第4話 チジョッカーを修正せよ
そんなこんなで僕が召喚した悪魔アスディウスが、性格と実力共にめでたくポンコツ認定されてしまったわけだけども、契約を交わした以上は彼女を放逐するなんてことは出来ない。
それに言っちゃなんだけど頭があまりよろしくもなさそうなので、悪意ある人間の口八丁で簡単に騙されてしまいそうで心配だ。やむ無しだけど、一緒に連れていく他はない。
そう結論付けて、僕は遠出をする準備に取りかかる……そのついでに今までは敢えてスルーしてた彼女の格好を何とかすることにした。
「行く前にきみのその……服、と言って良いのかなそれは?」
「なんなのよその疑問系質問は。これは大悪魔のアタシの威厳を引き立てる最高の衣装なのよ」
アスディウスは自慢げに見せびらかすように仁王立ちして胸を張るのだけれど、そのせいでビキニブラに包まれるたわわに実った胸が大きく揺れる……ポンコツっぷりに気を取られていたけども、改めて見ると美人な上にスタイルもいい彼女はそれだけで目立つ。
しかも威厳を引き立てるという服も上はビキニブラに短めのマントのみ、下はローライズのズボンという際どいもので目に毒だった。正直、下着で出歩いてると言っても違和感ないぐらいだ。
羞恥心というのが無いのかと感じる格好だけれども、悪魔という種族は肉体のタフさが地上の種族を凌駕する関係か、肉体美を誇示したがる傾向が多いらしいと師匠が話した。
これが男の悪魔であったなら筋肉を披露するぐらいだったら別に問題なかったのだけれど、アスディウスはスタイルも整った美女だ。これで出歩かせるとなったら、悪目立ちして仕方がない。
というわけでまずはアスディウスの服装を何とかマシなものにすることから始めた。
「うーん、手っ取り早くできそうなのはローブか何かを羽織ることだけど」
「えー、嫌よそんな地味な格好するのは。そんなことしたらアタシの威厳オーラが雲散霧消しちゃうじゃない」
「……言っちゃなんだけど、元からそんなに感じないよ」
「うそっ!?」
すごい驚愕してるけど事実だ。ぶっちゃけ、彼女のどこから威厳を感じ取ればいいのか分からないレベルだし。
それはそれとして、ローブを羽織るのは本人が嫌がってることもあって最後の手段として留めておくけど、それ以外でとなると同性である師匠から借りるとかぐらいかな。
いや、師匠とアスディウスじゃ体型に結構な差があるから無理か……どこに差があるとは敢えて言わないけども。色々と考えた末に、ふと倉庫の方に僕以外の弟子候補たちが使っていた衣服類なんかが山積みに放置されてたのを思い出した。
確か捨てるのが面倒だからと師匠のズボラな管理のせいでスペースを無駄に圧迫してたけど、あれなら持っていっても構わないか。取り敢えず、それで間に合わせようとサイズが大きなものを見繕ってアスディウスに着てもらうことにした。
「はい、取り敢えずはこれを着といてくれるかな」
「これを着るのぉ? なーんか色もデザインも地味なんだけど」
「旅の途中で街に寄ったら新しいのを調達するから、今はそれで我慢しといて」
「むー、仕方ないわねぇ」
不満がありそうながらもアスディウスは素直に渡した衣服を着てくれた。もっと反発するのかと思ってたけど、意外と聞き分けがいいみたいだ。悪魔らしくはないけど、旅を共にするパートナーとしては気兼ねなく接せられるから安心した。
「んっ、しょ…あ、はぁっん……!」
「……ねぇ、あんまり変な声を出さないでほしいんだけどさ」
「だって、キツいんだものこれ。胸とかお尻とかが、なかなか入らないしっ…んんぅっ……!」
着替えてる間、後ろを向いているのだけれどやたら艶かしい声が耳に入ってきて僕は変な気分になりかける。
(落ち着け僕、これは着替え、単に着替えてるだけなんだから。別にやましいことをしてる訳じゃないんだからっ)
そう自分に言い聞かせて生殺しみたいな時間は終わり、アスディウスに向き直る。
「んー、やっぱりこれしっくり来ないわ。一部分とかキツいし」
「う、うん、まぁそこは我慢しといてよ。なにもずっと着てろって訳じゃないしさ」
どうしよう、露出度は減った筈なのに男物の服を着てる彼女が何故かやらしく見えてしまう。特にその、胸辺りの生地をパツパツに引き伸ばしてるアスディウスの巨峰が前よりも目立ってしまってる感じがするし……。
「おい、支度にいつまで手間取って……なんだそれは、新手のプレイか? 肉付きのいい悪魔に盛ってるのか、性獣め」
「い、いや違いますからっ!? ちょっと目立たない服のコーディネートをですねっ」
「そ、そうよ、下劣な勘繰りは止めてくれるかしらっ!」
様子を見に来た師匠にそんなことまで言われてしまった。弁明する僕とアスディウス(正確には主張の激しい巨乳)に対して師匠は実に冷たい眼差しを向けて、出発前からドタバタとする羽目になった……。
そんなこんなありながら、旅の準備も終わって荷物を抱えた僕は師匠に暫しの別れを告げる。
「では師匠、課題の全達成を目指し、頑張ってまいります!」
「うむ、それなりに期待して待ってるぞ……まぁ、先行き不安要素が約一点あるが挫けずにな」
「なによそのアタシに向ける胡乱げな目は。こいつの役にバリバリ立ってみせてやるんだからドーンと安心しときなさい!」
「ハハハ……」
一体この自信はどこから来るんだろうか、無駄に前向きというかポジティブというか、はたまた自分の能力というのを客観的に見れないのか……大いに不安を抱えたままだけど、僕は召喚した悪魔アスディウスを連れて師匠から課された課題を達成するべく、出発したのだった。
この悪魔、凡骨につき!? スイッチ&ボーイ @dk64
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