思い出は47センチ

　女性の長い髪に対して、なにか言いようのない感情を抱いてしまう大学生のお話。

　現代ものの掌編です。性的な執着、いわゆるフェティッシュ的なものを描いたお話なのですけれど、同時に真っ当な青春の物語をしているところがもう本当に大好き。

　ひとつの恋の始まりから終わりまでを丁寧に描き切っており、作中のそれと同じフェチを持たない身であっても、普通に「わかる」物語です。
　そしてそのうえで語られる偏執であるからこそ、胸にぐいぐい迫る鮮烈さを感じるところも素敵。

　一番好きなのは終盤の展開、恋の終わりの部分です。
　あの瞬間の、「恋が終わった」とはっきり確信できてしまう感覚を、主人公と共有させられ…続きを読む

勝手に失恋した単なる変態の話のはずなのに、しっとりとした質感の美しい文章によって、髪の毛好きというフェティシズムが芸術の域にまで高められています。
変態性癖に抵抗の無い方は、是非とも読んでみてください。