第32話 王城陥落

ルークは宿屋に戻りルーエン氏の話をした。

『エレナにとって許し難い事だと思うが耐えて欲しい。悪い人では無いんだよ。年寄りの自慢話が好きなだけが災いを呼んだ。』

そう年寄りは自慢話で自分の存在を確認できるんだけど話をした相手が悪かった。

エレナは何も言わない、ただ『分かった』とだけ言った。


アメリアは生きているかは定かでは無いが国王が相手だと思って良いだろう。

エレナは仕返しをしたいがどうすれば良いかわからないと言うので仕返しを考えた。


ムスリムに残る仲間にも協力を得て王都に攻撃を与える事にした。具体的には魔石に迷いの森で解いた幻惑の魔法陣の簡略版を描いて王都周辺の道や辻の側に魔石を隠す。それも大量にばら撒く。


王都に向かう商人は王都に辿り着けず王都に食糧や資材が集まらないし、王都の騎士は王都に戻れない。伝書鳩も辿り着けずやがて王国内で王都は孤立した。

やがて、ひと月もすれば王都の住民も王都から逃げ出した。


ルークとエルフ達は王都に侵入して王城内へ幻惑の魔法陣を放った。

王都には逃げて行く宛の無い住民と空き店舗を狙った盗人が残った位だ。

王都周辺にばら撒いた魔石は方向感覚を狂わす魔法陣だが、こちらは幻影を引き起こす魔法陣だ。王城内に悲鳴や怒号が飛び交う悲惨な状況だ。

これを朝昼晩と繰り返す事で無血開城させる事に成功した。


『城内に敵に味方するエルフが居るかも知れないから注意せよ!』と叫んで城内に突入した。

城内の衛兵や主だった者は反抗する気力もなく動けない状態だ。我々は城の金品財宝には興味が無かった。我々は略奪者では無い。エルフの解放者なのだ。

エルフ達は地下牢まで探索して仲間が囚われていないか探し出した。エレナはその中でアメリアの亡骸を確認した。髪を切られあの耳も削ぎ落とされ手足の向きも少し違う血塗れの悲惨の骸に悲痛な叫びと号泣が響き渡った。


エレナ達は亡骸を確保してから王城に火を放ち退去した。


エレナの背には紅蓮の炎に包まれた王城の明かりが照らされていた。

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