、私に力を貸して!」
すると私の『霧雨』に力がみなぎる。魔女の契約の本体はレイナの持っているナイフだ。
私は素早く『霧雨』でナイフを叩き落とすとナイフは粉々になりレイナは意識を失い倒れる。魔女狩りのシンボルである自分のナイフを失ったら魔女狩りには戻れない。
それから、一年後。
「レイナお姉さま、今日は街にお出かけですよ」
「ああ、楽しみにしていた」
「では、車椅子を押しますね」
そう、お姉さまはあの闘いで脚が不自由になったのだ。強制的に魔女狩りを辞めた為にマネーからライフポイント振るなど出来なくなったのだ。
「本当に可愛いスールを持ったものだ」
「やだな、心の闇がどうのこうの、何時も言ってたくせに」
「もう、闇は無いのか?」
「どうだろ?分からない。そんな事より今日は映画も観たいな」
「ああ、車椅子でも観られる場所を探してきた」
「流石、レイナお姉さま。百万馬力で車椅子を押しますね」
それは、流れる入道雲が印象的な夏前の一コマであった。
マネーorライフポイント、どちらを優先する?負ければ死と破産を選ぶ。 霜花 桔梗 @myosotis2
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