第6話 S級魔女の生まれる理由

 その日の放課後、お姉さまからメッセージが届く。旧喫煙室に来るように言われる。仕方がない、旧喫煙室に行くか。


 私は授業中の夢で機嫌が悪い。自分が死ぬ夢が予知夢だと言われれば気持ちいいモノではない。ぶつぶつ言いながら、部屋の中に入ると。


 皆、真剣な表情でいた。また、タダ働きの相談か?


「それで、どうしたのですか?」

「A級魔女の情報が入ったのだ」


 レイナお姉さまが重い口を開く。


 は!?A級魔女?私、死ぬ、やん。


「どうした?顔が真っ青だぞ」

「いや、怖いのです。A級魔女など初めてなのです」

「残念だが拒否権はない、A級魔女は狩らないと危険だからだ」


 お姉さまは私に死ねと申すのか?


 これは偶然だ、ギルドで狩りをするのだ。参加しなくてはならない。


 場所は街の繁華街であった。


「レイナお姉さま、こんな所に魔女なんているのですか?」


 私の問いにお姉さまは真奈さんを見る。魔女探知の得意な真奈さんが真剣な顔をしている。


「確認できました半径500メートルにA級魔女です」

「どうする?この人混みでは……」


 お姉さまが迷いの言葉を吐く。あの楽観的なお姉さまが慎重だ。


「あの廃ビルにおびき寄せましょう」


 萌季さんが提案する。萌季さんは策士としての能力が高く。『スクールマスター』の軍師である。


 私達は萌季さんの指さす廃ビルに入るのである。そして、廃ビル内を進むと。


「敵、A級魔女、来ます」


 真奈さんが叫ぶと魔女が襲いかかってくる。私は魔女の不意打ちをくらい爪で切り裂かれる。


「これは罠だ、おびき出されたのは私達の方だった」


 萌季さんが混乱した様子で言う。


「いいか、お前たち、萌季の策を決断したのは私だ、萌季を責めるなよ。とにかく、今は体制を立て直しだ」


 私達はA級魔女から必死に逃げる。


 うううう、体が重い。どうやら、致命傷をくらったらしい。やはり『霧雨』の見せた夢は正夢だった。


 その後は敗走を繰り返して、私達は追い詰められていた。


「レイナお姉さま、私を見捨てて逃げて下さい」

「そんな事を言うな!マネーをライプポイントに振って生き延びろ」

「残念、これでも親孝行でね、破産の道は選ばないのです」


 このセリフは二度目だ、生き途絶える私をレイナお姉さまが見守ってくれた。


 ふ~う、意識が遠のく。これが死かこれはこれで悪くないな。


「薫ちゃん!!!」


 レイナお姉さまの叫び声が印象的であった。


 しかし、である。霊体として辺りを浮遊していると……。


「私は認めない、薫ちゃんの死など」


!?


「私は認めない」


 レイナお姉さまはナイフを抜き何やら呪文を唱える。


「我、存在を等価交換して、最愛の者の死者蘇生を願う!!!」


 お姉さまはその言葉と共に自分の胸にナイフを突き刺す。


 私は微睡から覚める。ライプポイントもマネーも普通の数値になっている。


 生き返った?


 私が不思議な気分でいると。


「おい、本当に生き返ったのか?それどころじゃないぜ」


 萌季さんが焦った様子でいる。


「確認できました、S級魔女です」


 真奈さんが指さしたのは禍々しい邪気を放つレイナお姉さまであった。


 そう、レイナお姉さまがS級魔女になったのだ。


 S級魔女の生まれる節理は死者蘇生であった。

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