世界初の人型ゴーレムを作った…まではいい。なんで私の恋愛を邪魔するの?
シャルねる
第1話
「で、出来たぁぁぁぁ!」
私は思わずそう叫んでしまう。
家の中で一人しかいないのに。
でも、それは仕方ないと思う。だって、史上初の人型ゴーレムが完成したんだから!
私はゴーレムに人生の全てをかけてきたと言っても過言では無い! ……いや、まだ19歳なんだけどさ。それでも、私の生きてきた19年間をかけてきたと言っても過言ではないんだよ!
「お、落ち着こう。……設計は完璧だ。絶対に動くと思う。……でも、些細なミスがある可能性がある。……だから、一旦確認しよう」
そう言って、私は二日をかけて、ゴーレムを見直した。
「よし、大丈夫だ。絶対に動く!」
そう呟いて、私はゴーレムに魔力を込めた。
ちなみにゴーレムの見た目は、150cmほどの身長、そして金髪で黄色の目。……うん。私が昔に一瞬だけ見た貴族のご令嬢の姿だね。
……バレたら不敬罪だ、とか言われるかもしれないけど、あれから時間も経ってるし、バレたりなんてしないでしょ! 仮にバレたとしても、このゴーレムちゃんはめちゃくちゃ強く作ったから、逃げるくらい楽勝だ。
「……マスター?」
魔力を込め終えると、ゴーレムちゃんがそう言った。そう、言ったんだ。喋ったんだ!
「成功だ。……成功だ。成功だぁぁぁぁぁ」
私はそう叫びながら、思いっきりゴーレムちゃんに抱きついた。
普通の人間だったら、受け止めきれないだろうけど、見た目はともかく、相手はゴーレム。当然受け止めてくれた。
「ま、マスター? どうしたんですか?」
ゴーレムちゃんが何かを聞いてきてるけど、私はそんなのはスルーして、ゴーレムのほっぺに私のほっぺをスリスリした。
ぷにぷにだ。ほんとに人間みたいに、柔らかい。……それに、体温もあって、ちゃんと暖かい。
「あ、名前付けないとね! ずっと前から考えてたんだ! あなたの名前は、ラフィよ!」
「はい、マスター、私はラフィです」
んんんんんん。最っ高! ゴーレムと話してるなんて、夢みたい。 でも、これは夢じゃなくて、現実! しかも、そのゴーレムは私が作ったんだ!
ふふふ、夢も叶ったし、これで明日からは私も恋愛が出来る!
夢を叶えるまで、恋愛なんてしないって誓ってたからなぁ。……友達が結婚報告に来る度に、血の涙を流したものだ。
まぁ、私みたいなゴーレムオタクが結婚できるのかって思うかもしれないけど、私の見た目はかなり良い。自分で言うのもなんだけど、それは過去のことで嫌という程理解している。
「よし、ラフィ、掃除お願いできる?」
「はい、任せてください!」
見た目で遠慮しちゃいそうになるけど、ラフィはゴーレムだからね。遠慮せずに、色々頼んでいかないと。
「ありがとう、じゃあ、私は今日は眠らせてもらうね」
「はい。掃除は任せてください!」
「うん。……それとだけど、明日着ていく服を用意しておいて。オシャレなやつね」
「……分かりましたけど、理由を聞いてもいいですか?」
なんでラフィがそんなこと気にするんだろ。
……あー、完全自立型で、成長していくように作ったから、理由を聞いて成長に繋げようとしてるのかな?
そう思った私は、正直に答えることにした。嘘をつく理由もないし。
「女がオシャレをする理由なんて一つ! 男を探しに行くんだよ」
「は?」
私がそう言うと、ラフィはびっくりするくらい冷たい声で、思わず出てしまったといった感じで、そう呟いた。
そして、お酒を飲んでいた私が、悪ふざけでつけた目のハイライトを消す機能を使い、私の事を見てくる。
「ら、ラフィ? こ、怖いよ?」
私は後悔した。なんであの時こんな無意味な昨日をつけたんだと。……お酒で酔っていたとはいえ、あの時の自分を殴りたいよ。
「怖い、ですか?」
「う、うん。取り敢えず、その目のハイライトを戻そっか」
「マスターを怖がらせてしまったのは謝ります。ですが、マスターがくだらない冗談を言うからですよ?」
ラフィは目のハイライトを直さずに、そう言ってくる。
じょ、冗談って……何も言ってないと思うんだけど。
「えっと……何か言ったっけ?」
「言ったじゃないですか。男を探しに行くって」
「え? いや、それは冗談じゃ――」
冗談じゃない。そう言おうとしたが、言い切ることは出来なかった。
何故なら、ラフィが炎の球体を手の上に浮かべ始めたから。
「ふふっ、マスター? 何を言ってるんですか? マスターには私がいるじゃないですか。それ以上そんなくだらない冗談を言うなら、マスターといえど、怒りますよ?」
「へ、いや、う、うん。ご、ごめんね? お、面白くなかったよね? も、もう言わないから、そ、その炎を消そうね?」
一応、ラフィには私に攻撃できないような機能をつけていたはずだ。
でも、今のラフィを見ると、ほんとに攻撃されそうだったから、私は慌ててそう言って、ラフィに炎を消してもらった。
そして、炎を消したラフィの目には、ハイライトが戻っていた。
「ら、ラフィ?」
「はい、どうしましたか?」
「……えっと、も、もし。もしもだよ? 私が明日、ラフィに何も言わずに、その、男の人、とかを探しに行ったら、どうするのかなぁ……って」
私がラフィの顔色を伺いながらそう言うと、ラフィはまた目のハイライトを消した。
「じょ、冗談だよ! も、もしもの話でも、こういう話は良くないよね! う、うん。ご、ごめんね?」
それを見た私は、慌ててラフィに謝る。
私が主人のはずなんだけど、今はそんなのはどうでもいい。
私にプライドなんてないんだから。
「そうですよね? 私、びっくりしちゃいましたよ」
「う、うん……」
「マスター、今日はもう寝て大丈夫ですよ。私は掃除を再開致しますので」
「…………よろしくね」
私はベッドに入った。
そして、現実逃避するように、すぐに眠りについた。
翌日、目が覚めると、ラフィが隣にいて、発狂することになるとも知らずに。
夢だった人型ゴーレムがトラウマになった瞬間であった。
あとがき
読んでくださりありがとうございます。
もしかしたら続きを書くかもしれません。
世界初の人型ゴーレムを作った…まではいい。なんで私の恋愛を邪魔するの? シャルねる @neru3656
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